止まない雨は無い
どんなに長くとも。
どんなに強く降り注ごうとも。
雨は止む。
貴方の心の雨も止み、そこに光が降り注ぐ。
その時は必ず来る。
サカモト教官の研究室を出たミュージーは、浮かない顔で通路を歩きながら深い溜め息をついていた。
「今回の試験、こうなる事は見直して分かってはいたんだけど…。実際に結果を目の当たりにすると、結構ショックだな…。まぁ、特級魔術師の認定試験はそんな甘くないよな」。
ミュージーがそう呟きながら背中を丸めて歩いていると…。
「ミュージー少尉っ! 」。
何者かに声をかけられたミュージーが後ろを振り向くと、スプリングという研究室にいた若い女性が追いかけてきた。
「ああ、スプリングさん。サカモト教官への用事は済んだのかい? 」。
「ええ、私も模擬結果の報告を聞きに来ただけだったから…」。
「そうか…」。
「ところで、ミュージー少尉はこの後は王城へ戻られるのかしら? 」。
「あ〜、そうだね。王城へ戻って夕食済ませて、それで部隊の方へ戻るって感じだね」。
「あら、じゃあ夕食はまだなのね? 」。
「うん、まだ食べてないんだ。もう、お腹ぺこぺこでね〜」。
苦笑しながら腹を摩るミュージーの様子を見たスプリングは、微笑を浮かべながら片眉を吊り上げて口をすぼめた。
「ふ〜ん、そうなんだ。実は私もまだ食べてないのよ」。
「え? そうなのかい? 」。
ミュージーがそう問いかけると、スプリングはゆっくりと頷きながら満面の笑みを浮かべた。
「ええ、もし宜しかったら、一緒に食事をしながら今回の模擬試験の見直しをしない? 」。
「え? 良いのかい? スプリングさんも研究とかで忙しいんじゃないのかい? 」。
「ううん、私の方はひと段落着いたから…。ミュージー少尉がもし…宜しかったら」。
スプリングの言葉を聞くと、ミュージーの表情が一気に明るくなった。
「本当かいっ!? 是非、宜しく頼むよ! 」。
「え、ええ…」。
ミュージーの嬉々とした表情を見たスプリングは、自身の頬を赤く染めながら口ごもりつつもそう答えた。




