神の光を感じなさい
貴方の上には常に神の光が降り注いでいる。
曇りの日も、雨の日も、雪の日も。
陰る太陽の光とは異なり、神の光は貴方の頭上から消える事は無い。
常に天から降り注ぐ神の光を感じ取りなさい。
「ん? 何か言ったかい? 」。
ミュージーがそう聞き返すと、ブリッジは慌てた様子で椅子から立ち上がった。
「う、ううんっ! な、何でもないっ! そ、それよりも、みんなそろそろ戻ってくる頃だと思うんだけどな~! 」。
ブリッジがそう言いながら何かを誤魔化すかのように周囲をうろうろし始めた時、大勢の修道女達がぞろぞろと控室に戻ってきた。
「あっ! ブリッジちゃんっ! 」。
「みんなっ! おかえり~! 」。
ブリッジは戻ってきた修道女達を笑顔で迎え入れた。
「あっ! ミュージーさんっ! 」。
「きゃ~! ミュージーさんだぁ~! 」。
「きゃあ~! ミュージーさぁ~ん! 」。
バイザーを上げて素顔を晒しているミュージーの顔を見た修道女は、黄色い悲鳴を上げながら嬉々とした様子でミュージーの方に駆け寄った。
「うわぁ~! ミュージーさぁ~ん! 今日も大変麗しい~! 」
「どうしてここにいらっしゃるの~? 」。
「いや、ちょっと野暮用でね...」。
「あら? ミュージーさんいらっしゃったの? 」。
ミュージーが歩み寄ってきた修道女達にそう受け答えしていた時、セブンスが修道女達の後方から姿を現した。
「はい、ちょっと用事があって...。そうだ、ブリッジ」。
「え? 」。
不意に声をかけられたブリッジはミュージーの方へ振り向いた。
「この間受け取ったサンドイッチの入ってた入れ物、さっきセブンスさんに預けておいたから」。
「ありがと~! ...っても、あのバスケットは教団の所有物だから私のじゃないけどね~! 」。
ブリッジはそう言ってミュージーに悪戯っぽく舌を出した。
「そうだったのか、でもサンドイッチ美味しかったよ。御馳走様」。
「どういたしまして~! 」。
「調子のいい奴だな~」。
胸を張って露骨に偉ぶるブリッジに、ミュージーは苦笑交じりにそう言葉を返した。
「はぁ~! 疲れたぁ~! 」。
ミュージー達がそんなやり取りをしていた時、背の高いスレンダーな一人の修道女が気だるそうな様子で控室に入ってきた。
「あ、ポンダちゃん! お疲れ様~! 」。
ブリッジが微笑みながらポンダを労った。
「お疲れ~! ブリッジちゃんは次でしょ? 頑張ってね~! 」。
「うんっ! 頑張る~! 」。
二人がそんなやり取りをしていた時、ポンダは不意にミュージーの方へ視線を向けた。
「あ、この人ってもしかして...みんながよく話してたミュージーって人? 」。
「そうだよ~! 院内の施設で一緒に育った幼馴染なんだ~! 」。
「ふ~ん」。
ブリッジの言葉を聞いたポンダは、そう相槌を打ちながらミュージーの方に歩み寄った。
「結構いい男じゃ~ん」。
ポンダは興味津々な様子で距離を詰めながらミュージーを覗き込んだ。
透き通るような白い肌に長いまつ毛、高い鼻に整った顔立ちをした美女のポンダは可愛らしさを纏ったブリッジとは異なりクールな雰囲気を漂わせていた。
「な、何か...? 」。
ミュージーはポンダの圧にたじろぎながらそう言った。
「ミュージーさんは付き合ってる人とかいるんですか~? 」。
ポンダがそう問いかけると談笑していた修道女達は一斉に口をつぐみ、周囲はしんと静まり返った。
「い、いや...。彼女はいないが...」。
「へぇ~! じゃあ、好きな人とかはいるんですか~? 片思いしてる人とか~! 」。
「い、いや...。毎日忙しくてそんな暇が...」。
「そっっ!! そろそろ私の出番が始まっちゃうっっ!! ミュージーっっ!! 早く行くよっっ!! 」。
「ちょっ...! お、おいっ! 」。
ブリッジが強引に二人の間に割り込み、ミュージーの手を引っ張ったまま足早に控室を出ていった。
「んふふふ! ホント、二人共純粋なんだから」。
セブンスは微笑みながらその場から離れていくミュージーとブリッジの背中を見送っていた。




