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第五十三話 大規模な依頼

 いつも思うが、嫌な予感というのは毎回必ず当たるのは何なんだ。


「ねぇねぇ。私達、いまフルパーティー限定の依頼を受けようと思ってたんだけど、二人が良ければ一緒に受けない? ヴァルハイトの実力も分かってるし、知り合いの方が安心できるからさ! ね?」


 アンジェとやらがヴァルハイトの実力を理解しているということは、後ろの男性二人組も恐らくは彼の実力を目の当たりにしているだろう。


 それを差し引いても、女性陣の注目がヴァルハイトに向けられるのが気に食わないのだろうか。

 冒険者としてそれはどうなんだ。


「アンジェ……! 勝手に決めるな、リーダーは俺だぞ」

「実力はともかく、得体の知れない魔術師を入れるのは賛同出来ないな」


 ほう。

 どうやら、このパーティーの魔術師枠の彼は、黒持ちの僕に対する不信感があるようだ。


 赤みがかった茶髪を見る限り、火か土の魔法が得意なのだろうが。

 その気概からはよほど実力者と見える。


「あのなぁ、……たしかに実力者を迎え入れて冒険者としての経験積んでけーとは言ったけどさぁ。オレ達じゃなくてよくない?」


 わりと他人に対して親切な方であるヴァルハイトには珍しく、断りをいれる雰囲気だ。

 よほど良い思い入れのないパーティーなのだろうか。


「えーー、そっちの彼の実力も気になるし。知らない人と上手く連携出来るか不安だし……、ねぇキア?」

「そうね。安心して背中を任せられるし。……何よりちょうど前衛と後衛の二人組だから良いんじゃない?」


 キアと呼ばれた金色の髪をした女性は双剣使いだろうか。

 その軽装からは、俊敏な動きで相手を翻弄する役割を担っていることが伺える。


「えーーーー、……ルカちゃん。どうする?」

「まぁ、僕は構わない……。だが、そちらの二人は乗り気ではないようだが?」


 正直、受ける依頼に迷っており、ヴァルハイトの以前組んでいたパーティーの実力とやらも気になるのは事実。

 僕はどちらでも構わなかった。


「……ふん。ヴァルハイトと組む魔術師が、信頼できるとでも?」

「も~、アストってばなんでいつも喧嘩腰なの!」


 全くだ。

 初対面でそこまで不信感を持たれる筋合いもない。


「クヴァルも。ふつうの二人組とか知らない二人を入れるより、ヴァルハイト達の方がずっと安心できるって……、本当は思ってるでしょ?」


 リーダーと言っていたクヴァルとやらは、その重厚な装備から生粋の前衛職だろう。

 身を盾にするいわゆる盾職という者なのか。

 僕は組んだことがないので、盾職の動き方には少し興味がある。

 

「むう……、だがなぁ。……じゃあ、こうしよう。先にギルドの受付で、同じ依頼で待機者がちょうど二人いればそちらに頼む。一人か、もしくはかなりの数が待機しているなら、ヴァルハイト達に頼む。これでどうだ?」

「そうね、元々そのつもりだったし。そうしましょう」

「やったー! ヴァルハイト、ちょっとだけ待っててくれる?」

「…………はぁ。好きにしろ」


 軽口を言う暇もないほどヴァルハイトのペースが持っていかれるのは、傍から見ていれば面白いが。

 どこか達観しているのは気のせいだろうか。


「じゃあ、ここで座って待ってて! 依頼の受付して聞いてくるわ!」


 アンジェとやらはヴァルハイト以上に快活な女性だ。

 男性陣が押されるのも、無理はなさそうである。


 僕らは言われた通り、受付区画に用意されている待機スペースで彼らを待つことにした。


「あーーーー、ルカちゃん。マジでごめんね? 前からああなんだわ~。特にアストなぁ」


「いや、気にしていない。むしろアンジェとやらの僕に対する興味は珍しい。ふつうの者の黒持ちに対する評価は、恐ろしいか、……もしくはアストとやらと同様の反応のどちらかだからな」


「ルカちゃん優しいねぇ。もーー、オレ前組んだ時はあきれてすぐ抜けたからさぁ。素質は……わるくないんだけどね~」


「お前がそう言うのも珍しいな。……まぁ、どういう依頼か知らないが、魔物の討伐であれば僕ら二人でも彼等に遅れをとることはないだろう。いざとなれば、勝手にやらせてもらうさ」


「お。ルカちゃんのオレに対する評価は、上がってるね♪」


「さあ、どうだろうな」


「照れ屋さんなんだから~♪」


 そうこうしていると、クヴァルとやらが慌てて走ってきた。


「お、お前。いやっ、君は、グランツ公爵家の者なのか!?」


 どうやら他に待機者もおらず、パーティーの情報を受付に申し出るところだったらしい。

 王都の受付で僕を知らない者はいないだろう。


「引き取られ、育てられたというだけだ。血筋ではないから気にする必要はない」

「いや、だが……」

「その前に僕は冒険者だ。そこに身分は関係ない。もし他にいなかったのなら、ルカ・アステル・グランツとヴァルハイト・ルースで登録しておいてくれ」

「わ……分かった」

「受付の人がルカちゃんのこと教えてくれたってことは、何かヤバい依頼なのかな?」

「さあな」


 そもそもフルパーティー、六人限定の依頼だ。

 危険か、もしくは特殊な依頼であるのは間違いないだろう。


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