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31 ダンジョンのその先へ①

 善は急げということもあり、トウヤと俺は早速闇に飲まれしモンスターの一体がいるというダンジョンへとやってきた。


「晴翔、オレが言うのもあれかもしれないが……本当に良かったのか」

「学園のことか? もちろん許してはいないが、今はそんなことを気にしている場合でも無いしな。どちらにせよ世界が滅んだら全部終わりなんだから」

「そうか……何と言うか、見た目の割に随分と達観しているんだな晴翔は」


 見た目の割には余計だ。

 とは言えどう見ても見た目幼女な奴の言葉にしては落ち着き過ぎてるのも事実か。


 ……いっそのこと彼には本当の事を言ってしまっても良いのかもしれない。

 道中で彼自身の事は一通り聞かせてもらったが、白姫についてもいくらか知っているらしい。それなら勇者召喚について話してしまっても問題は無いはず。

 

 と、その前に魔物の気配が……。


「曲がり角の向こうに3体程魔物がいるが……どうする?」

「無論、襲って来るのならば叩くまでだ」

「俺もそのつもりだ。なら、こちらから仕掛けてやろうじゃないか」


 トウヤと共に曲がり角までゆっくりと近づいて行き、そのまま魔物の動きを窺う。

 どうやらまだこちらには気付いていないようだ。


「よし、行くぞトウヤ!」

「ああ!」


 トウヤと共に角から一斉に飛び出す。

 それに驚いたのか蜘蛛のような姿をしたその魔物は一瞬動きを止めた。それだけの隙があればこっちのものだ。


「せぇぃっ……!」


 剣を一振りし、硬直している魔物の体を真っ二つにする。

 その後すぐ飛び掛かってきたもう一体の魔物に蹴りを入れた。

 

 ぐちゃっという音を立てながら青い血しぶきが飛ぶ。中々惨い状況ではあるが今となっては特に何も感じないな。


「こっちは仕留めた。そっちはどうだ?」

「ああ、問題ない」


 トウヤの方も手際よく魔物を始末し追えていた。

 

「まだ他にも仲間がいるかもしれない。注意しながら進もう」


 辺りに魔物の気配は感じないものの、一応警戒しながらダンジョンの奥へと進む。

 とは言えここはまだ浅い場所だからか、他の魔物と出会うことも無く下の階へ降りるための階段に辿り着いた。


 そしてその階段を下りた後もそのまま探索を続け、道中で何度か魔物と戦いながらも無事に最奥へとたどりつくことが出来た。

 恐ろしく重苦しい魔力を纏う大きな扉が道を塞いでいる。きっとこの奥へ進んだらもう後戻りはできないんだろうな。


「ここがダンジョンの一番奥か……実際に来るのは初めてだ」

「そうなのか? 晴翔程の実力者ならばもう何度もダンジョンを制覇しているものだと思っていたが」


 正確にはこの世界のダンジョンは初めてってだけなんだよな。アーステイルでのダンジョンは何度も制覇している。

 と言ってもダンジョンの仕組みとかは向こうと違うかもしれないし、慢心する訳にはいかない。


「それなら、なおの事慎重に行動しないといけないな」


 そう言いながらトウヤはゆっくりと扉を開け始めた。

 ズズズっという重い物が地面を擦る音と共に奥からとんでもない量の魔力が流れ出てくる。

 

 ……明らかにヤバイのがいる。直感的にと言うか本能的にと言うか、とにもかくにもそう理解させられた。


「行くぞ」

「……ああ」


 慎重に扉の奥へと進んでいく。

 一歩また一歩と歩みを進めるたびにだんだん空気中の魔力濃度が濃くなっていくのを感じる。


「アイツがこのダンジョンのボスか……」


 トウヤが歩みを止めた。

 その遥か先、通路を抜けた所にある空間にソレはいた。


 巨大なカマキリの姿をした魔物が一体、天を仰ぎながら鎌を合わせて静止している。

 カマキリはそう言った動きやポーズをすることから祈り虫とも呼ばれているらしいが、今のこの魔物は本当に神に祈っているんじゃないかとすら思える神々しさを放っていた。


「リーパーマンティスだな。少々厄介な奴がいたものだが、晴翔なら問題無く倒せるはずだ」


 どうやらあの魔物はリーパーマンティスと言うらしい。

 祈りとかなんとかが嘘みたいに恐ろしい名前だった。


「とは言え気を付けろ。奴は動きが素早く、それでいて鎌の切れ味は金属すら容易に切り裂く程だ。まともに食らえばまあ……どうなるかは説明しなくてもわかるよな」


 頭の中に真っ二つにされた俺の体が浮かび上がる。

 ……流石にちょっとゾっとするな。


「ま、まあ……要は攻撃されなければ良いんだろ?」

「その通りだ」


 簡単に言ってくれるが、実際俺もそのつもりだ。


「それじゃあ、早速やっちまおうか」


 通路を抜けて奴の前へと移動する。


「気付いたか」


 目はそこまで良くないのか、俺たちがそこそこの距離に近づくまで奴は反応を示すことは無かった。


「来るぞ……!」


 トウヤのその言葉と共に俺とトウヤの二人はその場から飛び退いた。

 そのすぐ後、つい今の今まで俺たちがいた場所の地面が抉り取られていた。


 言っていた通りの素早さと切れ味だな。

 多分普通の金属鎧なんかじゃ一発でアウトだ。何かしらの魔術的防護が無いとあの鎌の攻撃は耐えられそうにない。


 その点で言えば今着ている学園の制服は中々のものだ。露出面積こそそれなりに多いものの、防護魔術が何重にもかけられているから下手な金属鎧なんかよりもよっぽど堅い。

 それでいて柔軟性があり動きやすいし軽い。

 流石はエリートの集まる魔法学園だな。制服にも技術が詰め込まれている。


「今度はこちらから行かせてもらおうか!」


 奴は攻撃を終えて隙が生まれていた。その内に背後に回り込み、足を斬りつける。


「うぉ、堅ぇっ!」


 思っていたよりも奴の足は強靭だった。

 ワイバーンの鱗すらも容易く切り裂く俺の攻撃でも表面に傷が出来るだけって、コイツどれだけ堅いんだよ……。


「晴翔、上だ!」

「おう!」


 トウヤのその声が聞こえると同時に剣を上に振り上げる。

 ガキンと堅い物同士がぶつかる甲高い音と共に火花が散った。


「よっ……と」


 振り下ろしてきた鎌を剣で受け流し、一度奴から距離を取った。

 さて、どうしたものか。想像以上に堅いぞコイツ。


「晴翔、気を付けろ。コイツ……何かがおかしい」

「おかしい……って?」

「あまりにも堅過ぎるんだ。通常、リーパーマンティスはそこまでの強度を持つ外骨格を持ってはいない」


 なるほど、俺の剣が通らなかったのもこの個体が異常に堅いってだけなのか。


「それ、もしかして魔物が強力になっているってのと関係があったりするのか?」

「わからないが、可能性は十分にあるだろうな」


 そうか。それなら納得だ。

 トウヤの実力を考えれば、今までに相当な数の魔物と戦いそれを打ち倒してきているのは間違いないはず。

 そんな彼が違和感を覚えるってのなら間違いなくイレギュラーが起きていると見ていいだろうな。


 ……そこで俺の出番って訳だ。

 剣が効かないのなら魔法を使えばいいじゃない。だって俺は近接戦闘も魔法戦闘も出来るんだからな。

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