第二十七話 王都へ
王都へのルートを部屋で確認し宿を後にした僕たちは、昨夜ヴァルハイトの言った通り商業ギルドへと足を運んだ。
何でも今回の件でメーレンスに来る際、ルーシェント王より賜った王命と同等の効力を持つ書状を持たされたとのこと。
それを使って、一時的にクレーマー商会とルーシェントの取引を停止させたそうだ。
ヴァルハイトは騎士団長のような、高位の騎士なのだろう。
腕も確かだが、王の信頼を得ているのが何よりの証拠だ。
「お待たせ~♪」
「あぁ、だが良かったのか? 第二王子派に動きを悟られるのではないか?」
「そうかもね~。でもパーティは明日。すでに第一王子派に囲まれたヘクトールは今日にもセント・メーレンスに入っているだろうし、第二王子派の実質トップに連絡がいくには遅すぎるんじゃないかな?」
「それもそうか、仮に今回なにも起きずとも第一王子の誕生日までの牽制にはなるか」
「そーゆーことー」
「しかし、明日か。時間がないな。休憩しつつ夜通し駆けるしかあるまい」
国内を外周沿いに走る大きな街道は、シェーン・メレから次の大きな都市とを結んでおり、そちらは北にあるゾゾ共和国と王都との丁度中間の位置だ。
陸路でルーシェントからメーレンスに荷が来るとすれば、そこを通るのが一般的。
そちらには事前にルーシェント王の配下が先行しているそうなので、ポーション類の輸入もヴァルハイトが用いた権限で止めれるとのこと。
なので、僕達は街道を通らずに直接王都へ向かうことになる。
ダンジョンを突っ切らなければならず、魔物との戦闘は避けれない。
途中小さな村を挟むマイナーな街道もあるが、そちらよりも断然早く着くのだ。
「しっかしなぁ~」
「何だ?」
「クレーマー男爵だよ! 金のためだけに、そこまでするかなぁ?」
「それは……、確かに。リスクが高いな」
「なーんか、まだ裏がありそうなんだよね~」
「大方、計画が成功した際のルーシェントでの地位か、待遇の良い取引を約束されているのではないか?」
「あーーーー、有り得る」
クレーマー男爵がポーション類で儲けることを今後も想定しているのであれば、光の魔法が使える第二王子派へ取り入り、ハイ・ポーションを融通してもらうことも無い話ではない。
基本的にはメーレンスより、ハイ・ポーションの相場が若干ではあるがルーシェントは安いのだ。
「まぁ、魔術師すら他の貴族から金の力で搾取する人物だ。何よりも、金儲けが大事なんじゃないか?」
「やだやだー、お金も大事だけどやり方がなぁ」
「少なくとも、他国の事情に首を突っ込んでいい理由にはならないな」
「なんにしても、明日だけは乗り越えないとだなー」
「クレーマー男爵の方は師匠が警戒しているとは思うが、ヘクトールという高官の方はどうだ? 奴らの狙いが本当にポーションをすり替えるだけなのかは分からないぞ」
「んー、一応オレ直属の配下がメーレンス王に信書を持って、昨日くらいには王都に潜入しているはずだから。王都側でも表立っては無理だけど、警戒はしてる……と思う」
「そうなのか? ならいいが……」
「まぁまぁ、とにかく準備して王都へゴー♪」
「またお前は……」
こんなに切迫している状況でも、相変わらず態度が変わらないヴァルハイトはさすがだ。
肝が据わっているのか、何なのか。
「ダンジョンは突っ切るだけだし、ルカちゃんの持ってるポーションと食糧があれば、何とかなるよね?」
「そうだな、お金に余裕がある訳でもないし別段用意する物はないな」
「検問は大丈夫かなぁ?」
「平気だろう。昨日の監視者は全て師匠の元へ送ったからな。少なくとも、僕らを怪しんでいたところで何も指示は出ていないはず」
「じゃ、行こう♪」
ヴァルハイトがずっと食べたいと言っていた海の幸を、焼いて提供している屋台で軽く食事をし、僕らはシェーン・メレから王都へ向けて旅立った。
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