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   王立魔導学園(3)


「ダリス・クリフォードです、よろしくお願いします」


 俺は、教壇の上で自己紹介を済ませ、軽くお辞儀をする。

 大体のクラスメイトが、パチパチと拍手で出迎えてくれている。

 しかし、一部は拍手をせずに、ジトッと品定めでもされてるかのようにこちらを見ている。


「それでは、空いている席に座ってください」


 教師に促され、空いているサレンの隣に俺は座った。

 教室は、講堂のような作りで一段ずつ半円の長い机が設置されていて、全部で4段まである。

 席は、特に決まっておらず自由に座れるみたいだ。

 そのせいか、サレンの周りの席は綺麗に空いており、今のサレンの状況を物語っていた。



〜昼休み〜


 ようやく昼休みになって俺は、サレンに引き連れられて屋上に来ていた。

 彼女は、来て早々キョロキョロと辺りを見渡して、誰もいないか入念に確認していた。


「大丈夫ですか? 誰もいませんか?」

「はい、出入り口付近にも人影はありませんよ」

「よ、よし、それでは……」


 彼女は、出入り口裏側の壁に手を触れる。

    

『開け 仮面の置き部屋』


 すると、触れた壁が光り輝き、ボンッ!と小さい爆発音と煙に包まれる。

 その煙から、あの赤い扉が現れた。


「す……すげぇ」

「ほら早く入って!」

「ちょ! 分かった、分かったって!」


 俺は、サレンに袖を掴まれて、その扉に引き込まれる。

 部屋に入った瞬間、サレンがど真ん中に勢いよく倒れ込んだ。


「はぁ〜ようやく気が抜けるよぉ」


 サレンは、外した仮面を投げ捨てて、ゴロゴロしている。

 以前より部屋の大きさが10畳程になっていて、サレンが寝転んでも結構余裕がある。


「……本当に大変だな」

「まぁね、でもダリスくんのお陰で大分助かってるよ」

「そうか?」

「そうだよぉ〜私の魔法についても知ってるのは、お父さんとアンナだけだし、と言ってもこんな情けない姿を見せるわけにもいかないし」

「でも、ダリスくんはもう1番情けない姿を見られちゃったし、大丈夫!」

「ハハッ、なんだよその理論?」

「この為だけにお父さんに我儘言って、根回ししてもらったもんね」

「下級貴族に拒否権は無いのか……」

「無いよ! それに、言ってくれたよね?」

「?」

「気が済むまで付き合ってくれるって」


 サレンは、ニヤリと小悪魔のように笑う。

 それを見て、俺は思わず笑ってしまった。


「約束してたな、それじゃあ仕方ねぇ、いくらでも付き合ってやるよ」

「ふふっ、ありがと!」


 これが、本来の彼女なんだろう。

 既に婚約破棄されているからと言っても、今まで仮面を被り続けてきた事から、自分の本音を出す事に臆病になってしまっている。

 まぁ、巻き込まれたもんは仕方ない。

 俺も支えよう、彼女の未来を。


「という訳で、早速話を聞いて」

「どうした?」

「あのあいつやばくない?」

「一瞬にして語彙力赤ちゃんになるな、もうちょい説明してくれ」

「ああ、あいつっていうのは、カルナちゃんだよ」

「カルナ? ああ、あの縦ロール?」

「そうそう!」

「なんかやってきたっけ?」

「えっ、まさか気づいてないの?」

「いや、なんかめんどくさそうとは思ってたけど……あと顔が怖い」

「……なんというか、本当にダリスくんって綺麗だよね」

「ん? なんだよいきなり」

「はぁ〜あれはね、わざと偶然を装って私に水をかけようとしたあいつの嫌がらせなんだよ」

「えっ? そうなの?」

「うん、今までも同じような嫌がらせが度々あったんだ」

「まじか……」

「その度に、ヴェールちゃんを使ってくるから、こっちも言いづらいし」

「ヴェールちゃん……あの三つ編みちゃんか?」

「そうそう」


ーーーーー


 そんな感じで、色々と話していると、いつの間にやら昼休み終了5分前になっていた。


「はぁー、スッキリしたぁ!」

「そりゃ良かった」

「この調子でこれからもよろしくね」

「いいけどよ、そんなに信用してて大丈夫か? 信用されすぎて心配するんだけど」

「何言ってんのさ、ダリスくんだから信用してるんだよ」

「……一体なんで?」

「だから、さっきも言ったでしょ」


 サレンが、両手で俺の両頬に手を添える。

 そして、俺の目を真っ直ぐ見る。


「貴方が、綺麗だからだよ」

「なにこれ、お世辞?」

「ふふっ、本当だよ」


 自分のルックスに自信は無いんだけどなぁ……。

 まぁ、褒められて悪気はしないしいっか。

 サレンは、投げ捨てた仮面を拾い上げて、被った。


「それでは、行きますよ」

「はい、お嬢様」


 俺が先に扉を少しだけ開けて、辺りをに誰かいないか確認する。


「よし、大丈夫です」


 俺達は、そぉーっと足音を立てずに扉から出る。

 すると、誰かの大きい笑い声が聞こえてきた。

 驚いて足がもつれてしまって体勢を崩したサレン。

 俺は、素早く下に回り込んでサレンを受け止めた。


「……ありがとうございます」


 そう小声で言うサレン。

 俺も小声で、


「確認してきますので、ここでお待ちください」


 俺は、とりあえずその場にサレンを待機させて、出入り口付近を壁に張り付いて覗く。


「あはははっ!」

「おいおい、そんなに笑ってやるなって」

「だって、こんなん見せておいて、笑うなってほうが無理ですよぉ」


 そこには、3人の男達が魔法で宙に浮かぶとある映像を見ながら笑っていた。

 その映像を見て、俺は衝撃を受けた。


「だってあの、無愛想なあいつのこんな顔……あははははっ!!」


 そこには、抑えきれず今にも泣き出しそうなサレンの顔が映し出されていた。



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