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第三十三話 作戦会議 その一

「それで?」


 あの後騒ぎだすかと思った師匠は、やはり王宮魔術師なのだろう。

 事の重大さを理解しており、僕達を応接間へ案内したあとすぐさま本題へとうつった。


「あぁ。師匠がどの程度把握しているかは知らないが、僕が送った魔術師とゴロツキ共はクレーマー男爵に金で雇われた者達で、シェーン・メレでポーションをハイ・ポーションと偽っていたんだ」


「街の検問の者にも金を渡してたのか、それがバレないようにランクCより上の冒険者や魔術師が来たら連絡がいくようになってたみたいだよー」


 用意してもらった紅茶を飲みながら、お互いの情報を共有していく。


「なるほどね……。クレーマー男爵は、どうやら呪術を扱える魔術師を抱えているみたいなの。もしかしたら、ポーションの在庫を独占しようとしているのは、それも関係しているのかしら。シュナイダー伯爵から聞いたけれど、貴方は解呪のために王都へ来たのよね?」


「ええ、()に頼まれましたので。それが、色々な思惑に繋がっていたとは知りませんでしたが……」


「……これは私の考えだけど、クレーマー男爵のお抱え魔術師には『翼の会』が関わっていると思うの。そして、それは王宮魔術師の高位の者にも存在している……、(わたくし)が今回の呪術の件も全く知らなかったのは、伯爵の奥方が通っている治療院の魔術師に、口止めしている者が居ることになる」


「やはり、貴女もその線を考えていましたか」


「……ヴァルハイト、お前の考えはどうだ?」


 メーレンス内の動きとしては、『翼の会』とクレーマー男爵が何らかの共通の目的を持って、国内外のポーション類を手中に収め、何かを企んでいる。


 その輸入先である、ルーシェントから来たヴァルハイトはどう見るだろうか。


「そうだなぁ。……ヒルデガルド殿にも分かるように、オレが来た目的からお話します」


「ええ、お願いするわ」


「……ご存知かとは思いますが、我がルーシェントの王位継承権は出生順、且つ光の魔法が使えることです。そして、現在第一王子は使えず、第二王子は会得しています。現王──メルヒオール王は厳格なお方。腐敗していた貴族たちの粛清と、民のために正しき国の在り方というものを常々模索しておられる方です。だが、それが一部の貴族たちには面白くない。そのため、第二王子を擁して、自分たちの都合の良いように操ろうと企んでいる一派がおります」


「なるほどね。確か、近々第一王子は三十歳になられる……、それに先駆けて第二王子派の動きがあったと?」


「はい、第二王子派とされる財政担当のヘクトールという高官と、クレーマー商会が異様な数のポーション類を取引していると情報が入りまして。もしかすればメーレンスで我々の知らない規模の戦闘が行われ、正当な取引であったかもしれませんので、私を含めルーシェント王の配下がこちらを探っていたところです。……今の所それらしい情報もなく、おまけにハイ・ポーションと偽っていた現場を見ましたのでクロだとは思いますが」


「それはそうね、表立った大規模の戦闘もないし……」


「はい、我々はあくまで第一王子のご生誕祭が行われるまでに探りを入れるつもりでした。ただ、シェーン・メレでクレーマー男爵の手の者が、”三日後”という言葉を使っており、今回王都まで来た次第です」


「メーレンス王即位周年記念のパーティで、彼らが何か企んでいるということよね。……それで、ルカはどうみてるの?」


「あぁ。僕は元々ヴァルハイトの話から、ルーシェントで第二王子派が活動できる資金として、クレーマー男爵にこちらで高くポーション類を売ってもらうために共謀していたのかと思っていたが……。エリファスから呪術の話を聞いて、翼の会が関わっている可能性も出てきた。……正直、そこまで大それたことをするとは思えないが、ルーシェントから持ってきた献上のハイ・ポーションと、クレーマー男爵が持っている呪術のかけられたポーション類を入れ替えて……、王を、(しい)するのではないかと考えている。クレーマー男爵の動機が弱いところではあるが」


 そこまでして、金を欲しているとは到底思えない。

 まして、他国も居る場で、だ。

 仮に実行したとして、逃げ場がない。


「……! なるほど……、そういう事態も考えられるわね。……実はルーシェントの王から親書が届けられたの。ヴァルハイト君は、その事はご存知?」


「ええ、恐らくはオレの直接の配下です。彼の任務はメーレンス王へルーシェントの状況伝達と、何かあれば力添えするという内容だったかと。クレーマー男爵と結託している第二王子派も王都入りしていることが考えられるので、あえてメーレンス側では第一王子周辺にこのことは周知しないよう、申し入れております」


「ルーシェント王としては、第一王子の周辺……、ヘクトールという者が繋がっていることは把握されているのね。それでも、そのまま派遣したということは、メーレンス側で解決を望んでいるのかしら?」


「それは違うのではないですか? 元々第一王子の生誕祭に事を起こすと考えられていたのでしたら、また違った対応になったのかと」


「それは、そうね……」


「一応、陸のルートでルーシェントからメーレンスへのポーション類の納品は王の配下が押さえてあります。シェーン・メレではオレが勅命状を使って阻止しましたから、これ以上王都に集まることはないはずです。……恐らくですが、メーレンス王はオレの配下に、王都のクレーマー商会の在庫を押さえるよう伝えたのではないですか?」


「良く分かったわね?」


「事態が急に変わりましたから。シュナイダー伯爵より呪術のことを聞いたエアバルド王であれば、そのように采配するかと思いまして」


「大した洞察力だわ。ヴァルハイト君は、ルーシェントの騎士なの?」


「……ええ、まぁ。……そんな感じです♪」


「はぁ」


 いつもの調子に戻ったヴァルハイトは、相変わらず緊張感が感じられない。


「直接呪術のことを聞いた我が王にもお考えがあるとは思うけれど、ヴァルハイト君の部下だけじゃ人手が足りないわよね。兄に相談して、王国騎士団に哨戒(しょうかい)してもらいましょうか?」


 兄君のエルンスト・フォン・グランツ公爵閣下は、王国騎士団長だ。

 王宮魔術師とは、共に国を守護する象徴である。


 ただ、翼の会の構成員のほとんどは魔術師であると考えられるので、王宮魔術師にこの件を持ち込むのはやめた方がいいだろう。

 師匠の言うように、騎士団に依頼する方がよほど安全だ。


「その方がよろしいかと。……というか、オレに考えがあるのですが」


「「「?」」」





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