鉱石を持った悪魔
悪魔は豊富な資源で貴方をそそのかす。
悪魔に耳を傾けてはいけない。
人の声より神の声を聞きなさい。
裕福を求めず、心の平安を求めなさい。
カノー団長を取り巻いていた兵士達は退室し、ミュージー達も着席を済ませてお見合いは開始された。
「それでは皆さんグラスは手に取ったかな~? それではまず乾杯といこうじゃないか~! 今日という日を心から感謝して~! 乾杯~! 」。
「乾杯~! 」。
全員は自身のグラスを持ち上げ、高々と天に掲げた。
「はっはっは~! それでは改めて自己紹介といこうか~! この紳士はミュージー=フェルナンデス、年齢は二十一歳。ポンズ王国軍の士官学校を卒業した後、現在は国王陛下の特殊治安部隊小隊長としてポンズ王城内で生活をしている。階級は少尉で他にも軍事魔術の研究にも力を入れているんだ。そしてッ!! その特殊治安部隊を指揮している崇高なる精鋭部隊ッ!! ポンズ王国が誇る騎士団“AT05”ッ!! その騎士団の団長を務めている高貴な軍人こそッ!! この第四代目サクラダ子爵カノー=サンジン...」。
「ミュージー様は背が御高いですわね~! 身長はどのくらいなんですの~? 」。
「御好きなものは何ですの? 」。
「御趣味は? 」。
「御好みなタイプは? 」。
マインの付添人達は嬉々とした様子でミュージーに質問し続けた。
「は、ははは...。まぁ、質問コーナーは後々設ける事として...。こちらの淑女はマイン=クッキン様、コメズ市在住の二十歳。現在は王立ポンズ大学に通う大学生で、貴族院の議長を務められている王国議員トミー=クッキン三世公爵の御令嬢でいらっしゃる。そしてッ!! トミー=クッキン三世公爵と同じくッ!! 貴族でありポンズ王国が誇る騎士団“AT05”ッ!! その騎士団の団長を務めている高貴な軍人こそッ!! この第四代目サクラダ子爵カノー=サンジン...」。
「ミュージー様のようなたくましい殿方に守っていただけるなんて嬉しい限りですわ~! 」。
「ミュージー様の恋愛経験を聞かせてくださるかしら? 」。
「きゃ~! きゃ~! 」。
「は、ははは...。ミ、ミュージー少尉良かったではないか...マイン様に付き添われているレディ達にも大好評だね...。と、ところでマイン様に付き添われる御方は一人だと御聞きしていたのですが...」。
「ええ、マインの付き添いは私一人だったんですけど、パルス伯爵の代わりにミュージー様が御相手なさるという事で大学内でミュージー様の肖像画を大学仲間と拝見させていただいてたんです。そうしましたら、マインの付添人として参加するってみんな聞かなくて~。ごめんなさい、お見合いだし御迷惑だったかしら~」。
「はっはっは~! 迷惑なんてとんでもないっ! お見合いはこのくらい賑やかなのが丁度良いのさ~! そしてッ!! 今回のお見合いの世話人を務めさせていただくのがこの私ッ!! 貴族でありポンズ王国が誇る騎士団“AT05”ッ!! その騎士団の団長を務めている高名な軍人ッ!! この第四代目サクラダ子爵カノー=サンジン...」。
「ミュージー様~! 今度、私とお見合いしてくださる? 」。
「あっ! 私が先よっ! 」。
「抜け駆けは駄目よっ! 」。
「は、はぁ...」。
ミュージーはマインの付添人達の勢いに困惑した表情を浮かべながらそう返した。
「...」。
そして、彼女達に再三言葉を遮られたカノー団長は、一人寂しげな表情を浮かべつつその場に佇んでいた。




