信じなさい
他人ではなく、自分を信じなさい。
人を介せず自分を信じ、歩き続ければ善き道に辿り着ける。
それが神の導きなのだ。
(アイツが女優やタレントの活動している事は知ってたけど、国民的修道女なんて民衆から呼ばれる程に売れてるのか。そういえば、最近はそっちの活動で忙しそうにしてるなんて修道院の人間から聞いてたしな)。
「あのぅ〜」。
ミュージーが御手洗いを済ませて部隊のブースへ戻る途中、後ろから何者かに声をかけられた。
「…ん? 」。
ミュージーが振り向くと、そこには不安げな表情を浮かべているブリッジが立っていた。
「すみません、御手洗いに行ってたんですけど…。聖歌隊の控え室が何処にあるか分からなくなってしまって…」。
「フッ…国民的修道女がこの辺を彷徨かれるのは困るな」。
「えっ…? 」。
ブリッジがキョトンとした様子でそう声を上げると、ミュージーは顔を覆っている兜のバイザーを押し上げて自身の素顔を露わにした。
「あっ!! ミュージー!! 」。
ブリッジはミュージーの顔を見ると、先程の不安げな表情とは打って変わって満面の笑みを浮かべた。
「道に迷ったのか? 」。
「うん…他のみんなは出番があるからいないし、私一人だけだったから…。それで戻る道も分からなくなっちゃって…」。
「なるほどな、それじゃあ僕が控え室までエスコートしてあげるとしよう」。
ミュージーがそう言いながら歩き出した時…。
「あっ! 大事な事忘れてる〜! 」。
ブリッジは歩き始めたミュージーの片手を手に取った。
「…ん? どうした? 」。
「エスコートの時はちゃんと淑女の手を握って先導しないとダメだよ〜! 」。
「レディ? 年齢的にレディって呼ばれるにはまだ早くないか? 」。
ミュージーが苦笑しながらそう問いかけると、ブリッジは顔をしかめて不満げな様子を露わにした。
「ちょっとっ! それどういう意味よっ! 」。
「幼馴染の僕としては、レディよりも御転婆姫って方がしっくりくるけどな〜」。
ミュージーが立て続けにそう言うと、ブリッジは自身の頬を膨らませて怒った様子を見せた。
「ああ〜! もう怒ったかんなぁ〜!? もうミュージーなんて知らないっ! ふんっ! 」。
「やれやれ…」。
ミュージーは呆れながらも、機嫌を損ねたブリッジに手を握られたまま目的地を目指すのであった。




