5話
4話からの続きとなります
「追々じゃねえだろっ⚓︎」
「主殿よ、中途半端に聞かされてもどうしようもないぞ。全部聞かせてもらうぞ。」
美少年二人の変貌ぶりに店主は諦めさっさと店じまいをしようと立ち上がり
「店内にお客さんがいないとはいえ、続きを聞かせるなら店閉めるぞ。」
と声をかけ美少年二人に手伝うよう促す。
…… …… …… …… ……
ようやく店じまいが終わると
「店長、俺達二人がショタ化したのは本当に店長が原因なんですか?」
「まずは奥に行くぞ。
店を閉めたとはいえこんな所(まだ店内にいてる)じゃ落ち着いて話しも出来んだろう。」
「主殿!まさかとは思うが誤魔化そうなんて考えてるのか?」
それには答えず奥に行く店主。
その背中にぶつぶつと文句を言いながらも奥へとついて行く美少年二人。
この店の奥には何故が剣と魔法の中世ファンタジー風世界に似つかわしくない六畳の居間がある。
その部屋に上がった店主は何も言葉を発する事なく、お盆にのった急須と湯飲みをどこからともなく取り出し茶を淹れる用意をはじめる。
居間の空気は重くなるが店主はお構いなしに湯飲みに茶を注ぐ。
美少年二人にもお茶を出し、自身が落ち着くためか店主は湯飲みのお茶に軽く息を吹きかけ口に含むように飲む。
「もう一度言うがさっき言ったことは全部本当の事だ。
どこから話せばいいかな、二人は何が聞きたい?」
「何が聞きたいって全部ですよ店長。」
「そうだな主殿。何があったらそんなデタラメな事になるのか始めから教えて欲しい。」
「お前ら勇者召喚て聞いたことあるだろう。」
店主の言葉に困惑する二人。
「店長は勇者なのか?」
「主殿よ、勇者は規格外な逸話が多いがそれでもデタラメな事は出来ん事くらい知ってるぞ。」
「いやいやそうじゃない、あわてるなあわてるな。
オレが勇者召喚のことを確認したのは、オレがしている異世界間パトロールの事を知ってもらう必要があるし、そうじゃないとオレの持つ“権限”も理解し難いとと思ってな。」
ますます困惑顔が深まる二人。
「オレはこの世界の者じゃ無い。
そして勇者召喚されたわけでもなければ“稀人”や“流れ人”などといわれる者でも無い。
オレはある時“神の神”と名乗る存在のいる空間に落ち込み、そこでいきなり任務を告げられた。
しかもそれ断れないんだ!
その任務というのが勇者召喚を取り締まるという無茶振り。
それまでのオレは只人っていうか勇者召喚してる世界と違って、オレのいた世界線は只人しか存在しないんだよ。
スキルもギフトもカースも何にも無い、そしてオレみたいな種族しかいない世界。
どれくらいの無茶振りかわかるか?」
「「………………」」
「でだ、そこで“神の神”と名乗る奴が 勇者召喚を取り締まるのに有効“そうな”力を授けよう とかなんとか言うんだよ。
慌ててオレが“どんな”力で幾つ貰えるのか聞いたら急に奴の言葉が 曖昧な表現になるんだよ。
こりゃヤバいなって感じたから、こっちから貰う能力を指定したんだよ。
それが神を取り締まる“権限”をくれ、それ一つでいいって頼んだんだ。
かなりの時間かけて交渉して肩書きの権限じゃなく本物の“権限”を認めさせて、その頃には“神の神”を名乗る奴もオレとの交渉に疲れていたみたいで、なんかオマケ的に長く活動するために向こうから肉体年齢も若返らせようかって、そこで未知のウイルスやら病原菌等々に害されないよう環境適応能力もくれるって聞いて、やっとそこで勇者召喚の取り締まり業務を受けたんだよ。」
「「………………!!」」
何かに気がついたような美少年二人。
「勇者召喚に神が関わってるからこその神を取り締まる“権限”なわけだ。
そしてその“権限”というのはあらゆる実行力が伴うモノ。
格だけでなら“神の神”と名乗った奴と一緒、だから何か向こうさんの都合が悪くなろうと一方的にオレの“権限”を剥ぎ取られる可能性も低くなる。
まっ、奴が本当は神の神の神でしたってなったら別だけどな。」
「店長がデタラメに強いのは神様より強いからだって事で合ってますか?」
どこか不安げな顔の美少年B。
「ああ、その理解で間違いない。」
「主殿の力の根源はわかったがそれが俺達二人のというか種族進化にどう繋がるのだ?」
困惑顔の美少年A。
「ああそこね、
神ってのは現世とか下界、または地上には干渉出来ない設定。
でもオレは地上にいながらにして神を取り締まる業務をしてる者。
だから只神より強い権能があるから言葉だけで事象が発現したり置き換えたりも出来る。
言い訳じゃな……
いや言い訳か……
あの頃はそこいら中てポコポコポコポコ勇者召喚してやがって、とにかく取り締まりに明け暮れてて自分が得た“権限”に付随する神の権能の本質に気づいて無かったんだよ。
異世界間パトロールを開始して初めてのぽっかりと出来た時間。
もうね、それまで昔の売れっ子アイドルも真っ青なくらい 睡眠時間てなに、美味しいの? 的な事が続いた後の事だったんだよ。
そんな時に見晴らしのいいとこでなんとなしにゴッドアイ彷徨わせてたらドワーフが見えた。
あとは思いつくまま呟いてたらあらビックリ!そして事件発生。
みたいな流れかな。」
「主殿よ、今日のところはこのまま部屋で一人になります。」
「店長、自分も部屋で頭なかを整理したいと思います。」
「うむ」
そう告げた二人の小さな背中を見送り頭を下げる店主。