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第七十三話 古の種族

 メイルウルフを見付けた後、休憩がてら持参した果物を軽く食べ。

 涙草も採りつつ主要な道を一通り探索する。


 未開放だったダンジョンとはいえ、場所としては主要都市のシェーン・メレと王都とを繋ぐ要所。

 他の場所にも言えることだが、腕に自信ある者であったり王国の騎士団が演習や時間短縮で利用するため大抵は荒くとも道がある。主が討伐されていないだけ。そういう場所も少なくない。


 主が居る、ということはその場所の魔物がある種の後ろ盾を得、人に対して大きく出ることが懸念される。

 だから、いくら護衛を雇おうとも一般の者は立ち入り禁止なのだ。

 未開放であるならば自己責任。冒険者といえど、入場申請が出来なければギルドの助けも期待できない。


「うーーーむ」

「鱗あるヤツらって、やっぱ東の森にほとんど来ちゃってたのかなぁ?」

「そうだな……。僕らが最初に入場したのであれば、乱獲された訳でもあるまい」

「にしても穏やかというか、あんまりワシらに興味がないというのか」


 確かに。どれほど温厚な魔物が多いと言っても、東の森に現れた奴らは人を見ればそれなりに襲ってきてはいた。

 穏やかにも限度がある。


「……もしくは、エドにビビってるんじゃ!?」

「ワッハッハ! そりゃぁ、仕方ないのォ!」

「なるほど。一理ある」


 エリファスやライを初めて見た時も思ったが、エルフの魔力というのはどこか……質が違うと言えばいいのか。

 上手く表現できないのだが、人間同士が感じるそれとは少し異なっていた。

 エドもドワーフ、それも古来からの血筋とのことだ。

 ゾゾ共和国ならまだしも、メーレンスでは馴染みのない不思議な感覚を魔物たちも感じ取ったのかもしれない。


「それか、魔術のことがあって警戒してるのカナ~」

「! あぁ……、その件もあり得るな」


 何にせよ、センの森の魔物はここ最近。激動の時を過ごしたことだろう。


「ほーお」

「「?」」


 エドは立ち止まり、どこか感心したように僕とヴァルハイトを見る。


「──お前さんら、いーいコンビなんじゃな!」

「!?」

「あ、やっぱわかる~?」 

「~っ、どこがだっ!」

「そうじゃなぁ。……ヴァルっ子はなにも考えてないようで色々考えとるみたいじゃし。

 ルカ坊はルカ坊で、冷静に自分で分析しつつもヴァルっ子の意見を尊重しとる。腕が強いだけの奴はワシも色々見てきたが……。なんじゃろな、冒険者としての資質とでも言おうか」

「エド、それ……オレが能天気に見えるってコトー!?」

「ワッハッハ!」

「否定しないの!?」

「はぁ」


 古き血筋の種族……。エドは、僕より多くの者を見、多くの英雄譚を聞き、鍛冶師として多くの武具を作成してきた。エドが生み出すもの。それに相応しい強者としての定義を、独自に解釈していることだろう。


 ……彼は、自分で考えることも、他者の意見を聞くことも両方大切だと言いたいのであろうが。


「こと戦闘に関しては、言うことは無いのだがな」

「あー!? ルカちゃんまで、ひっどーい!」

「うーむ。二人の持ち味が、うまいこと噛み合っとる気がするんじゃがなぁ」

「オレの持ち味? ……フッフッフ。いや~わるいね、ルカちゃん。オレだけイーイ男、だって!」

「いや、ワシが言いたいのは──」

「お前の言うイイ男という奴は、チャラくてうるさい奴なのか?」

「ヒードーイー!」

「ワッハッハ!」

「……はぁ」


 この男は相変わらずというか何というか。

 調子づいた時は、話を変えるに限る。


「ところでエド。貴殿らのように、王の血? というのか。古来からのドワーフには、何か名称があるのか?」


 あいにく僕はそれを知らない。


「まー人間らは特別、分けて言うこたぁないだろうが。ゾゾ共和国においては、ワシらをエルダードワーフと呼ぶのぉ」

「へぇー?」

「ワシぁ、一応ドワーフ族の首長なんじゃ。鍛冶が本業なもんで、そういう……まとめ役には別のもんがおる。

 エルダーの中では若い方なんじゃが、火のエクセリオンになったからにはのぉ。断れんくてな」

「随分と柔軟な統制なのだな」

「そこは人間らと違うんだろうなぁ。国というのか、種族というのか。重ねてきた年数が違うからの」

「なるほど……」


 寿命が長いということは、一代安定した時代を築けば中々争いも起きないはず。

 協定や同盟といった特別なものがなくとも、種族同士の信頼関係が成されているということか。

 人間においては、同じ種族同士であるのに……いざこざはいつの世も絶えないが。


「ゾゾ共和国にも来るといい、今代のメーレンス王は商売上手じゃからなぁ!」

「エアバルド王は冒険者としての経験を、様々な分野で生かしておられる。

 ……素晴らしい御方だ」

「冒険者、ねぇ」


 そう言えば、ヴァルハイトの父──メルヒオール王はどうだったのだろうか。

 二人の王が盟友と呼ばれる所以となった一つ、通貨の統一。

 エアバルド王がメルヒオール王の後に王となったことがきっかけで、様々な両国間の緩和策が成された。

 二国の間に挟まるゾゾ共和国も二人の王の働きかけで賛同し、通貨はメール。

 しかし、未だ人間と積極的に交流を持たない地域では昔の通貨もまだ見られると聞く。


 先鋭的なエルフであるエリファスと行動を共にしたことがきっかけだったとしたら、保守的とも言える女神聖教の根幹と共にするメルヒオール王とは……どのような考えを持つ人物なのだろうか。


「そーいえば、エリファスの銀の双剣もエドが打ってるって聞いたけど?」

「なんじゃ、あやつの知り合いか」

「僕の師がエリファスの元パーティーメンバーなんだ」

「……もしや、ヒルダ嬢か?」


「「嬢……」」



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