迷い、惑わされそうになった時は瞳を閉じなさい
神が貴方の前に現れます。
貴方の訴えに神が答えるでしょう。
「な、何で僕まで舞台の方へ行かなくちゃいけないんだよ…」。
「関係者以外立入禁止の場所でも何が起きるか分からないでしょ? 目的地までちゃんと誘導してよね? 」。
「ゆ、誘導って...。君が僕の手を引っ張りながら先を歩いてるじゃないか」。
「もうっ! 細かい事はいいのっ! 」。
「何だよ、それ...」。
ミュージーとブリッジがそんなやり取りをしながら舞台袖の方までやって来ると、ちょうど大柄な修道女のコブシと数人の修道女達が舞台から捌けているところであった。
「お疲れ~! みんな~! 」。
ブリッジは出番を終えた修道女達を笑顔で迎え入れた。
「ミュージー君もおったんか~」。
「あ、コブシさんもコンサートに参加していたんですか? 」。
「せやで~、ミュージー君にも見せたかったわ~。私の名演技~」。
「へぇ~、どんな役だったんですか? 」。
「立木」。
「...え? 」。
ミュージーは眉をひそめてコブシさんにそう聞き返した。
「立木やで~」。
「立木って...あの植物の? 」。
「せやで~」。
「...」。
「ブリッジさぁ~ん! スタンバイお願いしまぁ~す! 」。
ミュージーとコブシの間に妙な空気が流れていた時、スタッフがブリッジにそう声をかけていた。
「あっ! はぁ~い! 」。
ブリッジがスタッフのいる場所へ向かおうとした時...。
「あっ...! そうだっ! 」。
ブリッジは慌てた様子でミュージーとコブシの方へ引き返してきた。
「ミュージーっ! グローブ外してっ! 片手だけで良いからっ! 」。
「...え? グローブ? 」。
「早くっ! 早くっ! 」。
「わ、分かったって...」。
ブリッジに急かされたミュージーは防具であるチェーン式のグローブを外して右手を差し出した。
「...」。
そして、ブリッジは素手となったミュージーの右手を自身の両手で優しく包み込み、そのまま両目を閉じて一言も話さずその場に佇んだ。
「...? 」。
そんなブリッジに対し、ミュージーは不思議そうな様子で小首を傾げていた。
「よしっ! これで大丈夫っ! それじゃあみんなっ! 行ってくるねっ! 」。
ブリッジはそう言い残して栗色の長い髪をなびかせながら、眩しい照明の光が降り注ぐ舞台に向かって走り去っていった。
「...何だ? アイツ? 」。
「ミュージー君は、ホンマ乙女心が分かってへんなぁ~」。
頭上にクエスチョンマークを浮かべて呆気に取られているミュージーに対し、コブシは呆れた表情を浮かべながらそう言って肩をすくめた。




