二話 王立魔導学園(1)
その後、アンナと一緒に共にサレンを部屋の前まで来た。
アンナが、軽く3回扉のノックする。
「はい」
「アンナです、ダリス様のご支度が終わりました」
「分かりました、今行きます」
すると、すぐに扉が開いた。
そこから、華麗に学生服を着こなすセレンが出てきた。
女子用の学生服は、紺色のボレロスーツで赤色ジャケットと首元にストライプ柄のリボンが可愛らしいデザインだったが、セレンが着るとなんとも大人の女性っぽい感じがして非常に似合っている。
「おお、これが本物か……やっぱり見た目も大事なんだな」
「ダリス様? 昨日散々言いましたよね? 言葉遣いには気をつけやがれって?」
隣では、恐らくアンナがこちらを睨んでいるだろうが、そんな事を忘れるくらい、彼女に目を奪われた。
「そんなに見られると照れちゃいます」
「お、おう、すまん……じゃなかった、申し訳ございません」
俺は、急いで口調と視線を変える。
すると、たまたま隣のアンナが視界に入る。
めちゃくちゃ笑顔なのに顔と腕から血管が浮き出でいた。
「おいこら、私が折角セットした髪型だからってぶん殴れないことをいいことになにお嬢様を下品な目で見てんの?」
「いや、見てねぇよ!」
「なに言ってんの、さっきまで鼻の下3m位のばしてたくせに」
「どこの化け物だよそれ!」
「フフッ、2人が仲良さそうでよかったです」
「やめてください、こんな汚れた男と一緒にしないでください」
「お前にだけは言われたく無いわ、変態め」
お互い睨み合う俺達。
「まぁまぁ、それより早く行かないと、学園に遅れちゃいますよ」
「あっ、そうでしたね、玄関前に馬車の手配はもう出来ております、それではいきましょうか」
アンナとの言い合いをやめ、俺達は玄関前まで行った。
玄関前につくと、そこには非常に様々な宝石で装飾された馬車が停まっていた。
「それでは、行ってきます」
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
アンナとは、ここで別れて俺達2人は馬車に乗った。
馬車の中は、ふっかふかの対面式赤いソファーがあり、床には黒い絨毯が敷かれていた。
俺達は、ソファーの片方ずつに腰をかけた。
そして、馬車の扉がバタンと閉まった瞬間、俺は目を疑った。
あのキリッとしていたセレンが、まるで空気の抜けた風船のごとく、ソファーにうずくまっていったのだから。
隣には、あの日見た仮面が置いてある。
「ええ!?」
「ああ、やっと仮面が取れるよ」
「……その仮面ってなんなんだ?」
「あっ、これ? これは私の固有魔法の一つなの」
固有魔法。
それは、生まれながらにして得た魔法。
人によって異なり、人と同じ固有魔法は無いと言われている。
「詳しくは、言えないけどこの仮面をつけると、感情を抑える効果があるんだよね」
「なるほど、文字通り仮面を被る固有魔法なのか」
「まぁ、自分のストレスや抑えてる感情が一定を超えちゃうと壊れてしまうの」
「壊れちゃたら、私のこの素顔がバレて大変なの、そこで貴方!」
「お、おう」
「外していれば、仮面の耐久度を回復できるから、学園で外す時はしっかりと護衛してね」
そう言って、彼女はニコッと微笑んだ。
「任せてください、お嬢様」
「うわっ、いきなり敬語使われると驚くね」
「でも、その調子でお願いね」
彼女は、その後続けてこう言った。
「……今日は、いつもより酷いと思うから」
俺は、その言葉の意味がわからなかった。
ただ彼女は、どこか悟ったような悲しそうな顔をしていた。