6話
さらに前回からの続きとなります
「おはよう、今日は店閉めるわ。
表に臨時休業の札出しといて。」
「「…………」」
オープン前の店内清掃など準備作業をしていた美少年従業員二人は無言で了承の意を示す。
「昨日は悪かったな。」と無言の美少年従業員二人に謝る店主。
「あんなざっくりとした説明じゃわからないことが増えただけで理解も何もないよな。
だから事の発端のオレと神の神の事を説明するよ。」
「「…………」」
さっきからずっと無言の美少年従業員二人にたじろぐ程ではないが、それでも多少のやりにくさを感じている店主。
「居間にいるから。」
と奥へと引っ込んでいった。
…… …… ……
「やっと来たか、えらく時間かかったな。」
「「…………」」
「まずは大前提としてオレがいた世界を説明するところから始める。」
※ 店主のいた世界と読者の世界はほぼそっくりなので手抜きさせてもらいます(汗)
「店長のいた世界にはドワーフどころかエルフも魔族もいないのか……」と驚く美少年B。
「ああ、この世界線の種族は全部いない。オレのいた世界じゃあ世界各地の神話や古い御伽噺だけじゃなくて、絵本や演劇・小説・マンガ・アニメ・映画の中の創作物。」
「主殿よ創作物ってちょっと酷くないか。」
「酷くないかっていわれても……
ん~じゃあ空想の産物?架空の生き物?
ああ!アレだあれ!!
平和な国の14才前後に発症するアレな病の患者さんが信じて見えて意思疎通出来たりするけど大人になったとき『あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~』ってなる存在?。」
「最後のなんだ?まあそれでも主殿の元いた世界が人族だけの世界だということは理解した。」
「ちょっとまて美少年A、店長はこの世界の全ての種族がいないようにいってたような気がするぞ。
だから人族もいないことになるはずだ。」
「何を言ってる美少年B、主殿はどこからどう見ても人族じゃないか。」
「どうなんだ店長。」
「人族はいない、ちなみにこの世界の人族はホブゴブリンの亜種だ。」
「「ホブゴブリン?!」」
「そうだホブゴブリンの亜種だ。
考えてみてもみろよ、本来異種交配は無理に等しいと言っても過言じゃない。
なのになんで異種族のカップルに子供が出来る?
それは人族がホブゴブリンの亜種。それは人族がゴブリンの特性を持つからだよ。
ある一例だが人族が獣型魔獣を犯すと獣の外見的特徴の魔族が産まれる。そしてその魔族を犯すと耳と尻尾が猫や兎や犬でお馴染みの獣人が産まれる。」
「「………………」」
「ついでにドワーフだが人族が精霊を犯してエルフと妖精が産まれるんだ。その妖精を人族が犯してドワーフが産まれた。
この世界の知性ある地上の生命体は全て人族(ホブゴブリン亜種)が犯して産まれたのが始まりだ。
ただしドラゴン系統は別だ。
忘れるなよ、間違っても人化してる奴らに おまえらも先祖って人族(ホブゴブリン亜種)に犯されたんだよな なんて言うなよ。瞬時に世界中のドラゴンが転移で集まりブレスの一斉掃射喰らうぞ。」
「「………………」」
「てか話題がズレたから戻すがオレの元いた世界はそういう世界線の中の一つだ。
で、神の神が出会って間もないオレに勇者召喚を取り締まれ!と依頼してきたんだよ。
魔法が無い世界で勇者召喚は創作物の中のことって世界のオレには無理だから丁重に辞退しようとしたが断らせようとしない神の神。
その断ろうとしていた中で勇者召喚の事を詳しく神の神から聞き出すと、転生神やら転生の女神とか他にも魔法神とかとにかく出て来るキーワードが神・神・神………………神とひたすら神のオンパレード。
そして取り締まるのに便利な力を授けるとか、その授ける力はランダムとか受け取る者の資質で様々だからわからないとか怪しいフレーズまで出て来る。
だからこそ断るために勇者召喚を取り締まるならそれに関わる神をも取り締まる権限をくれ!これだけでいいと言ったんだよ。
そしたら二つ返事でOKしやがるから慌てて中身のない名前だけ・名称だけの建て前的な権限じゃ取り締まれないって交渉をして、粘りに粘り神の神から妥協することなく満額回答をもぎ取ったんだよ。
あとは神の神の気が変わらないうちにとっとと権限もらってお暇しようとしたら、勇者召喚取り締まりを少しでも長く続けて欲しいとかなんとか言い出して肉体を若返らせてやるってなったから色々とサービスしてもらって、ようやく世界線を移されて勇者召喚取り締まり、いわゆる異世界間パトロールを始めたんだよ。
そしたらビックリ!なんてもんじゃない。本当にそこいら中でポコポコ勇者召喚やってるからダブルブッキング・トリプルブッキング当たり前。勇者召喚取り締まり開始してからあっちの時間的に1ヶ月間程度はマジで寝てない。
そしてそんな時に突然出来た空白の時間にあの悲劇が起きたんだよ。
ホンマごめんなさい。」
「店長わかったよ、いやあまりにもアレがアレなんでよくわからないがわかった。」
「主殿の力というのは王制で例えると、貴族を取り締まる権限を得た主殿は全ての貴族の上位者、すなわち王を主殿の上位者ではなく同格ってことにしてそれを王に気付かせなかったって事でいいのか。」
「そそ、そういう事。
正確には冷静になってこれはマズイ、ってなる前にドロンしたって感じかな。」
やっぱり古いよ……
「そもそもなんで勇者召喚を取り締まるんだ?」
「そうだぞ主殿、勇者召喚はで喚び出した勇者でないと魔王を倒せないからと聞いてるぞ。」
「あのな!
二人とも良く聞けよ、勇者召喚ってのはただの誘拐をいい感じに耳障り良く取り繕っただけの犯罪行為。」
「「え゛っ゛!?」」
「え゛っ゛!?ってそこ驚くとこかぁ?、ビックリしてる二人にこっちがビックリやわ。ちょホンママジで頼むわ。思わず素に戻ったやん。」
「店長!誘拐ってどいうこと?」
「勇者召喚ていうのは呼びかけに応じてって聞いてるぞ。」
「んなわけあるかいな!
突然足下に転移魔法陣表れてさらわれんの。
そもそもあの魔法陣のどこにも勇者召喚魔法陣なんて描いてないぞ。」
「魔法陣てそもそも名前なんて描いてあるのか主殿よ。」
「空間干渉だけじゃなく世界線をも越えて、さらにそこそこアホそうなのを自動的に検索するという膨大な魔力が必要な術式だぞ。
間違って起動させたらロスした大量の生贄どうするよ。
だから魔法陣には必ず名前は描いてあります。しかも使用用途が明確にわかるようにね。」
「なんて描いてあるんだよ店長!」
「勇者(笑)召喚陣」
「「はぁ?」」
「だから勇者(笑)召喚陣だって。
オレなんかそこら辺の予備知識無しで初めての現場でそれだよ。
しかもだ、「おお勇者の皆様、我々の喚びかけに応えよくぞ……………………魔王の脅威よりお救いを。」的なお約束にすぐに引き受ける馬鹿一人とその気になってる二人に状況についていけてないのが一人の計4人。
もうどっからツッコんだらええかわからんかったわ。」
「「………………」」
マジでアレは衝撃やったわ。
昔 玄関開けたら2分でご飯 てCMあったけど、(勇者)召喚されたらす~ぐOKかいかい~っ!
ってなったもんな。
それでも気を取り直して勇者(笑)召喚陣に残る神気を辿り、捕まえた女神もろとも関係者を時の狭間に引き込んだわいいけど、いやあヒドい「異世界転移キター!」とか言ってはしゃいでるから「お前ら誘拐されてるから被害者なんやで。」って声かけたら「勇者召喚されましたのでお構いなく」とか、もうしまいにはキレやがるしで……
もうそんなんいつまでも関わってられへんからスタンして、さてと改めて容疑者共のサイレント解除したら罵詈雑言。取り調べにならへんけれども現行犯ということで、被害者の返還に必要な魔力替わりに容疑者全員の魔力と女神の神力を使って魔法行使。それでも足りないのはわかっていたから現地の法に則り罪の連座で魔力吸い上げてって術式組んでいたら“人族”と人族の崇める神が全滅したんよね。
4人の人間を送り返しただけで全滅ですわ、全滅判定やなくて全滅というか全消滅?みたいな感じ。
慌てて行使した術式のログ調べたら勇者(笑)召喚から人族全体が恩恵を受け、なおかつ誰も勇者(笑)召喚を反対せずむしろ早く喚べという感じなので全ての人族が有罪判定。
それでも被害者4人の返還する魔力には足りないからさらに生命力を吸い上げても足りなくて肉体+魂も全部魔力に変換したら族滅したと。
それでもまだ魔力が足りないから不足分はホブゴブリン亜種由来の他種族から賄った……
……
へーそうなんや~ってホブゴブリン亜種って何?!って叫んでたら、ホブゴブリン亜種の情報とその歴史が頭にインストールされてもうね、なんともいえない気持ちにさせられたよ。
自分たちがホブゴブリン亜種だと知られたら色々と不都合だから“人族”と自称したって、ほんなら魔王の脅威ってある種のマッチポンプ?
どうやろ、やっぱちゃうか。
「てことなんや。」
「てことも何も無いでしょう店長。」
「いやあオレって心の声大きいやん。」
「主殿よ、それは自分で言ってもいいのか?
まあたしかに全部の大きな一人言は聞かせてもらったが。」
ていうかどの現場も場所と人物・神が変わるだけで判で捺いたみたいな状況ばっかり。
神とガチンコでやり合うとか一切無いし、どの現場でも被害者の数に関わらず返還したら神々共々“人族”が全滅というか全消滅。
怖いよね、勇者(笑)召喚した世界は例外なく“人族”もといホブゴブリン亜種は消滅。
しかもアンデッド含めて。
きれいさっぱり無くなったもんなホブゴブリン亜種。