上手くいかない時、鏡を見なさい
そして神の祈り、信じなさい。
下を向かず、常に自分と向き合いなさい。
鏡に映った貴方は本物の貴方に嘘はつけない。
修道院聖歌隊のコンサートから数日経った夜の事。
都市ユズポンにあるポンズ王国防総省、通称王国軍本部内にある王立国防大学。
ミュージーはその大学内にある教官室の扉を潜った。
「サカモト教官、御呼びでしょうか? 」。
扉の先には軍服を着用したセンター分けロングヘアーという奇抜な髪型の中年男と、後ろ髪を一つ結びにしている白衣姿の若い女性が椅子に座って手に持っている書類を見つめていた。
「ああ、ミュージー君。まぁ、かけたまえ」。
「失礼します」。
サカモト教官に促されたミュージーは傍にある椅子に腰かけた。
「ミュージー君はこんな遅い時間まで講義を受けていたのか~」。
「普段は王城からなかなか出られないものですから、通信講義で何とかなってはいたんですが...。今回ばかりは実技試験があったものですから、通信というわけにはいかなくて...。何とか上官に無理を言って時間を空けてもらったんです」。
ミュージーがそう答えると、サカモト教官は感慨深げに深く頷いた。
「陛下の精鋭部隊である特殊治安部隊の小隊長を務めているという忙しい中でも、しっかりと講義も受けている。ミュージー君は本当に素晴らしいね」。
「いえ、講義についていくのに精一杯ですよ」。
ミュージーが苦笑してそう答えた。
「そうそう、スプリング君には既に渡しておいたんだが...。この間、君達が受けた特級魔術師試験の模擬試験結果が出たんだ。今日は君も出席していると聞いていたから、渡しておこうと思ってね」。
サカモト教官から一枚の用紙を手渡されたミュージーは、その用紙の内容を見て苦笑交じりに小さく溜息をついた。
「ははは...。箸にも棒にも掛からぬといったような点数ですね...。これは酷い」。
「いやいや、試験まで時間はあるから諦めるにはまだ早いよ。それに、実技試験の方は満点に近い結果を残していたじゃないか? そんな悲観的になる事は無いさ」。
「は、はぁ...」。
ミュージーはそう相槌を打ちながら自身の頬を人差し指でポリポリと掻いた。
「それに筆記は知識の問題だからね。君に学習する時間が足りてないのは僕も知っているよ。今度、僕が王城の司令部と話をしてみるよ」。
「はぁ、自分の力が及ばず...申し訳ございません」。
ミュージーはそう言って深々と頭を下げると、サカモト教官は苦笑交じりに首を横に振った。
「いやいやっ! これは仕方が無い事だよ~! ま、試験までは時間があるから僕も協力するからね~! 」。
「はッ!! ありがとうございますッ!! 」。
「うん、今日はもういいよ~。お疲れ様~」。
「はい、失礼します」。
ミュージーは椅子から立ち上がり、サカモト教官に一礼して退室していった。




