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45 元の世界への手がかり

 あらためて魔導国にやってきた俺は今度は魔術師ギルドにやって来ていた。

 ここには優秀な魔術師が多く集まっていて、魔法に関する情報も多く集まっているらしい。そんな場所でなら勇者召喚の儀式魔法についても何かわかるかもしれないからだ。


「おや、おやおや!? 貴方は白姫さんじゃありませんか!?」

「ええ、まあ……」


 ギルドに入ると、受付嬢は開口一番そう叫んだ。

 そうだったこの大陸でも俺の名は轟いているんだった。特に魔法文明の国ともなれば俺みたいな有名な魔術師はそれなりの扱いにもなるだろう。


「貴方のおかげで魔術師志望の方も多くなり、魔導国は大きく賑わっておりますよ! それにしても貴方ほどのお方が一体何用なのでしょうか?」

「そうですね。単刀直入に聞くんですけど、勇者召喚についてご存じではありませんか? 何かしらの書物だとか、風の噂だとか、そう言うのでも良いんです。何かしらの手がかりとなりそうなものとかは無いでしょうか」

「勇者召喚……ですか?」


 受付嬢は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「すみません、私は存じ上げないですね。特にそう言った噂や情報も回って来てはいませんね」

「そうですか……」


 やはりそう簡単にはありつけないか。まあそうだよな。大規模に知れ渡っているんだったらもっと大々的に勇者召喚を行って世界を救ってもらえば良いんだ。

 それこそどこぞのRPGに良くあるような王の命令で魔王を倒す旅に出る勇者のようにな。

 そうすればこの世界も闇に飲まれしモンスターに怯える必要もない。


「ですが、召喚については少し気になる情報が」

「え……?」

「かつてこの魔導国に存在したプラチナランクの冒険者、『たかなしありす』と言う者はどうやらここでは無い別世界から召喚されたのではないかと、そう言われているのです」


 また、たかなしありすか。けど今プラチナランクって言ったのか?

 確か今プラチナランクとダイヤランクの冒険者は存在しなかったはず。最高でも俺が今いるゴールドランク。

 となるとそれだけの功績をプレイヤーとしての力も無く彼女は成し遂げていたと言う事か。

 ……超優秀な大先輩じゃん。もう少し敬意をもって接するべきだったかもしれない。


「彼女は突然現れたにしては凄まじい魔法の腕を持っていました。それもあの年齢で。それこそ世界でも数人しかいないであろう程の……ですがある時を境にその姿を消してしまったのです」

「いなくなったと言う事ですか?」

「ええ、まるで最初からいなかったかのように完全に痕跡を消してしまったのです。どこを探しても生きているのかさえわからない。そんな状態でした」


 恐らく彼女の言っていることは真実だ。アリスの言っていたこちらの世界への転移と元の世界に戻ったのと辻褄は合う。

 こうなりゃもっと情報が欲しいな。

 

「彼女がいなくなった時、何かありませんでしたか? こう、強大なモンスターが現れたとかそう言った何かが」

「そうですね……あ、そう言えばその時大きな空間の歪みが起こったとかなんとかって言われていますね。私は直接は見たことは無いのですが……」


 そう言うと受付嬢は奥へと入って行き、何かを探し始めた。


「ありました! 確かこの本に……これです!」


 彼女はそう言いながら俺に本のとあるページを見せてくる。


「かつて起こった大規模な空間の歪み。幸い人里に被害は起こっていないようですが、ありすさんが姿を現さなくなったタイミングと同じなんです。直接の関係はわかりませんが何かしらの関連性がある可能性はあるかと思います」

「これは……!?」


 本に記述されていた内容は今多く発生している空間の歪みと似ていた。

 いや、それだけじゃない。そこに描かれていた風景は紛れもない日本のそれだった。


「この絵は一体……?」

「なんでも近くを通りがかった画家の方が空間の先に見えた光景を描いたそうです。誰が見ても全くもって見覚えの無い場所なようで、もしかしたら別世界なんじゃないかとか言われていますね。まあ眉唾物ではありそうですけど」


 ……同じだ。この空間の歪みは今そこらじゅうで起こっている空間の歪みと全く同じものなんだ。

 それが大規模に発生した場合、向こうの世界への転移が可能になる。アリスのことが正しければそう言う事になる。

 これは、可能性だ。元の世界に帰ることが出来るかもしれない。


 けど、問題はこの規模の空間の歪みをどうやって発生させたのかだ。いやそもそも人為的に発生させられるものなのだろうか。

 偶発的に発生するものなのだとすれば、それが起こるまで待つことしか出来ないってことになる。


「あの、白姫さん?」

「……ハッ、す、すみません少し考え事をしていまして。こんなにも多くの有益な情報をありがとうございました」

「いえいえ、白姫さんのためになれるのでしたらこんなこと造作もないですよ。それではまた。白姫さんのますますのご活躍を応援していますね」


 受付嬢に挨拶をして魔術師ギルドをあとにし、時間も時間だから一旦スターティアに戻ろうとした。

 しかしその瞬間に正門の方から人々が走って来るのが見えた。


「どうかしたんですか?」

「出たんだ……魔龍が……!」


 魔龍……?

 聞いたことが無い名前だ。


[報告、魔龍は儀式魔法によって構築されたゲーム内には存在していないモンスターです]

「何だって?」


 まさかとは思ったが、やっぱり存在していなかったのか。


[あのモンスターは儀式魔法の発動後に現れた新種のモンスターであり、ただひたすらに人と街を襲い続けることから魔龍と呼ばれ恐れられていること以外ほとんどわかっていることがありません]

「新種……だって?」


 おいおいマジか。ここにきてナビすら見たことも聞いたことも無いモンスターが出てきたってのか。 

 ……もしかして、これも空間の歪みに何か関係があるのか?


[ですが一つわかっていることがあります。このモンスターは非常に強大な闇に飲まれしモンスターの反応を示しているようです]

「……そうか。なら、放っておくわけにもいかないよな」


 走って来る人の流れに逆らうように、正門へと向かって走る。

 そして外へ出ると、数百メートル程先に禍々しいオーラを放つ一体の龍が見えた。


「あれが……魔龍」


 どう見てもヤバイ見た目だ。何より全身からにじみ出る殺意が物凄い。この世界に来たばかりの俺だったら相対しただけで失禁気絶していてもおかしくは無い。

 とは言えゲームには存在しないモンスターであれ、後ろには人々の住む街がある。戦わないという選択肢は無い。


「やるしかない……よな」


 一筋縄ではいかない。それはわかっている。

 だからこそ、俺が……勇者が倒すしかないんだ。

お読みいただきありがとうございます。

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