魔力のためには良き水と良き心を持ちなさい
良き水は魔力を高め、良き心は人を穏やかにする。
そして、常に感謝をしなさい。
神は貴方に喜びと幸せを与えるでしょう。
ミュージーとスプリングは食事を済ませ、出入口の方まで歩いていた。
「本当に全部食べちゃったわね...凄いわ」。
「そうかい? いつもこんな感じだけどな~」。
「えぇ...」。
ミュージーの言葉を聞いたスプリングがドン引きした様子で顔を引きつらせていた時、二人は青白く光る魔法陣が壁や床と至る所に設置された広い空間に行き着いた。
「それで、スプリングさんはそのまま帰るの? 」。
ミュージーは足を止め、スプリングに視線を向けながらそう問いかけた。
「いえ、研究局に戻ってちょっとやる事があるから」。
「そうか~」。
「それじゃあ、ミュージー少尉も試験勉強頑張ってね」。
「う~ん、今年は無理そうだから来年に向けてしっかり勉強しておくよ」。
ミュージーがそう言いながらお手上げといった感じで両手を広げた。
「そんな事無いわ、さっき食堂で見直ししたじゃない」。
スプリングは片眉を吊り上げながらそう言った。
「う~ん、でも色々と抜けてたしな~」。
「ミュージー少尉なら全然問題無いわよ」。
「いや、でも...」。
「大丈夫ったら大丈夫なのっ! 」。
スプリングはムッとした表情を浮かべながらミュージーに詰め寄った。
「そ、そうかな...? 」。
ミュージーは困惑した表情を浮かべてたじろぎながらそう言った。
「そうよっ! 王国兵士がそんな弱気でどうするのっ!? もっと自分に自信を持ちなさいなっ! 」。
スプリングは語気を強めてミュージに言った。
「は、はぁ...。と、ところで、スプリングさん今日は眼鏡かけてないんですね? 」。
「えっ...? 」。
ミュージーにいきなり話題を変えられたスプリングは意表を突かれた様子で目を見開いた。
「いや、いつも眼鏡かけてるから新鮮だなぁ~って」。
「ええ、今日はコンタクトしてるから...」。
「そうか~、スプリングさんは美人だから更に美貌さが際立ちますね~」。
ミュージーが微笑みながらそう言うと、スプリングは真っ赤になった顔をしかめてそっぽを向いてしまった。
「...っっ!! ち、茶化さないでっ! 」。
「ははは...ん? 」。
その時、スプリングの白衣に隠れていた黒の肩紐と黒い布地、そしてその布地に覆われていた胸の谷間がミュージーの視界に入ってきた。
そして、ミュージーはある事に気が付いた。
「す、スプリングさんっ! 白衣の下ってもしかして...」。
ミュージーは動揺した様子でスプリングの上半身を指差した。
「...え? 白衣の下? 」。
スプリングは怪訝な表情を浮かべながら自身の身体を見下ろした。
「...っっ!? 」。
そして、ある事に気が付いたスプリングの顔が更に真っ赤になった。
「ちょっっ!! 何で...あっっ!! 今日遅れそうだったから更衣室で着替えてた時、気が動転してて上も脱いじゃってたのっっ!? ずっと一日中この格好っっ!? もうっっ!! 最悪っっ!! 」。
スプリングは羞恥心のあまり、自身の身体を抱きしめながらその場にしゃがみ込んでしまった。
「いや、ごめん...。僕も早く気付いてあげればよかったんだけど...すっかり答案の見直しに夢中になっていたよ」。
ミュージーはそう言いながら着ていた軍服の上着をスプリングの上半身に被せた。
「...え? 」。
スプリングは困惑した表情を浮かべ、壁に設置された魔法陣の方へ歩いていくミュージーに視線を向けた。
「それは貸してあげるよ。それじゃ、また大学でね~」。
「あっ...!! ち、ちょっとっ!! 」。
ミュージーは手を挙げながら魔法陣が貼られた壁を通り抜け、この場から消えていった。
「...」。
スプリングは顔を真っ赤にしたまま、うつむいてその場に佇んでいた。




