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第九話 幻惑の森 その一

「これは?」


 時間もなかったため、無造作ではあるが装備品としての加工もせず風の魔石を渡した。


「この間かけたような、体の動きに応じて風も流れるように魔法を付与した。風の魔石だから僕が重ね掛けせずとも長い時間もつだろう。失くすなよ」

「えーーーー!? それって、魔道具だしなんなら高価なんじゃ……」

「この間の戦利品だ、お前にも受け取る資格がある」

「る、ルカちゃん……!」


 またもやうるうると瞳を潤ませる。


 食糧を買い込む道中、パパッと僕の風魔法を付与した。

 本来はこれらを装飾品として、ピアスやブレスレットとして加工したい所ではあったが。

 何分時間がなかった。


 しかし、今回ダンジョンに行くのであれば効果の程は確かめられる。


 この間とは違い、僕とヴァルハイトにそれぞれ動きを軽くする魔法を掛けるのではなく。

 その魔法を魔石に持たせる。というイメージだ。

 効果が発揮される間の魔力は、魔石が補う。

 いわゆる省エネだ。


「大事に大事に、ポッケに入れておきます!」


 これから危険であろうダンジョンに向かうというのに、ヴァルハイトは変わらず元気だ。

 肝が据わっている。


「それで、情報は?」


 朝で突発的ということもあり、手配出来るような移動手段がなかった。

 ちょうど風の魔石もある。


 普通に走るよりも速度が出るので、そのまま走って移動している。

 一番近いダンジョンで助かった。


「えっとねー、入り口からは一本道。途中で道が分かれるんだけど、片方は行き止まり。で、片方は奥に行くらしい。道中には先達の冒険者達が木々に目印を付けてくれているんだけど──。行き止まりの方へ行って道を逸れると、誰も行かないから目印もなくなるらしいよ」

「セネル達はそっちへ向かったのか……?」

「知り合い?」

「え? あ、あぁ。まぁ、同業者として顔を知っている程度だ」

「なるほどー」

「特徴的な魔物はいるか?」


 通常走るよりも、周りの景色はすぐ様過ぎ去ってしまう。

 順調に風の魔石の効力を感じている。


「注意すべきは、動きも早くて嗅覚も鋭い、ヘレウルフだって。火属性に耐性があるから、水魔法が弱点なんだって~」

「水魔法か……」


 リーベは回復術師(ヒーラー)

 水と土の先天属性を持つ二属性(ダブル)の魔術師だ。


 熟練の魔術師が扱える上位の回復魔法、光魔法は修めていないようではあったが、水の魔法は申し分なく使えたはずだ。

 だが、仮に前衛が二人のパーティーで回復ばかり行っていたとしたら……。


 魔力が枯渇するのは時間の問題だ。

 セネルも、ヘレウルフの特性を理解して、きちんと指示出来ているとは限らない。


「ヴァルハイト。ヘレウルフとやらが出てきたら敵の注意を引いてくれ。素早い相手であれば、僕の魔法を主力にした方が良い」

「りょーかい」

「あれか……?」


 しばらく街道を逸れて走っていると、鬱蒼とした森が見えてきた。

 森の入り口のような場所には、『この先幻惑の森。ギルドの許可無く立ち入り禁止!』と立札が掲げられている。


「おお、この前より暗い森だな」

「?」

「何でもなーい」


 緊張感の欠片もない。


「ヴァルハイト、夜目は効くか? この程度なら灯りなしの方が余計な敵に見付からなくて済むが」

「あーー、そうだな。うん、これくらいならイケる」

「よし、行くか」


 入り口の立札を横目に、森へと足を踏み入れた。


 静かだ。

 少しくらい動物の鳴き声がしても良いはずだが、妙に静かだ。


「昨日冒険者が立ち入ってるんだろうから、戦闘後って感じか?」


 ヴァルハイトの言うように、昨日から戦闘を行っているのであれば動物達も避難しているのであろう。

 魔物も、今のところ気配は感じられない。


「入り口付近は掃討しているようだな」

「だね~~、逆に言えば全部と戦ってたらキリなさそう」

「そうだな……」


 セネルがリーべのためにマジック・ポーションを確保していればいいのだが。

 だが、彼の金遣いの荒さは旅の資金をすぐに食いつぶす。


 良く効果の分からん装飾品の施された装備や、髪や肌のために高価なソープやハーブウォーターを使っているらしい。道中豪語していた。


 辺りを警戒しながら歩を進めるが、拍子抜けするほど何もなかった。


「お……」


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