第六話【別視点】剣士の見立て
いやはや、人生なにがどう転ぶのか分かりませんなぁ。
魔術師と今後組むのに不安を感じていた矢先、相性がいい魔術師と組むことになるとは。
ギルドで騒ぎのあった時、もともとは静観を決め込んでいた。
だが自国でもそうお目にかからない双黒の魔術師に、少し興味が湧いたのだ。
口調は丁寧で物静か。だが、どこか自信の感じさせる佇まい。
見た目はどちらかというと可愛い系なのに、芯のある態度がまた気になった。
対するこの街を根城とした冒険者はプライドが高いようで、自分に従わないルカを目の敵にしているようだった。
『──まぁまぁ、待ちなって』
気付けば、間に割って入っていた。
ルカが昼食を食べに出ている間、オレは調べていた魔物の情報を元にどう戦うか考えていた。
自分を信頼しているのであれば、手の内を全て見せてくれるのであろう。
だが、あの感じだと他者をそう簡単には信用しない気がした。
「んーー。やっぱ、オレがやるのが一番だよなぁ」
今回の依頼での肝、羽根を綺麗に持ち帰る。
……というのは、通常の討伐方法では難しい。
ただの討伐であれば、アストと同様──あれは上手くいかなかった例だが、自分が前衛にて囮を務め、ルカにはひたすら攻撃魔法に集中してもらうのが一番。
だが、それだと羽根に傷なり汚れがついてしまう。
ルカの魔法が未知数な内は、ルカに敵の注意を引いてもらい、自分の焔の剣で仕留めるのが理想的だ。
「まぁ、教えてくれればそれでもいいしな」
もしかすれば、手の内を全て明かしてくれるかもしれない。
それならそれで、自分が前衛を務めるだけだ。
◇
分かってはいたが、やはり単属性という事にしたいらしい。
通常、ソロの冒険者ならば魔石を用いて一つや二つ、他の属性にも対処出来るようにしている。
ルカを見る限り、そういった物は見当たらなかった。
もしくは収納魔法に収めているのか。
なんにせよ、風魔法はグリュンバードには適さない。
羽根も傷付く恐れがある。
というわけで、当初の通りオレが仕留めるという話になった。
事前に作戦を話せば、ルカはどこか感心したように了承した。
ルカの魔物への知識にも驚いたな。
これがアストだったら、魔物の特性も理解せず、なんで魔術師に前衛を任せるのかと怒り狂うところだったはずだ。
『やり易そう』
完全な実力を知らない内から、そう印象付けられた。
結果としてルカは、風の付与魔法でオレと自身を強化、且つ囮も十分過ぎるほど勤め上げた。
並みの魔術師ではない。
他人に魔法を掛けるだけでも魔力は消費するし、ルカ自身にも施しながら敵と対峙していたのだ。
器用な魔術師だなと、素直に感心した。
おまけに、ルカ。
これが、偶然にしては出来過ぎではないか?
『良かったな。……じゃあ僕は行くぞ』
『えええ!? そんな、オレを見捨てるの!?』
この先この選択がどうオレの人生を導くかは分からない。
だが、今はこの奇跡とも言える出逢いを大事にしたかった。