第四十五話【別視点】回復術師の見立て
「エリファスよ」
「はい?」
屋敷へと帰るルカを見送った後、シュナイダー伯爵にお礼を言われ、屋敷へと招かれた。
そこへ、エアバルド王──バルドが声を掛けてくる。
「お前も、ルカを見守ってやってくれ」
「ええ、ゾゾ共和国にいらした際は、必ずや」
「ルカは……、光の魔法を使えると思うか?」
そう問われるには理由がある。
魔族の中でも更に種族があり、夜の一族と陽の一族と分けられる。
その違いは、闇の属性を宿して生まれるか否かだ。
血筋と同等に、魔力で身分や種族が分けられる。
そして、大多数の夜の一族は、陽の一族とは比べものにならない魔力を有するという。
だが、闇を持って生まれる者は、光の魔法を覚えることが出来ない。
その逆、ルーシェント王家も然り。
今の世では、四属性を全属性と位置付けるが……。
果たしてルカは、どういった位置付けとなるのだろうか。
それは、誰にも分からなかった。
「どうでしょう。ルナが……、どういった生い立ちであったのか」
「そこだな。そういったことを全く気にせず旅していたからな。何せ、エルフと人間と獣人のパーティーだ」
「何です、人を珍獣みたいな目で見て」
「人間と長旅を共にするエルフとは、珍しいに決まっているだろう」
「今でこそ、昔ほどの閉鎖的な環境ではありませんよ。……まぁ、当時としては先鋭的でしたでしょうけど」
私のような先例があり、徐々にではあるが。
エルフ族の中にも里を出て旅をする者。
国外……主にメーレンスと商いを始める者もちらほら出てきた。
「それも、あなたの治世のおかげでは?」
「さぁ、どうだろうな」
「国境付近の街では、共和国出身の者も多くいると聞きます」
「そうだな。……だが、今回の件で、ポーションを初めとした商業ギルドに一度卸す物は、少し取り決めをせねばなるまいな」
「ええ。望ましいのは、もう少し我々に近いほどの魔眼を扱える者が増えて、国から派遣するのがよろしいかと。冒険者にはいるでしょうが、常に移動してらっしゃいますしね。あとは、貴族が独占しないよう、流通を制限する必要もあるかと」
「そうだな。魔眼についてはヒルダに一人心当たりがあるらしい。流通ルートを制限して、検品する場所を定めるか……。もしくは中間地点で設けるかだな」
「そうですね。そこは、貴方の采配であれば間違いないでしょう」
「買い被りすぎだ」
「ふふ」
「翼の会……か。奴らがどこまでの組織なのか。全く分からない今、互いに気を付けるとしよう」
「魔術師の、それも二属性以上の者で造り上げる理想郷ですか……。なんとも、まぁ。陳腐なものですね」
「リューゲンのように、全員が分かりやすい者ならば良いがな。幼き頃より、そう教育されていれば、それが世界の真実だと疑わない純粋な者もいるだろう。……注意せねばな」
「ええ。こちらも、首長らには伝えておきます」
「頼んだぞ」
「どうかお気をつけて。──では」
旧友へ別れを告げる。
かつての仲間が集うには、いささか不穏な舞台ではあったが。
……それでも、友と会うのは心が弾むものだ。
「翼の会……、ですか」
己の智をもってしても、全容が分からない存在。
しかし、確実に事を起こそうと準備をしていたことだけは今回の件で分かった。