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   仮面の悪役令嬢(3)


 それから俺は、彼女の愚痴を聞いた。

 一体どれだけの何時間聞いたか、分からないが、陽が落ちて辺りが真っ暗になるまで彼女の愚痴は止まらなかった。


 所々、泣き過ぎて聞き取れなかったが、


・いきなり婚約破棄の話を持ち出された。

・婚約破棄のきっかけとして、ペルシア家の令嬢『カルナ・ペルシア』を筆頭に嫌がらせを受けたや違法行為をしたと次々に令嬢達が暴露し始めた。

・その全てが、明らかな嘘とマナーや規律に対して注意した事を改悪して話していた。

・その流れに乗っかるように他の貴族達も有る事無い事言い始めた。

・反論しようにも話す隙すら与えられない状況で袋叩きにされて、我慢が限界になって逃げちゃった。


 とまぁ、大体こういう内容だった。


「わ……私は、ガラナくんの婚約者として……常に厳しく教育を受けてたから、そういうマナーとか規律とかよく目についちゃうの」

「だから、他の人にもついつい注意しちゃって、でも威厳もしっかり示さないとと思って……冷たい態度を取ってしまって、他の人たちと壁ができて、どんどん私からみんな離れていってしまったわ」

「……で、でも、ガラナくんの為だからって……王妃になるんだからって……がっ……がまん……してたん………うっ、うわあぁぁぁぁ!!」


 ボロボロと溜まっていた物を話しながら、泣き崩れるサレン。

 その姿は、1人の真面目な女の子だった。

 一体、今までその小さい体でどれだけ我慢して来たんだろう。

 俺は、そっとサレンを抱きよせた。


「う、ううぇっ!」


 サレンは、驚いたのか凄い声を上げた。

 俺は、そのまま頭を優しく撫でた。


「落ち着くだろ?昔、落ち込んだ時、母ちゃんが良くやってくれたんだよ」

「……そ、そうなんだ」

「いっぱい泣け、今は思う存分泣け、気が済むまで付き合うから」

「……ん、ありがとう」


 サレン・グレイクリアが婚約破棄をされた時、俺は彼女が嫌がらせや違法行為をしたと聞いて、なんの疑問も持たなかった。

 多分、全員がそう言ってるし、黒い噂もあるから、悪どい令嬢様はえげつない事してんなぁ程度にしか思っていなかった。

 本当の所は、俺にはわからないけど。

 だけど今、目の前で押し潰されそうになって泣き崩れてる彼女を見て、嘘をついてるなんて考えられなかった。



〜数分後〜


 どうしよう。

 この状況、どうすればいいんだ?

 マジかよ……。

 この子、このまま寝たんだけど!!


「……すぅ……すぅ……」


 彼女は、俺の胸にもたれかかり、すやすやと眠っている。

 まさか、初対面でこんな事になるとは……まぁ俺からやったんだけど……。

 さっきまでは、いろいろあり過ぎて意識してなかったが、結構綺麗なんだよな……。

 サラサラの長い銀髪に、腫れてた目元が少し治ってうっすらと残る頬の赤らんでいる綺麗な寝顔だ。

 おっと、いかんいかん。

 理性を保て、俺はできる男だ!

 ゆっくり、ゆっくりと脱出を試みる。

 そっと右腕を引き抜こうとする。

 すると、ガシッとしがみつくように抱きしめ直される。


「……行かないで……1人に……しないで……」


 彼女のつぶった目から、一筋の涙が頬を伝う。

 どうやら起きているわけではないようだ。

 俺は、すぅーと静かに息を吐いた。

 こりゃ、動けないな!

 


〜数時間後〜


「……ん、いつの間に寝てた」


 むくりとサレンが起き上がった。


「ようやく、お目覚めかお姫様?」

「えっ!」


 腕の中で彼女と目が合う。

 彼女は、そのまま固まってしまった。

 ……いかん、もう……限界。

 俺は、眠気の限界でゆっくり倒れかかって彼女に体を預けた。


「えっ! ちょ、ちょっと!」


 戸惑う彼女を他所に、緊張の糸が切れた俺の意識はそこで消えた。


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