揚州混乱
誤字してしまい申し訳ありません。
修正いたしました
劉備が廬江郡に侵攻した報は当然孫権の耳にも入った。
「あの恩知らずっ。わたしが弱っている所に攻め込むとはっ」
報告を聞くなり、孫権は席を立ちあがり激しい怒りに身体を震わせていた。
「太守の孫邵様は援軍を求めております。殿、早く援軍を」
顔を真っ赤にして怒っている孫権に魯粛は冷静に告げた。
「その通りです。殿、直ぐに援軍を送るべきです」
「分かっているっ。程普、お主が兵を率いて援軍に向えっ」
「承知しました」
程普が一礼し準備の為にその場を離れていくと、魯粛が話しかけて来た。
「殿、会稽郡でも山越が暴れているという報告が来ております。どうしますか？」
「ええいっ、蛮族めっ。蔣欽は何か言っていたか？」
「援軍は不要との事です。山越程度であれば、蔣欽殿だけで十分だと思います」
「そうか。一応援軍を送る準備をしておくか。誰を送るのが良いと思う？」
「そうですな。・・・・・・賀斉を送るのが良いと思います。あの者は会稽郡出身ですので、土地鑑があります。蔣欽殿と協力すれば間違いなく山越を鎮圧できるでしょう」
「良し。賀斉に何時でも出陣できる様に伝えよ」
「承知しました」
孫権の命を聞き、魯粛は一礼し命令を伝えに向った。
同じ頃。
呉郡富春県。
その県には孫権から独立した孫暠が本拠地にしていた。
「ほぅ、劉備が廬江郡に侵攻したのか」
間者から届けられた報告書を読んだ孫暠は意外そうな顔をしていた。
「曹丞相と孫権との戦の際は全く動かなかったから、勝った方に降伏するのかと思っていたのだがな」
予想と違ったので、孫暠は暫し考えた。
「・・・・・・だが、これは好機だ。領地を広げる機会と言えるな」
孫暠はニヤリと笑った。
そして、何処に攻め込むか考えた。
「丹陽郡を攻め込むのが良いかも知れんが、劉備は強かな男と聞く。守りを固めているかも知れん。丹陽郡を攻めれば、劉備が戻ってくるかもしれん。孫権の手助けなどしなくても良い。であれば、狙うは」
孫暠は壁に掛かっている揚州の地図を見た。
その目に映ったのは会稽郡であった。
「此処だな。山越が居るから捕虜にして兵に組み込めば兵力の増強になるな」
孫暠が会稽郡を攻め込む事を決めると、直ぐに兵を集めた。
数日後。
孫暠は一万の兵を率いて、会稽郡に侵攻した。
孫暠が会稽郡に侵攻という報は孫権に届けられた。
「あやつめ。良い度胸だ。賀斉を呼べっ」
「はっ」
孫権に命じられ、魯粛は一礼しその場を離れた。
程なく、魯粛は一人の男性を連れて来た。
年齢は三十代ぐらいであった。
横幅を唇の幅と同じ長さに整えた口髭を生やしていた。
感じの良い顔つきをしており、身長も高いので見栄えしていた。
身に着けている甲冑も、上質で豪華な造りをしていた。
この男性は賀斉公苗と言い、孫策の代から仕えている家臣であった。
「殿。賀斉公苗、お呼びにより参りましたっ」
「よく来た。孫暠が会稽郡に侵攻したという事は聞いているか？」
「はっ。既に麾下の兵の準備は完了しております。ご命令を頂ければ、何時でも出陣できますっ」
「良しっ。直ぐに出陣せよ。孫暠の生死は問わん。わたしの元に連れてこい！」
「承知しましたっ」
賀斉は一礼しその場を離れた。
そして、兵が待っている所に向った。
待っている兵達の武具は、賀斉に負けないくらいに上質で豪奢に飾り付けていた。
「者共っ、これより会稽郡に侵攻した孫暠を打ち倒すぞ！ 武功を立てて、天下に孫家に賀斉軍ありと知らしめるのだ！」
「「「おおおおおおおっっっ」」」
賀斉の檄に兵達は歓声をあげて応えた。
