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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第二十章

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飛び火した

 宛県を出立した曹昂軍は、数日程北上すると許昌に辿り着いた。

 軍勢は城外に布陣させ、曹昂は護衛の孫礼と趙雲と数名の兵と共に城内に入った。

 城内に入るとそのまま外廷に向い、帰還してきた事を荀彧に報告した。

 その際に、曹操がまだ許昌に居ると知ったので、陳留に帰還する前に挨拶してから帰る事にした。

 丞相府か屋敷に居ると聞いたので、まずは丞相府に向った。


 丞相府の前に着くと、護衛の兵に曹操が居るかどうか訊ねるといると言うので、そのまま会おうとしたのだが、兵が止めた。

「先ほど、奥方様が参りまして話をしている様です」

「義母上が? ふむ」

 鄴に居るはずの丁薔が居る事に、曹昂は何事かと思ったが直ぐに分かった。

(そう言えば、父上が二喬を狙っている事を手紙で伝えたな。その事で、抗議しに来たのかな)

 鄴から許昌にまで来て文句を言うとは、ご苦労な事だなと思いつつも曹昂はとりあえず部屋に案内してもらう事にした。

 兵の案内で廊下を歩いていると、段々と声が聞こえて来た。

 その声は案内されている部屋から聞こえていると直ぐに分かった。

 やがて、部屋の前に着くと声がハッキリと聞こえた。

「貴方という人は、どうしてっ」

「ま、待て。儂の話を聞け」

 怒声をあげる丁薔を曹操は懸命に宥めていた。

 それを聞いて、曹昂は溜息を吐いた後、兵に下がる様に命じた。

 兵が一礼し離れていくのを見送ると、身嗜みを整えた。

 それが終わると、部屋に入っていく。

「父上。母上、曹子脩ただいま戻りました」

「お、おお、戻ったか。子脩」

 曹操が曹昂を見るなり、良い所に来たとばかりに破顔した。

「・・・・・無事に戻ってきて、母は嬉しく思います」

「ありがとうございます。義母上」

 曹昂を見るなり、丁薔は息を吐いて気を静めだした。

「先ほどから、何か話していた様ですが、何を話していたのですか?」

「ええ、旦那様がとんでもない事を言うので、少々話に」

「話にですか。それはいったい、どんな話ですか?」

 曹昂が尋ねると、丁薔がキッと曹操を睨んだ。

「旦那様が二喬にご執心という事は知っているでしょう」

「ええ、何せ熊に絵に描いてもらう程ですから」

「その話、初耳なのだけど、本当かしら?」

 曹昂が二喬が如何に執心なのか言うと、丁薔の目に力が籠った。

(えっ? 知らなかったの?)

 てっきり知っていると思いながら、曹昂は曹操に目を向けた。

 すると、曹操は言えるわけないだろうが、馬鹿者と顔に書いてあった。

 まずいと思い、話を誤魔化す事にした。

「それよりも、二喬がどうかしたのですか?」

「・・・妹の小喬が周瑜との間に子が出来たそうよ」

「なんとっ、では許昌に来るのは当分無理ですね」

「そうよ。そして、その話を聞いた旦那様が子が生まれた後、子供と共に自分の元に引き取ろうと言い出したのよ」

「・・・・・・え、えええ」

 子供が出来た小喬を妾にすると聞いて、曹昂の耳目が驚いていた。

「父上。本当ですか?」

「い、いや、人質として送られるのだ。子と別れさせるのは酷と思ったから、一緒に許昌に送るのはどうだろうかと言っただけだぞ」

「と言って、面倒を見る者が居ないだろうから、儂が引き取ろうというつもりでしょうっ」

「そ、そんなつもりはないぞ。流石に」

 丁薔の指摘に曹操は目を左右に動かしながら答えた。

 それを見て、曹昂と丁薔はそう言うつもりだと察した。

(はぁ、この父は狙った女性に対して凄く執着する所があるからな。・・・・・うん、でも待てよ)

 小喬と子を引き取ると言うのを聞いて、曹昂はある考えが頭に思い浮かんだ。

「そうですか。・・・・・・ちなみに、大喬の方はどうするのですか。そちらも子がおりますけど」

「ああ、そっちは考えていなかったな」

「・・・・・・小喬と子も引き取るのでしたら、大喬とその子も引き取りましょう。大喬の子は孫策の息子ですから、先代の主君の子供という地位を使い、孫家の跡目相続に口出す事が出来ますから」

「ほぅ、確かにそれは使えるな」

「でしょう。良い策」

「何処が良い策ですか⁉ 幼い子供を謀略に使うなど恥を知りなさい!」

 曹昂の案を聞いた丁薔が怒声をあげた。

 あまりの怒りに、背後に鬼が見えた。

「し、しかし、これも天下安寧の為に必要な事ですから」

「天下安寧の為に、そのような恥知らずな事をしては、天下の笑い者になりますっ。わたしは、貴方をそのような恥知らずに育てた覚えはありませんよ‼」

「もっ、申し訳ありませんっ」

 これはまずいと思った曹昂は平謝りした。

「今日という今日は許しませんっ。その性根を叩き直してあげますっ」

 丁薔が説教を始めだした。

 曹操はその隙にとばかりに、音を立てずに部屋を出て行こうとした。

「旦那様‼」

 丁薔の怒声を聞いて、曹操は身体を震わせて足を止めてしまった。

「まだ、話は終わっていませんっ。子脩の後に、ゆっっっくりと話をしましょう!」

「・・・・・・はい」

 曹操は返事をした後、その場に留まった。

 曹昂の説教が終わると、曹操との話が始まった。

 長い長い話し合いの末に、二喬は子と共に許昌に送られるという事に決まった。

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― 新着の感想 ―
曹操→平常運転だな、誰も気にしない。 丁夫人→いつもの光景 曹昂→とばっちりを喰らう。
もはやこの光景はこの作品におけるひとつの様式美になりつつありますね(笑)
そもそも孫家はそこまで引っ掻き回す必要がある程勢力を保てるのかな?
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