神に告白せよ
魔力は争いのためにあるものではなく、人を傷つけるためにあるものでもない。
もし、自身や他人を守るために使うのであれば、神に告げよ。
神は貴方のために涙を流し、その行為を赦してくれる。
「教団側が提案…? 教団派の王国議員による提案...ではなくですか? 」。
ミュージーがそう言うと、カノー団長は小さく首を横に振った。
「いや、私も最初はそのように聞いていたんだが、どうもそうではないらしいんだ。教団の関係者から聞いた話だと転勤の件は教団が教団派の議員達を介し、軍の方に提案したという事らしいんだよ」。
「一兵士のために随分と大掛かりな事をしますね。僕を教団側の騎士団に転勤させて、一体何のメリットがあるというんですかね? 」。
ミュージーが半ば不服そうな様子でそう問いかけると、カノー団長は再び首を横に振りながら肩をすくめた。
「さぁ...。私も教団と軍の真意は分からないが、憶測としては国王御抱えの特殊治安部隊であり優秀な君を教団側が囲って軍よりも優位な立場に持っていきたい考えているのかな...? 」。
「はぁ...。何か人質みたいな心境であまり気分は良くないですね...」。
ミュージーがそう答えると、カノー団長はその場で高笑いを始めた。
「はっはっは~! 確かに軍と教団の交渉道具に利用されている感じで気分は良くないかもしれないね~! まぁ、仮に君が騎士団に転勤するとなると、ユズポン大聖堂の“聖ポンズ騎士団”になるのかね~? 」。
「いや...どうでしょうね...? 実際、軍が最終的に決める事ですから、僕は何とも...」。
「まぁ、そうだよね~! いやぁ~! 君のような優秀な兵士が私の率いる高貴な騎士団“AT05”に加入してくれると嬉しいんだがね~! まぁ...系譜の問題がね...」。
「御気遣いいただき誠に光栄です。むしろ、教団の児童養護施設出身である身分の僕が、騎士団のような格式高い職位に就く事は畏れ多いですよ」。
ミュージーがそう答えると、カノー団長は再び高笑いを始めた。
「はっはっは~! 確かに騎士団は王国内においても高貴な存在ではあり、特殊治安部隊の上層部隊だからね~! もし、君が教団管理下の騎士団へ転勤になったら、軍と教団といった感じで我々と対等な関係になるね~! おっと、それじゃあ私はこの辺でおいとまするとしよう~! あ、御見送りは結構だよ~! 忙しいと思うからね~! それでは諸君、アディオスッ!! 」。
「はッ!! 御気を付けてッ!! 」。
カノー団長はそう言うと高笑いをしながら、自身の部下である団員達を引き連れて颯爽と退室していった。
「...」。
ミュージーは去っていくカノー団長に向け、隊員達と共に深々と一礼しながら神妙な表情を浮かべていた。




