魔力を知る事
貴方が魔力を使いこなしているのではない。
貴方が魔力を知り、神を信じるその思いが達した時に魔力が導き出した。
魔力を知るという事は神を信じるという事だ。
お見合い当日、ミュージーはカバリツ副司令官と共に王国軍本部の入口に立っていた。
「もうすぐ迎えが来る時間だな」。
カバリツ副司令官は自身の腕時計に視線を向けつつ辺りを見回していた。
「は、はぁ...」。
カバリツ副司令官は苦笑しながら、浮かない顔をしながらそう答えるミュージーの肩に手を置いた。
「まぁ、普通の食事会だと思って当たり障り無くやれば良い事だ。貴族のような上流階級の間では見合いが合コン感覚で頻繁に行われているらしいし、そんな格式ばったものではないみたいだから肩の力を抜いて楽しんできなさい。それに、御相手の方はもともとパルス長官を指名されていたわけだしな」。
「はぁ...」。
「ただ、御相手は王国議員クッキン貴族院議長の御令嬢だ。くれぐれも粗相のないようにな」。
「はッ! 」。
「む、迎えが来たようだな」。
薄紫色の光っている一頭の馬族魔獣が鬣と尻尾をなびかせながら、牽引している馬車と共にミュージー達の下へ向かってきた。
馬車がミュージー達の前に停車すると馬族魔獣から下馬した騎手はミュージー達に一礼し、金の装飾が華美に施された白い馬車のドアを開けた。
そして、馬車から黒いロングテールコートを着た男が降りてきて、ミュージー達に深々と頭を下げた。
「ゼナイレ家パルス=イン伯爵の側近を務めております、シアター=アローンと申します。本日は宜しくお願い致します」。
「ポンズ王国軍第一特殊治安部隊のミュージー=フェルナンデスと申します。こちらこそ、宜しくお願いします」。
ミュージーもシアターというその男に挨拶をした。
「それでは、ミュージーさん参りましょうか」。
シアターはそう言いながらミュージーに馬車に乗るよう促した。
「はい、それではカバリツ副司令官。行って参ります」。
「うむ、気を付けてな」。
ミュージーはカバリツ副司令官にそう告げて馬車に乗り、お見合いの場所へシアターと共に向かうのであった。




