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一話 仮面の悪役令嬢(1)


「探せ! 見つからなかったら殺されるぞ!」

「は、はい!」


 ペルシア家の大きい庭園。

 そこでは、大勢の使用人達が冷や汗を流しながら何かを探していた。

 それは、ガラナ第一王子の婚約者『サレン・グレイクリア』。

 いや、正しくは元婚約者か。

 ついさっき、王子の誕生日パーティにて彼女は婚約破棄されたのだから。

 何故かと言うと、数々の令嬢に対する嫌がらせや暗殺者を雇った等々違法行為の数々が、そのパーティで暴露されたらしい。

 元々黒い噂が絶えない上に口も悪い悪役令嬢だったみたいだ。

 詳しい事は、飯食ってたからよく聞いてなかったからわかんないが、色々言われてても相変わらず堂々としていてた。

 最後には、


「そんなに婚約破棄したいならどうぞ、その女狐と偽りの愛を育んでください」


 とニヤリと微笑みながら言い捨てて、パーティ会場を去っていた。

 その時は彼女が姿を消すなんて、誰も予想していなかっただろう。

 そして俺は、その令嬢を探してこいと親父に勝手に使われた憐れな成り上がりの下級貴族だ。


「ダリス、1番早く見つけて、グレイクリア家の方に貢献してきなさい!」

「えー知るかよ、つーか親父が探せばいいだろ?」

「私は、家長だから勝手な行動は、かえって悪印象を与えるかもしれないだろ? 貴族になったばかりなんだから今が大事なんだよ」

「それに、子供のやった事なら許してくれるはずさ!」

「言ってる事全部だろうとかはずとか、ふわふわしてて説得力ゼロなんだが……つーか親父が私ってフツーにキモいんだからやめて」

「いいから行ってこい!!」


 と言う感じで今に至る。

 はぁ……はやく帰りたい。

 ここにいたら、ずっと堅っ苦しい言葉使いと拷問器具のようなかっちりした服着ないといけないし。

 つーかこんなに探していないなら帰ったんじゃないのかよ?

 はぁ〜貴族になってから面倒くさい事が多いなぁ。

 俺がとぼとぼと庭園の裏庭を歩いていると、微かに女の子の声が聞こえた。


 俺は、その音を頼りに歩いて行く。

 すると、とある不自然な一部の壁を発見した。

 そこからなんか、めっちゃ声が聞こえる。

 なんて言ってるかはわかんないけど、何かを訴えるような叫び声がこもって聞こえた。


「でも、ただの壁だよなぁ?」


 俺が、その壁を右手で触った瞬間だった。

 バチンと青い電撃が壁に走った。


「えっなになになに!!」


 青い電撃のが収まると、目の前の壁がパリンとまるでガラスのように崩れて、そこから不自然な赤い扉が現れた。

 

「……とりあえず、入ってみるか」


 俺は、ドアノブに手をかけて、扉を恐る恐る開ける。

 扉の先は、3畳ほど狭い部屋だった。

 部屋右側の小さい棚に奇妙な仮面が3個並べてあるだけの殺風景なその部屋の中心にポツンと小さな女の子がこちらに背を向けてうずくまっていた。


「うっ……ううっ……なんで」

「なんでなのよぉぉぉ!!!」


 彼女は、叫び声を上げる。

 

「あいつ! あいつ! 私が今までどれだけ我慢したと思ってんのよぉぉぉぉ!!」

「一生懸命、マナーとか規律とかあいつの為に勉強したっていうのに、こんなの……こんなのって……あああああああああ!!」


挿絵(By みてみん)


 彼女は、その狭い部屋でのたうち回っていた。

 これは……まだこっちに気付いていないみたいだな。

 俺の勘が言っている。

 彼女に関わったら絶対面倒事に巻き込まれると。

 俺は、速やかに扉を閉じて逃げようと動いたその時だった。

 彼女は、ピタッと止まりこちらに向かって起き上がったのだ。


「あっ」

「……えっ」


 50cmほどの扉の隙間から、彼女と目があってしまった。

 一瞬時が止まったかのように、沈黙が流れる。

 彼女は、顔はぐしゃぐしゃで、目元は泣き腫らしたようで真っ赤に染まっていた。

 そして、それはどんどん顔全体へ広がっていき、額から指の先まで真っ赤に染まった。

 やはり、俺の予想は当たっていた。

 正直信じられないが、この泣きじゃくって転げ回っていた彼女は、紛れもなくサレン・グレイクリア本人だ。


「きゃあああああああ!!!」


 サレンの絶叫が、庭園中に響き渡った。


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