目覚める時
貴方が起きた時、魔力を突如有す事となったとしても驚く事ではない。
神はその者に魔力が必要だと御考えならば、その者に魔力を与えられるのである。
「いやぁ~! 今日に至るまで、僕の意思とは関係なく一家の都合で散々お見合いを組まれ続けてきたんだよ~! もう僕も頭にきててね~! ずっとバックレたりドタキャンしたり色々とお見合いを回避してきたんだけど、今度の相手はバックレたりするわけにはいかないみたいでね~! 」。
「は、はぁ...」。
ミュージーは事情を話し始めているパルス長官に、困惑した表情を浮かべながらそう相槌を打った。
「そのお見合い相手が貴族院議長を務められている王国議員の御令嬢なんだよ~! それに、ウチの家族とは親交があるから無下にするわけにもいかなくてね~! でも、僕も局で管理してる魔獣達のデータ収集に忙しいからさ~! それで、急な頼み事になっちゃうんだけど、そのお見合いに出て欲しいんだよ~! 」。
「い、いや...。お見合い相手が長官から僕に変わるのは...マズいのでは? 」。
「大丈夫っ!大丈夫っ! 立場は違えど、君はかっこいいし背も高いから相手側が気分を害す事は無いはずだよ~! そこは自分に自信を持ってよ~! 」。
「いや、替え玉お見合いなんかしたら双方の関係が悪化してしまうのでは...? 」。
「平気、平気~! そこら辺もしっかり考えているからさ~! 当日、物事が上手く運ぶようにちゃんと現場の方へ関係者を手配しておくから~! 君はただ談笑するだけで大丈夫だよ~! 」。
「い、いや...しかし」。
「ま、そういう事だからさ~! 後は頼んだよぉ~! 」。
「あ...っっ!! ちょ...っっ!! 」。
パルス長官は脱兎のごとく、その場から立ち去っていった。
「うむ、私は長官の御見送りするから後は頼んだぞ」。
タカ総司令官はミュージにそう言い残し、兵士達と共にパルス長官の後を追っていった。
「...」。
「まぁ、これも経験だ。しっかりやってきなさい」。
カバリツ副司令官は呆然とするミュージーの肩に、自身の手を置きながら優しい口調でそう言った。




