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13 驚きの再開は続く

 とりあえず陽がこの学園にいることは確定だ。

 確か彼女はリアルだと小学生だったはずだから初等部にいるのだろうか。


「あれ、晴翔じゃない。でもそっちは初等部棟よ?」

「エリンか。実は探している人がいてな」


 偶然通りがかったエリンが声をかけてきたので、アーステイルに関わることはぼかして陽のことを伝えた。

 情報は少しでも多い方が良いし、彼女が何か知っていたら儲けものだ。


「その子……多分中等部に飛び級で入ったっていう子じゃないかしら」

「知っているのか?」


 何かしらの情報が得られれば良いなと思っていたが、まさか本当に知っているとは。


「うん。妹のクラスに飛び級で入って来た子がいるらしくて、その特徴と一致するのよね」

「そういうことだったのか。教えてくれてありがとうな」

「このくらい、どうってことないわ」


 なるほど飛び級か。危ない危ない、彼女に聞かなければ初等部を探し続けたかもしれない。違う学年の生徒がうろうろとするのは色々と不味いだろうからな。

 さて、それなら早速探しに行こう。


「そうだ、せっかくだから妹に挨拶するついでに私もその子に会ってみても良いかしら?」

 

 うーん、陽もこの世界に戻って来て……いや戻ってきたと言って良いのかはわからないけども、俺と同じようにまだ慣れていないのかもしれないが……。

 だとしても知り合いと言える人物は多い方が良いのかもしれないな。


「ああ、一緒に来てくれると助かる」


 そうして俺とエリンの二人は中等部棟へと向かい、そこで陽を探した。

 と言っても探すのにそう苦労は無く、すぐに彼女は見つかったのだった。と言うのも彼女の方から俺を見つけてくれたからだ。


「HARU……? どうしてその恰好を……」

「それは……俺にもわからないんだ。けど、ひとまずまた会えてよかったよ」

「うん……。私も……晴翔に会えてよかった」


 流されるままに陽と抱き合った。しかしよく考えたらここは人目が多い。


「え、何あの子……凄い可愛いんだけど……!?」

「陽ちゃんとは一体どういう関係なのかしら……!」


 もはや何度目かわからない「しまった」だ。あろうことか学年外でも目立ってしまった。


「……良い」

「エ、エリン……?」


 そんな中、エリンの様子がおかしくなっていた。

 鼻息が荒く、目つきが怖い。まるで狩人のような……ああ、そうか。やけに見覚えがあると思ったらこれはあれだ。

 ……桜がしていたようなものと同じなんだ。


「凄く良いわ……! うん、尊い! 線の細い美少女同士が抱き合って身を寄せ合い、その柔らかい肌同士がむにっと形を変えて……」

「待ってくれエリン、この場では不味い! 頼むからお前まで混ざって来るのはやめてくれ……!!」


 不味い、何としてでも彼女を抑えなければ。今ここでこれ以上目立ってしまうのはどうあっても避けたい。


「何を言っているの晴翔……! こんなに可愛らしい子同士が抱き合っている状態で私なんかが混ざって良いはずが無いでしょう……!?」


 ……あ、これ桜とはまた違うタイプの奴だ。


「あれ、お姉ちゃん!?」


 と、そんな時だった。エリンのことを姉と呼ぶ生徒が教室から出てきた。


「げっ……」

「ちょっと、もしかしてお姉ちゃんまた発作なの?」

「いや、違うわよ……? ちょっとかわいい子同士がいちゃいちゃしていたから興奮しちゃって……」

「もー! それが駄目だって言ってるのに!」


 恐らく彼女がエリンの言っていた妹なのだろう。彼女によく似た赤い長髪に透き通るような紅い瞳をしていることからも間違いない。


「姉がすみませんでした。私からもたっぷり言っておくので今回はどうか許してやってください」

「い、いえいえお気になさらず……俺たちは大丈夫ですので……」


 妹さんは思った以上にしっかりしていた。

 普段の活発を超えて無鉄砲なエリンのことを考えると……うん、きっと今までにもかなりの苦労があったのだろう。容易に想像がつく。


 その後、時間になったので陽とは一旦別れてそれぞれ授業を受けることにした。

 幸い朝の事はそこまで話題になってはいないようで、少なくとも今日一日は平穏に暮らせた。もっとも明日以降どうなるかはわからないが。


 そして放課後、俺と陽は一旦桜の元に向かうことにしたのだった。

 無事に再会できたってことを伝えるのもそうだが、桜も陽に会いたがっていたからな。


「陽ちゃん……また会えて良かった……!」

「私もだよ……!」


 ぎゅっと抱きしめ合う桜と陽の二人。しかしまあ、こうしてみるとまるで親子のようだな。

 エリンじゃないが、尊さみたいなものを感じてしまうのも無理はないのかもしれない。


「まさか陽ちゃんも魔法学園に通っていたなんて……あれ、でもリアルでは体が弱いって言っていませんでしたか?」

「うん、そうだった。けどこっちに戻って来てからは凄く元気になっていたの」


 ……桜はこっちに戻って来ても能力を保持していた。となると彼女もRIZEとしての能力を保持していると言って良いだろう。

 恐らくその影響で元の体の弱さが無くなったのかもしれない。

 それに、その能力を買われて飛び級したのであれば辻褄も合う。俺もこの体の持つ処理能力の高さを実際に体感したしな。


「でもそれならそれで良かったです。陽ちゃんが元気なのが一番ですからね」

「ありがとう、桜さん」

「もー『さん』付けなんて寂しいですよ。向こうの世界で一緒に暮らし始めてから長いこと経っているんですし、呼び捨てで良いです。というか呼び捨てにしてください」

「うん、わかった。じゃあ改めて、これからもよろしく桜」

「はい、よろしくお願いします陽ちゃん」


 笑顔でもう一度抱き合う二人。

 ……尊い。ああ、エリンの気持ちが少しわかってしまうかもしれないな。

 いや、待て待て落ち着け。そういうのはあくまで作り物でならって話だ。生もので妄想して興奮するような節操のない人間になった覚えは無いぞ俺は……!


「そうそう、せっかく晴翔と陽ちゃんに出会えた訳ですし……」

「桜……? おい、どうしてこっちに来るんだ……」


 不味い、この雰囲気は……。


「待て、今は陽だっているんだぞ!?」


 彼女の目の前でそう言う事をするのは教育上よろしくないぞ桜……!


「うん、大丈夫。私は慣れてるから」

「何だって?」

「ということですので、二人まとめていただいちゃいますね♡」


 なんてことだ。陽は既に懐柔済みだったと言うことか。

 いや、確か陽と桜の二人は向こうでは一緒に暮らしていた。つまり……そう言う事になる。


「待て、待ってくれ……!」

「大丈夫です、すぐに気持ち良くなりますから」

「桜のテクニックは凄いから、晴翔も一緒に混ざるべき」

「おあぁぁっ!」


 桜にがっちりと体を押さえつけられ、問答無用で頭を撫でられてしまう。

 あぁ、これ本当にヤバイ……桜の手が動くたびにこう、なんか受け入れてはいけない快楽物質がでてくる気がする。

 もう、このままでも良いか……。

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