47 見えた希望
いやいやまだだ。
今はとりあえずわかった情報を共有しよう。
ナビ、メッセージを全プレイヤーに送ってくれ。
[承りました]
これでコイツのカウンターの発動については皆と共有出来たはず。
後はどうにかしてコイツが蘇るのを防げれば……。
「来るぞ!」
「ああ!」
魔龍がブレスか何かを吐こうとしているのか頭を上げる……だが。
「……何もしてこない?」
何故か奴はその動きを止めた。
「何が起こって……うぉっ!?」
と思えば急に動き出して炎を吐き出してきた。
「何だったんだ……」
アクションゲームとかだとディレイをかけて避け辛くするのはあるが……そう言うのとは違う風味を感じる。
何というか完全に体全体の動き自体が停止しているような。
[報告、メッセージが届いています]
「わかった開いてくれ」
メッセージはRIZEからだった。
その内容は先ほど送ったメッセージへの礼と、向こうが気付いたことについてだった。
どうやら向こうでも同じく奴の動きが止まることがあったみたいだが、その度に少しずつ魔龍の魔力が減っているとのことだ。
俺は全く気付けなかったが、どうやらアルスが気付いたらしい。きっと戦闘の申し子とも言える彼だからこそ気付けたのだろう。
「どうやら奴は動きを停止する度に魔力が減っているようです」
「そうなのか。だがどうして……」
その通りだ。レイブンが言うように、魔力が減る理由自体はわからないままだ。
特に何かをしている訳では無い。ように見えるだけで、実際には何かを行っているのか……?
そうだ、ナビに魔力の流れを確認してもらおう。そうすればどこに魔力が移動しているのか、何に使われているのかがわかるはず。
ということでナビ、奴の魔力の動きを確認してくれ。
[承りました。解析中……どうやら魔龍から抜け出た魔力は南大陸……スターティアの方へと移動しているようです]
スターティアの方だって?
何でそんな方に……。
[追加で報告いたします。たった今魔力の移動先が変わりました。今度はダンジョン都市メイズガルドへ移動しています]
移動先が変わった……でもどうしてだ。
そこに一体何が……そもそも今そこらでは他のプレイヤーたちが魔龍と戦っているはず……。
いや、いやいや! それだろ!
今、色々な場所で魔龍が出没している。そしてその魔龍のいる場所に向かって魔力が向かっている。
つまりそれは、こいつらは互いに影響し合っているということだ。
「レイブンさん、確かめたいことが出来たので協力してくれませんか?」
「わかった。それで内容はなんだ?」
「奴は他の個体と影響し合っている可能性があるんです。なのでそれを確かめるために他のプレイヤーとメッセージで連携を取りたいんですが、その間奴の気を引いていてくれませんか」
「そういうことか。了解した」
それだけ言うとレイブンは魔龍の元へと走り出した。
よし、これでこっちはこれに集中できる。
「ナビ、全員にメッセージを送ってくれ。内容はこうだ」
ナビに内容を伝え、メッセージを送る。
そして数秒後には皆から返事が返って来た。これで準備完了だ。
策はこう。コイツが本当に他の個体と連携しているかを確認するために、今このタイミングで俺だけがコイツを殺す。
それで他の所の奴が動きを止めればほぼ確定だ。
「よし、行くぞ……レイブン、下がってくれ!」
「わかった! 後は頼んだぞ!」
レイブンが範囲から離れたのを確認してから魔法を放つ。
「グレートマキシマイズエクスプロ―ジョン!!」
さっきと同じ魔法なら間違いなく奴を一撃で葬れる。
[メッセージが届いております]
急いでメッセージを確認する。そこには予想通り、魔龍が動きを止めたということが書かれていた。
確定だ。コイツは決して不死なんかじゃない。膨大な魔力を持ち、どこかの個体が生きていれば蘇らせることができる。それがコイツの持つ能力なんだ。
それなら策はある。全ての個体を一斉に殺せばいいんだ。難しいだろうが俺たちにはプレイヤーとしての色々な力がある。
それは単純なステータスだけじゃない。メッセージ機能を始めとした、儀式魔法による色々な機能も俺たちの味方なんだ。
「ナビ、メッセージだ」
[承りました]
全員に10秒後に一斉攻撃を行う旨のメッセージを送る。そうするとすぐに返信は届き、皆了承してくれていた。
「これで……終わらせる!」
……今だ!
「グレートマキシマイズエクスプロ―ジョン!! これで、終わってくれぇぇ!!」
「グルォォッォォォオオォォッッ!!」
爆炎に包まれる魔龍。煙が晴れるまでの一秒がものすごく長く感じる。
まだか。まだなのか……。
「ハル……これは……」
「……ああ」
煙が晴れた時、そこには塵と化す魔龍の姿があった。
「倒したんだ……俺たち全員の力で」
[報告、強大な魔力反応を確認]
……何だって!?
ナビの報告を聞いた後、すぐに魔龍の方を向いた。するとそこにはかなり大きな空間の歪みが発生していた。
「あれが……」
いざ目の前にしてみるとうまく言葉に出来ない。というかそもそも状況が読み込めなかった。
あの空間の歪みを使えば念願の元の世界に戻れるかもしれない。そう考えると頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「ハル……?」
この世界に未練が無い訳では無い。こっちで作った交友関係だってあるし、白姫の存在はこの世界においてもかなり大きなものとなっている。
だが、俺は……。
「ああ、そうか。そういうことか」
「うあっ」
レイブンに背中を押され、空間の歪みに引っ張られ始める。
振り返ると彼はほほ笑みながら俺の方を見ていた。
「レイブン!?」
「君は帰るべきだ。元の世界に、大事な生まれ故郷に」
「けど……!」
「心配するな。こちらの世界は俺に任せろ」
レイブン……俺は……いやよそう。彼の厚意を無駄にはしたくないし、帰りたいというのも本心なんだ。
「ありがとう、レイブン……! いつか機会があればまた会おう……!」
最後に彼に向けてサムズアップをしながら別れを言う。それと同時に視界が真っ白になった。
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