魔力の泉
魔力は神によって注がれるが、我々魔力を持つ者の体内には魔力を貯める泉がある。
その泉は広いか狭いか、深いか浅いかで優劣が判断されるわけではない。
ミュージーとカノー団長が個室を出ると、外に控えていた兵士達はドアから現れた二人を怪訝な表情で見つめていた。
「どうしたのかね? ミュージー少尉」。
カノー団長も怪訝な表情を浮かべてそう問いかけると、ミュージーは辺りを見回しながら険しい表情で話を切り出した。
「いや、まさかマイン御令嬢の御付添が複数人だとは思いませんでした」。
「はっはっは~! 私もまさか御令嬢側の付添人が七人だとは想定外だったな~! 」。
カノー団長は呑気な様子で笑いながらそう言葉を返した。
「このままだと、付添人である御嬢様方ともお見合いをしなければいけなくなってしまいます」。
「良いじゃないか~! 羨ましい限りだよ~! 」。
「良くありませんよ! 部隊での活動に支障が出てしまいます! 」。
「私は別に良いと思うんだがね~。マイン様に付き添われている御友人達もコメズ市在住とおっしゃってたし、上流階級出身である事は間違いない。もう、ここまで来たら君もマイン様でも御友人でも良いから、誰かと付き合って身を固めたらどうかね~? 」。
「そ、そんなっ! 今は王城や軍内でやる事が多くて、そんなの考える余裕はありませんよっ! 」。
ミュージーは表情を曇らせながらカノー団長にそう意見した。
「はっはっは~! 良いじゃないか~! そんな忙しい日々もそう続かないんだろ~? 君も後々にはユズポン大聖堂の騎士団へ転勤となり、我々の騎士団“AT05”と対等な立場になるわけだし愛を育む時間だっていくらでもできるはずさ~! 今のうちにコンタクトを取ったって良いじゃないか~! 」。
カノー団長が高笑いをしながらそう言うと、ミュージーは深く溜息をつきながら肩を落とした。
「いや、騎士団への転勤の件は軍の方から話が無いんで分からないですよ! 本当に勘弁してください! 」。
「はっはっは~! 分かった、分かった~! まぁ、もともと君は長官に巻き込まれたわけだからね~! 何とか事なきを得られるよう話を運ばせるようにしよう~」。
「お願いします」。
ミュージーが神妙な面持ちでそう言うと、カノー団長は微笑を浮かべながら小さく頷いた。




