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第四十話【別視点】ヒルデガルド様の制裁

「王よ、私の後ろへ」


 まさか、リューゲンが黒幕だったなんて。

 (わたくし)としたことが、気付かなかった。

 筆頭魔術師であると同時に、魔法学校でも教える立場の自分にとって、彼の思想にはそれほど触れる機会もなかった。

 エルマー様が知ったら、なんと言うのか……。


 それに、頭の切れる彼が勝算もないのにこれだけのことをしでかすはずもない。

 幸いにして私の部下は引っ張られていないようだけれど、彼の部下はどうだか。

 この大陸には他にも、翼の会なる者たちは存在する。

 これは、……今回の件は。

 恐らく、ほんの一端に過ぎない。


 ひとまず、この場。

 ここを切り抜けなければ。

 王や伯爵らを守るためとはいえ、ルカやヴァルハイト君の戦いを見守るしかない……とは。

 こんな時に、我が子とその友人が命を懸けるのを、見ているしかないのか……!


「ヒルダよ」

「はっ」

「そなた、クレーマー男爵の元へ行くといい」

「……しかし」

「自分の身くらい、守ってみせる。なあに、そなたと違って実戦から遠ざかって久しいが、かつてのパーティーメンバーくらい信用してみろ」

「王……、ふふ。いえ、バルド。ここは……頼んだわよ!」

「ああ、行って来い」


 かつて。


 エリファスらと共に、王となる前のエアバルドとは旅の仲間だった。

 その日々はかけがえのない、輝かしい大切な思い出。

 そんな時間を過ごした仲間のことを、信用できない訳がない。


「シュナイダー伯爵、お守りすると言ったのに、ごめんなさいね。リヒャルト殿下も……。王の側から……離れませんよう」


「ええ、承知しております。どうぞ、お気をつけて」

「我々には構わず、行ってください」


「ありがとう」


 さあて。お仕置き……開始、かしら?



 ◇



 対峙する者達とは別に、こそこそと逃げようとする者がいた。


「あーーーーら、男爵。どちらへ行かれるのですか? よろしければ、お手伝い致しますわよ…………冥界まで」


 そう言えば、出口を塞ぐ魔術師を除けようとしていた男爵は身を縮こまらせた。

 ほんっと、逃げ足だけは早いのね。


「ひっ。き、きさま! なぜ魔術師の分際で、リューゲンの邪魔をする!」

「分際、ですって? ……(わたくし)、常々思っておりましたの。お金を使って、必要以上に魔術師を雇い集める貴方は……、きっと我々を商品として見ているのでしょう。ってね」

「な、何を言う! それにほいほい着いてくる奴らが悪いんだ!!」

「あら、そうですか。でしたら、ポーションは返してもらいませんと。あれは、伯爵がきちんとお金をもって、貴方から正当に買おうとされていたのでしょう? ポーションは……ほいほい着いて行きませんから」

「ぐぬぬぬ、バカにしおって! おい、お前ら!! この女を始末しろ!!」

「お、お言葉ですが男爵……。我々では、敵いません……」

「我々の目的は貴方を守ることではなく、この国を変えることです」

「少しはご自身で、事を起こしてみては如何か?」


 なるほど、信用は得ていないようだ。


「……お金で買える絆があるなら、是非見たかったのだけれどねぇ」

「どいつもこいつも、使えん奴だ!!!!」


 ブチッ。


 何かが、切れた音がした。


「…………ほーーーーんと、自分は手を汚さずに、うま味だけ吸って上手くやろうとしたんでしょうけど。生憎、我らとルーシェントの王は、貴方たちが思っている以上に、聡明なのよ」


 ルーシェントの王は、きっとこうなる事を予想していたのだろう。

 それを、盟友と言われるエアバルド王へと、采配を託した。

 そんな気がしてならない。


「民を想い、我らを気遣い、全ての者の上に立つ覚悟のある方への冒涜……。そして、魔術師を物として扱うその気概……、全てが、全てが腹立たしいわ!!!!」

「!!??」


 言うと同時。

 頭が働くよりも、体が動いていた。


 こんな奴に、自身の魔力を使うことすらもったいない。

 拳で、十分──よ!


「これでも、────くらいなさい!!!!」

「ぐへええええええ!!??」


 顔の右を、握った拳で思いっきり殴り飛ばした。

 勢い余った男爵は、出口を塞ぐ魔術師たちへと吹っ飛んだ。


「あーーーー、スッキリした♪」


 ここ最近ずっと気を張っていたこともあり、その元凶のクレーマー男爵を吹っ飛ばすことが出来て万々歳だ。


「これからは、悪い子には……鉄拳制裁が一番ね」


 そう言いながら、ちらりと魔術師たちを見れば身震いをしていた。

 失礼しちゃうわ。


「手伝いましょうか? ヒルデガルド殿」

「貴方は……、アコール、だったかしら?」

「ええ。ヘクトールも……、この通り」


 何かを引きずっていると思っていたが、意識が飛んだヘクトールだったのか。


「あなたも、ストレスためるタイプ?」

「いえいえ、貴女様ほどでは」

「良く言うわ」


 普段小出しにしないタイプほど、怒ると怖いのよねぇ。



 

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