慎重になりなさい
謙虚さと慎重さが貴方の心を助ける手段となる。
「ごちそうさまでした」。
ミュージーはそう言いながら両手を合わせ、テーブルナプキンで自身の口を拭った。
「あ、あの骨付き肉の後に出てきた特大ステーキと特大ハンバーガーも難なく平らげ、デザートのケーキもホールなのに完食してしまうとは...。ミュージー君、君は本当に恐ろしいな...」。
顔を引きつらせるカノー団長は、困惑した様子でミュージーにそう声をかけた。
「ありがとうございます、すっかりお腹いっぱいになりました」。
「そ、それは良かった...ははは」。
「...」。
マインとその付添人達はミュージーの食べっぷりに圧倒されている様子で目を丸くしていた。
「は、ははは...。レディ達もすっかり驚かれて...」。
「きゃ~!! 何てたくましい召し上がり方なんでしょう~! 」。
「本当~!! 」。
「素敵だわ~!! 」。
「男らしいわ~!! 」。
付添人達はそう声を弾ませながら顔色一つ変えないミュージーの顔を惚れ惚れと眺めていた。
「は、ははは...。見ているこっちもお腹いっぱいになってしまったよ...。本当に大食漢だね...」。
カノー団長は苦笑しながらカップに入った食後のコーヒーを口に含んだ。
「いえいえ、量的には普段からこのくらいは食べますね」。
ミュージーもコーヒーを口に含みながら淡々とした口調でカノー団長に答えた。
「は、ははは...。たまげたな...」。
(よし、食事も済んだし...もうそろそろ御開きに近い段階だろう。このまま何事も無く終わりそうで良かった)。
ミュージーはそう思いながら安堵の溜息をついた。
「...」。
ここまで、ミュージーと上手く会話ができていないマインは、依然として押し黙ったままうつむいていた。
「ちょっとっ! マインっ! ミュージーさんの御相手をしっかりなさいっ! 」。
「そうよっ! 貴方さっきから何も話をしていないじゃないっ! 」。
「貴方のお見合いなのよっ!? 」。
そんなマインの様子に痺れを切らした付添人達はそう言って急かしていた。
「えと、あの...」。
マインは恥ずかしそうに上目遣いでミュージーを見上げながら話を切り出した。
「す、好きな食べ物とかは何ですか? 」。
「僕はカレーとか丼物とかが好きですね~。結構、ボリューム感のある食べ物が好きです」。
「そ、そうなんですか...」。
「はい、マイン様はいかがですか? 」。
「えと、私は...シュークリームとか甘い物が...」。
「へぇ~、そうなんですか~」。
「え、ええ...」。
「なるほど~」。
「...」。
「...」。
ミュージーとマインのぎこちない会話は、特にそこから盛り上がる事も広がる事も無く途切れてしまった。




