表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/90

38 いよいよ世界が滅びるかもしれない

「まさか、このような事になってしまうとは……」

「心当たりでもあるのか?」


 一旦教会の地下に戻ってきた所、どうやらヴォイドはあのもう一人の俺に心当たりがある様子だった。


「ええ、と言ってもあの姿についてはわかりかねますが」

「あの姿について……と言うのは?」

「あれは調停機能が生み出す概念そのものでしょう。本来はその世界における人の敵となる者を象るのですが……」


 ああ、だから闇に飲まれしモンスターはモンスターの姿をしているのか。

 あの世界にとって人間を一番殺すのはモンスターなんだもんな。

 それにあの魔物がセンサーに引っかかった時の違和感。今考えて見れば俺自身の魔力と闇に飲まれしモンスターが混ざったようなものだった。


 けど、それならどうしてアイツは俺の姿をしているんだ?

 え……もしかして俺、人類の敵?


「恐らく闇に飲まれしモンスターが本来の力を手に入れる前に討伐された事で、晴翔殿が彼らにとっての脅威であると認識されたのでしょう。それに対抗するために晴翔殿のその姿を象ったのでしょうな。あれは調停機能でありながら、防衛機構でもありますから」


 何ともまあ厄介な話だ。勝手に俺の姿を使いやがって。そのせいで色々と問題があるんだよ。

 テレビを見ればほぼ全てのチャンネルで俺と瓜二つの少女の一糸まとわぬ姿が全国公開されている。なんてことだ。恥ずかしい所の騒ぎじゃない。

 もはや尊厳がどうこうとかいうレベルだろこれ。裸を全国民に知られている状態で外を出歩けるかよ。

 

 いや、そもそもこの姿で外に出たらそれどころの問題じゃなかった。


「こうなった以上、我々には時間が残されておりません」

「アレが何か起こすんですか」

「ええ、恐らく近い内にアレは各ダンジョンにいる闇に飲まれしモンスターを一斉に外に呼び出すでしょう」


 ……マジでヤバイ奴じゃん。


「それが全世界で同時多発的に起こってしまえば、もはや人類に明日は無いでしょうね」

「対抗手段は……あるんですよね?」

「無い訳ではありません。一つはアレが全てを始めてしまう前に闇に飲まれしモンスターを討伐すること」


 簡単に言ってくれるが、あの魔力濃度の中を進んでその奥にいる強力な魔物を狩るって話だ。それを全世界規模でなんて出来るはずが無い。

 正直この策は無しだな。


「もう一つは、アレを……調停機能の概念自体を滅ぼすこと。そうすれば少なくとも今この世界に起きている異変は全て解決するでしょう」

「やはり、それしか無いのか……」


 薄々そんな気はしていたが、やはりそうするしかないようだ。

 だがアレと本気でやり合う訳にはいかないしな……。


「アレがどれほどの強さを持っているのかは我々にも想像がつきません。ですが少しの間であればバリアを張ることは出来るでしょう」

「……それを使えば外への被害は出ないと?」

「完全にとは言えませんが、何しろこちらには大量のホムンクルスがいますから。相当の質の物を張れると言う事は約束いたしましょう」


 ホムンクルスってあのファンタジー系でよくある感じのホムンクルスか……?

 そんなのどこに……。


 いや待て、もしかして。


「ホムンクルスってのは、そこら中にいる彼女らのことで良いんですよね?」


 思えば最初から違和感があった。

 学園をドラゴンが襲った時に会った彼女は俺の探知に引っかからなかった。

 それにその後やってきた時は皆が同じ顔をしていた。あれはそういうことだったってのか。


「よくぞお気づきで。彼女らは我々が独自の技術で作り出したホムンクルスなのです。故に彼女らは使い捨ての道具。いくらでも消費して構いません」


 残酷な手段すらも使って世界を守るってか。だがそれに今は救われる形だ。感謝して彼女たちの命を使わせてもらうことになるかもしれない。


「それでは晴翔殿、決戦を行うのであればこちらにどうぞ」

「まだ何かあるんですか?」

「我々がこの時のために用意した戦闘用礼装をお渡ししておきます」


 戦闘用礼装……なんだそのカッコいいものは。

 全く人が悪い。そんなのがあるのならもっと早く渡してくれれば良かったのに。


「いや、晴翔……あれは」

「どうしたんだトウヤ。もしかして俺だけがもらえるからって嫉妬か? イヤー困っちゃうね救世主は」

「まあ、その、気を強くもてよ」


 ……何その、なに?

 トウヤの様子があまりにも不穏過ぎる。


「こちらです」


 ヴォイドに案内された先。とある部屋に飾られていたそれが恐らくその戦闘用礼装とやらなのだろう。

 いや、うん。トウヤの言っていたことがわかった。


「これ……ほぼ紐では?」


 下着と言うのすらもおこがましい布面積。マイクロビキニですらもっと肌露出が少ないくらいだ。

 え、なにこれ。新手のプレイか何かか?


「魔術師の特性上、肌の露出が多い程に魔力吸収率が上がりますから。それに魔力伝導率が非常に高い素材で編みこまれているので魔法の補助にもなるでしょう」

「そ、そうなのか……?」


 そう言えば学園祭の時のメイド喫茶も皆やたら露出の多いメイド服を嬉々として着ていたような……。なんなら制服自体の露出がそもそも凄まじいことになっている。

 あれ、そう言う意味があったのか……。多分この世界だと常識なんだろうな。


 けどそれがわかってもこれは流石に……。

 いや、物は試しと言うし……着てみるだけ着てみるか?


「と、とりあえず着てみますね」

「それでは私は外でお待ちしております。何か御用がありましたらお呼びください」


 ヴォイドはそう言うと部屋の外へ出て行った。


「……」


 いざ目の前にするとやっぱりこれ人が着る物じゃねえよ。

 こんな小さい布で隠せるわけが無いだろうが。いや、今の俺のロリボディならワンチャン……。


「晴翔様、少々よろしいでしょうか」

「ぁ……」


 ちょうど着替え終わった時、俺の影からタナトスが顔を出していた。


「なるほど、マスターにそう言う趣味が……」

「ち、違うが!?」

「いえいえ、否定なさらなくともよいのです。趣味は人それぞれですからね」


 待ってくれ。そう言う感じの距離感だと一層俺が惨めになるだろうが。


「このタナトス、晴翔様がどのような御恰好でもついて行きますとも」

「おい、鼻血出てるぞ」

「おっと、これは失礼。この体だと自制が効かず……あまりにも晴翔様の美しく煽情的なそのお姿に耐えられなかったようです」


 ぐぬぬ……恥ずかしいには恥ずかしいんだが、そこまで言われると気分は悪くない。

 だからこそコイツの口車に乗せられると不味い。


「お写真に残しておきたい所ですが、そのお姿を私の記憶の中にだけ残しておくのも悪くはありませんからね」

「わかったから黙っててくれ。それより、こうしてわざわざ影から出てきたってことは伝えたいことがあるんだろ」

「ええ、そうでした。あの晴翔様の姿を騙る者についてなのですが、どうやら国家魔術師による攻撃隊が秘密裏に組織されているようです。それも決行は三日後だとか」


 国家魔術師による総攻撃。それも三日後か。

 ニュースを見た限り、奴は攻撃をされなければ反撃することも無い。だからこちらから何もしなければ現状は脅威では無い。

 だが国家魔術師レベルとなれば、その反撃レベルも相当な物になるはずだ。


 ヴォイドはこれを知っているのだろうか。反撃を許したら甚大な被害が出るのは確実。場合によってはそれまでに決着を付けないといけない。


「情報、感謝するぞタナトス」

「いえいえ、マスターのためであれば些細な事です。それよりどこへ行かれるのです?」

「すぐに今の事をヴォイドに伝える。そして場合によってはすぐに最終決戦を行う事なるだろうな」

「ほう、ではその時はこのタナトス、微力ながらお供いたしましょう」

「そうか……ありがとう」


 小さくなってしまってもやはりタナトスはタナトスだ。頼りになる。

 例え命の危機があっても、きっと彼は最後まで俺のために立つのだろう。俺も何かしてやれることがあればいいんだが……。


「ところで、そのお姿のまま行かれるおつもりでしょうか」

「……ッ!!」


 忘れていた。危なかった。こんな紐だけの状態の姿を外に晒す所だった。


 ……これで礼になるのかはわからないが、俺のために頑張ってくれた彼にはもう少しこの姿を見せてやるとするか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ