第五十二話 王都での依頼と思わぬ再会
食事を終えた僕らはラディらを見送り、今後のことを再度話し合っていた。
「どうする~? 依頼、のぞいてく?」
「そうだな。なるべく自活したいから、宿もとりたい」
「王都を一通り見たら、他の地域に行く感じ? ルカちゃんって、王都のことはけっこー分かってるからすぐ出発してもイイけど……」
「今回の件もあったからな、一応王都の状況も見ておきたい。……それに、他国の首都というのは中々来る機会もないだろう?」
「──え!? オレのため!? ルカちゃん、やっさしーい♪」
「うるさいぞ」
実際身の上を聞くところによると、王家に引き取られてからはほとんどを城の中で過ごしたらしい。
外の世界。
それも、他国ともなれば、来るのも初めてだろう。
まぁ、僕が自分の育った場所というのを、見せたかっただけかもしれない。
一人ならばさっさと出発しただろうが。
何となく、ヴァルハイトとは王都にも滞在したかった。
「んじゃ、依頼のボード見に行こう♪」
「行くか」
同じ建物内の別の区画、最初に訪ねた場所へと再び戻る。
◇
「ふむ……、さすが王都。色々と依頼があるんだな」
他の街と違い、午前中にはなくなるようなソロでの依頼もまだ豊富に張り出されている。
そもそもの依頼量が段違いなのだろう。
その分、依頼を受ける冒険者も多かった。
僕らの周りには、少しだけ空間があいている。
「やっぱルカちゃん有名人♪」
「お前が目立つんだろ」
この大陸における女神信仰では髪や瞳の色というのは己の魔力のうち、最も色濃く女神より祝福を受けた属性の色が反映され、その色が純粋に属性色に近いほど魔力も強い。
……というのが通説だ。
ラディやイレーズは十中八九、風の属性が。
アコールは土の属性。
黒や白持ちは基本的に二属性以上。
ではヴァルハイトは。
「メーレンスってあんまり赤い髪っていないもんね~」
その火の属性を確実に表す真っ赤な髪色は、水の女神を奉るメーレンスにおいて、あまり見ない色だった。
ルーシェントや他の地域にはいるのだろうが……それにしても、見事な赤だ。
おまけにヴァルハイトは光の先天属性も持つ稀有な存在。
彼の母親というのは、どんな存在だったのだろう。
「どれにするかな」
薬草採取は趣味も兼ねれるが、王都の滞在費を賄えるかは怪しい。
魔物の素材納品もなかなか良いが、数が多く選ぶのが難しい。
家の修理や、家事の手伝い。
掃除にペットの捜索。
依頼は実に様々だ。
そう、悩んでいるところだった。
「──あれ? ヴァルハイト? ヴァルハイト、だよね!」
「ん?」
後ろを振り返ると、男女四人組のパーティーがいた。
「久しぶりーー! 王都に来てたんだね!」
「アンジェ!? ……ってことはクヴァルたちか」
「元気そうで良かったわ」
「知り合いか?」
傍から見るに、女性二人はヴァルハイトに随分と好意的で、男性二人はどこか遠慮気味といった感じだ。
「ルカちゃんと会う前にダンジョンで組んでたパーティーの四人組、かな」
「ほう」
「やーん、黒持ちの魔術師だなんて久しぶりに見たわ♪ ヴァルハイトと組んでるの?」
青い髪が特徴的なアンジェと呼ばれた女性は、どこかヴァルハイトに似てるのは気のせいだろうか。
同じ年くらいだと思うが、どうやら年下に思われているようだ。
「……あぁ、ルカだ。不本意ながらこいつと組んで旅している」
「ルカちゃんは照れ屋さんだから気にしないでね~♪」
「二人組だなんて、丁度いいんじゃない?」
「へ?」
「お、おいキア勝手に決めるな!」
「いいんじゃない? 私は賛成ー♪」
「ふんっ、ヴァルハイトとなんて冗談じゃない! そこの魔術師も胡散臭い」
胡散臭いかどうかは置いといて、ヴァルハイトは前のパーティーで何があったんだ……。
女性陣の絶大な信頼とは別に、男性陣からの支持率は低い。
まぁ、状況を見る限り何となく想像はできるが。
とにかく嫌な予感しかしないのは気のせいであって欲しい。




