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【前編】ハーレムのあれからと侍女に見合い話?

【1/4、修正をしましたが物語には関係のないところです】

 

 お久しぶりのハーレム部屋。

 少しだけ変わったところがございます。


 

 王太子はギリギリまだ王太子。

 団長息子もギリギリ弟に勝っている。

 宰相息子はあまり問題はなさそう。

 大司教息子は女癖の悪い父親よりはマシではないかと見直されている。


 

 何も変わってはいないようですが、彼らの心持ちが変わりました。

 メンバーたちは、己れの仕事の失敗もローズちゃんに敵意を向けられる原因だと悟ったらしく、最近は仕事にも精を出すようになり、以前ほど風当たりは強くなくなりました。


 それに常に5人が揃うことがなくなり、今は曜日の輪番制です。


 月曜日は王太子と大司教息子

 火曜日は宰相息子と団長息子

 水曜日は休みだけど王太子は可

 木曜日は団長息子と大司教息子

 金曜日は王太子と宰相息子

 土曜日は何人でも

 日曜日は休みだけど王太子は可

 

 という具合に。


 一つだけ気になるのが王太子だけいつでも参加していいというルール。あいかわらずの傍若無人ぶり、パワハラ王子です。


 さすがにローズちゃんは正妻にはなれないので、ハーレムもそろそろ解体されるかもしれません。


 彼女を引き取るのは団長息子が良いと私は思いますが、なにげに宰相息子がローズちゃんに本気なので、恋の行く末も気になるところです……

 


 

 

 ああ、1人足りないのに気がつかれましたか?

 

 魔術師様ですよね。彼なら私の横で寝ていますよ。


 いや、冗談じゃなくてね、待機部屋のベッドで寝ています。最近はいつもそう。

 実家は居心地が悪いとかなんとか言って、何故かいつもここに来て本を読んだり何やら魔法の研究をしたり。そして眠くなったと横になってそのまま朝まで寝ている。

  

 曜日を決めるときも自分は土曜だけでいいからと言っておきながら、最初にハーレムに挨拶だけしてすぐここに来る。


 実質ハーレムから抜けているような状態。

 

 最初はもしかしたら、と思いましたよ? だから様子を見ていたけど、そんな空気になったこともないし、本当に寝泊まりするのに都合が良いからという感じ。



 ――人の気も知らないで。

 

 

 私は魔術師様の寝顔を眺めながらため息をつく。長い髪が顔にかかり半分しか顔が見えないので、そっと髪に触れ顔を見えるようにする。


 ――たったこれだけでこんなにも嬉しいなんて、どこの乙女よ。今だって普通なら女性にベッドを使わせない? 気が利かなすぎ。


 私は鈍感男に惚れる自分に呆れながらも長椅子に横たわる。


 ――同じ部屋で寝ているだけで嬉しいなんて重症だわ


 

 

 でもこんな日々ももうすぐ終わり。


 

 私は引き出しに入っているものを思い出し、せっかく良い気分だったのに、と深く息を吐く。


 引き出しには実家からの手紙が入っている。私は貴族ではないが、豪商の家に生まれた。四女なので今までは好き勝手に生きてこれたが、もう年貢の納め時らしい。

   

 

 手紙には父親の恩人だかなんだかの息子が私を見染めたから見合いしろとか書かれていた。


 貴族……しかも恩人からの願いを断ることができないことぐらい私にもわかる。


 

 ――大丈夫。諦められる。彼には他に愛する人がいるのだから。



 先ほど触れた彼の髪の感触を思い出し、ズキリと胸が痛んだが、彼の想い人を思い浮かべれば気持ちに蓋ができる気もする。


 

 ――私とあの子じゃ全然違う。


 

 

 

 


 * * * *


「そうか、君が僕の奥さんになる子か」

 

 私はいま、待機部屋に突然乱入してきた男に壁ドンをされている。顔立ちは悪くはない。だが漂う空気が受けつけない。


 どうしよう未来の夫は生理的に無理な人だ――

 

「はい」

「なるほど、噂どおりこれくらいでは動じない女だな」

「明日会う約束のはずですが?」

「わかってるよ。今日はこっちに用事があったからついでに寄ってみただけさ」

「ああ、侍女のエリーゼに会いにこられたのですね」


 この男、女遊びが激しいことで有名だ。泣かせた女は数知れず、飽きたらポイの最低男。


「知っていてその態度。いいね、理想だ」

「理想?」

「僕の女遊びは治らないことくらい自分でもわかっている。だから正妻はそれを許す者を探していたのだ」

「だから私ですか」

「贅沢な暮らしは約束できるのだから、お互い損はないだろう」


 ――マジクソ野郎だわ。


「跡継ぎの問題はどうなさるのですか」


 その質問でクソ野郎の視線が私の胸元にいく。


 ――本当にいやだ、この人っ!


「君はそこまで見目は悪くないから、たまに相手にしてやってもいい」


 殴ってやろうかと拳に力をこめていたが、その言葉で怒りを通り越して急激に冷めた。


 というより考えることを放棄した。

 

 もうあきらめるしかないと悟ったから。彼と婚姻すれば、こんなことで怒るのが馬鹿らしくなるほどの扱いを受けるだろうことが明白だったから。



 銀色に近いマッシュルームカットの顔が、近づいてきた。


 ああ、髪の色はあの人に似ている――


 そんなことを考えていると


「邪魔だったか」

 

 今、まさに考えていた男の声が背後からした。

 

「ああ、邪魔だ」

 クソ野郎が壁に手をついていない方の手で彼を追い払う仕種をする。


 ――邪魔はお前だよ!


 私は魔術師様に助けを求めるように視線を送る。

 

 彼は壁に追い込まれた私とクソ野郎を一瞥し、いつもどおりの無表情で「また来る」と一言残し扉を閉めた。


「……」

「……」


「萎えた」

 男がようやく壁から手を離した。


「ではまた明日」

 私は扉を開け彼に部屋からの退出を促す。彼も素直に従い、すれ違い間際に私の耳元に顔を寄せ、「妻の男遊びは許さないよ」と低い声で言葉を残し出て行った。


 ――最っっ低なクソ野郎!! 


 私はドアを背にして、そのままズルズルと座りこむ。

  

 違う……最低なのは魔術師様のあの態度。全然脈なしじゃん……もうどうでもいいわ、何もかも。




後編に続きます

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