一日を後悔せず懸命に生きなさい
その一日が貴方の礎となる。
貴方の礎を知る者は神。
そして、貴方の礎を語る者は後世の者のみだ。
「あ、あの…っ! 」。
女性陣が盛り上がっている最中、ミュージーの付添人であるシアターが突然席から立ち上がった。
「こ、この度ミュージー少尉の付添人シアター=アローンと申します。ほ、本来はパルス=イン伯爵が出席する予定だったのですが…急遽その予定が変更された事を御詫び申し上げます。ま、誠に申し訳ございませんっ! 」。
シアターがそう詫びながら深く頭を下げると、付添人達は慌てて首を横に振った。
「いえいえ〜! とんでもございませんわ〜! むしろ、パルス伯爵の御相手にこの子では荷が重過ぎますわ〜! 」。
「はっはっは〜! そんな謙遜なさらずとも〜! マイン様はあのトミー=クッキン公爵の御令嬢ではありませんか〜! 」。
「いえ、私は父の様に功績を残しているわけではございませんし…」。
マインは自信なさげにうつむきながらカノー団長にそう返答した。
「はっはっは〜! 非常に謙虚な御方だ〜! ところで、先程大学内でと話されておりましたが、皆さんマイン様の御学友ですかな? 」。
カノー団長がそう問いかけると、付添人達は揃って頷いた。
「はい〜! マインとは学部が違うんですけど全員幼馴染なんです〜! もう家族ぐるみの付き合いで〜」。
「なるほど…という事は、皆さんも王立ポンズ大学の学生なんですね〜? 」。
「はい〜! 私達もマインと同じコメズ市に住んでまして、お互いの御屋敷も近所なんですの〜! 」。
「そうですか~! はっはっは~! いやぁ~! 私もコメズ市出身でね~! 今はこのミュージー少尉と共に城内で過ごしているのですが、コメズ市は上流階級の殿上人が集中している高貴な都市ですからな~! はっはっは~! 」。
「あ、そうだったっ! 」。
ミュージーが突然立ち上がりカノー団長の下へ歩み寄った。
「...? どうしたのかね? ミュージー少尉? 」。
「ちょっと御話が...」。
ミュージーがそう耳打ちをすると、カノー団長は神妙な表情を浮かべながら立ち上がった。
「はっはっは~! レディ達~! ちょっと我々は席を外させてもらうよ~! しばしお待ちを~! 」。
カノー団長は高笑いをしながらミュージーと共に退室していった。
「マイン~! ミュージー様良いじゃな~い! 」。
「カッコいいしね~! 」。
「結婚じゃなくても付き合っちゃいなよ~! 」。
付添人達ははしゃいでいる様子でマインにそう話しかけた。
「い、いや...。そんな事言われても...」。
当事者のマインは困惑している様子で返答に躊躇していた。




