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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第三章

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董卓追撃

 滎陽城を進発した曹操達は全速力で駆け出した。

 狙うは董卓の首又は献帝陛下の身柄の確保。

 それ以外には構わぬとばかりに駆けている。

 そのお陰か、又は董卓達が休憩を取っていたからか洛陽落ちした者達の背が見える所まで来た。

「あれは洛陽から無理矢理連れ込まれた民達だな」

「その様です。孟徳殿。このまま突撃すれば民達に被害が出ます。どうしますか?」

 鮑忠が曹操にそう訊ねると、曹操は顔色を変えないで。

「構わん。狙うは董卓の首か献帝陛下の身柄の確保だ。民には申し訳ないが、このまま攻撃をさせてもらおう」

「それはっ」

「『愛民煩わされるべきなり』だ。今は我らの大義を果たすのが先だ」

 孫子の一節を言う曹操。

 この意味は民や部下などを大事にしすぎて犠牲を払う事が出来なくなるという意味だ。

 他に『必死は殺され』『必生は虜にされ』『忿速は侮られ』『廉白は辱められ』とある。

 将が敗北する時はこの五つの過ちで起こるので将の五危と言う。

 曹操の言葉を聞いて鮑忠も口を噤んだ。

 他の者を見ると何も言わないので、曹操は腰に佩いている剣を抜いて天へと掲げた。

「狙うは董卓の首か献帝陛下の身柄のみ。邪魔する者は蹴散らせ‼」

 曹操が剣を振り下ろすと同時に騎兵達が喊声と共に民へと突撃を開始した。

 兵達の喊声を聞いて、民達は悲鳴を上げた。

 野盗だと思い民達は蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。

 董卓軍の兵も迎撃に出た。

 この時、曹操軍は騎兵だけだがその数は二万。対する董卓軍は騎兵、歩兵合わせても四万であった。兵の殆どを長安に送ったのもあるが、先の戦いで失った為にこれだけの数になったのだ。

 その上、董卓軍は此処に来るまで休む間もなく駆けていたので将兵共に疲労困憊であった。

 数ほどの働きが出来ないので曹操軍は構わず突撃した。

 民達も駆ける騎兵の蹄の音と兵が上げる喊声で逃げ惑っていた。

 運が悪い者は馬に蹴られたり流れ矢が当たり死ぬ者まで居た。

 そんな怒涛の勢いの曹操軍に対するのは後陣の徐栄と華雄の二人であった。

「防げ、防げっ」

「我等の方が数が多い。押し包んで返り討ちにしろっ」

 華雄達は声を枯らさんばかりに叫んで指揮を取る。

 華雄も隻腕になったというのに、何の問題なく得物の斧槍を振るい突撃してくる曹操軍の兵を倒していく。

 とは言え、華雄達が防いでいるのは曹操軍の一部であった。

 兵達も指揮に従い懸命に防いでいる。数は多いが疲労の極致にある董卓軍に対するは、数は少ないが十分に休息を取っている曹操軍。

 疲労が少ない曹操軍の方が勢いがあった。その勢いに押されて董卓軍の兵は倒れていった。

 華雄達を相手にしていない他の曹操軍はそのまま中陣へと駆け込んだ。

 その中には曹操も混じっていた。

 董卓を討てるかも知れないと思い自分も混じったのだ。

 今回の攻撃に参加している将で董卓の顔を知ってるのは曹操だけなので混じったともいえる。

 中陣に入ると兵達が襲い掛かって来るが、直ぐに蹴散らせた。

「董卓は何処だ⁈」

「董卓を探せ‼」

 曹操軍の兵達は中陣を車の中に入り探し回った。

 しかし、車の中はどれだけ探しても兵糧財宝や婦女子などしか載っていなかった。

 曹操軍が中陣で董卓を探し回っている頃、その董卓は李儒と数十名の部下と献帝と共に馬に乗ってさっさと長安に向かっていた。

 部下や連れて来た女官、民を捨てて逃げたのだ。

 財宝だけは惜しかったのか、懐や手に持っている袋の中にはパンパンに膨れる程に財宝が入っていた。

 そんな事を知らない曹操達は中陣を探し回った。

 曹操は未だに董卓が見つからない事に苛立っていた。

(もう、長安に逃げたか?)

 そうなれば其処で追撃は終わりだ。今の所、兵糧と財宝はそれなりに奪い取っているのでこれだけでも十分に戦果と言えるだろう。

 此処で追撃しても董卓を討てるかどうか分からなかった。

 さて、どうするかと考えていると。

「申し上げます。前方より、騎兵がこちらに駆けて参りました!」

「数は?」

「五百騎ほど。旗は赤地の「呂」の旗です」

「呂布か。もう来たかっ」

 董卓の命令で盗掘した墓からの財宝を長安に運んだ呂布は董卓の伝令の話を聞くなり、自分の直属の騎兵部隊五百を率いて董卓救援に向かった。

 董卓には途中で出会ったので、目的を曹操軍の迎撃に変えて曹操軍へと駆け出した。

 こんなに人と車が沢山ある所で戦うのは不利だと曹操は判断した。

「車を出来るだけ奪い後退するぞ‼」

 目的を変え戦利品を奪う事にした曹操。

 しかし、車を動かす馬が戦闘の音と声に怯えて言う事を聞かなかった。

 惜しいと思うが捨てるかと思っていると。

「曹操殿。拙者めにお任せを」

 典韋が胸を叩くなり前方へと駆け出した。

 何をするつもりだ?と思いながら曹操は典韋を見た。

 典韋はある程度、進むと薙刀の刃を地面につき刺して左手に持っている盾の裏側に取り付けている匕首を一本取った。

 そうしている間にも呂布の騎馬隊は曹操達に向かって来た。

 その先頭の騎馬武者が典韋から数十歩という所まで来ると、典韋は持っている匕首を投げた。

 投げられた匕首は狙い違わず騎馬武者の首に当たる。武者は短い悲鳴をあげて落馬した。

 典韋は続けて匕首を手に取り、ある程度に近付く敵騎兵に向かって投げつける。

 投げられた匕首は狙い違わず全て騎兵に当たっていく。

 匕首を十本ほど投げた頃には呂布が率いる騎馬隊は怖気づきだした。

 それを見た典韋は地面に刺している薙刀を抜いて騎馬隊に突撃した。

「我こそは典韋なりっ。この首を獲れるのならば掛かって来い‼」

 典韋はそう叫ぶなり薙刀を振るった。

 一振りで敵騎兵が二~三人が薙ぎ払われた。

「「「ひいいいっ」」」

 味方の兵がまるで草を薙ぎ払うように斬られるのを見て騎兵達は悲鳴を上げた。

 典韋はそれに奢る事なく薙刀を振るい続けて敵兵を斬り倒していく。

 味方の騎兵がやられているのを見た呂布は愛馬赤兎と共に駆け出した。

「腕に自信があるようだな。相手をしてもらおうかっ」

「おうっ、望む所だ‼」

 典韋は向かって来るのが呂布だと知らなかったが、向かって来る以上敵である事に変わりないと思い呂布の方へ馬を寄せた。

 そして、呂布の方天画戟と典韋の薙刀がぶつかった。

 白光閃々互いの刃が鍔迫り合った。

 十合、二十合と刃を交えて二人は疲れる様子も無く戦い続けた。

 呂布は内心で「敵にこの様な豪傑が居たのかっ」と驚嘆し、典韋は「もしや、これが呂布か?」と自分と此処まで戦い続けるのを見てその正体に感づき始めた。

 馬の方も呂布の赤兎は勿論だが、典韋が乗っている馬も中々の名馬で未だに疲れる様子もなかった。

 二人は負けてなるものかと思い喚声を上げて刃を交えた。

 

 呂布と典韋が戦う姿を見て両軍の兵は思わず戦うのを忘れて見惚れていた。

 たった一人で呂布とここまで鍔迫り合う者など見た事がなかったからだ。

「うぅむ。まさか、あの呂布と互角に戦える勇者が居るとは……」

 中でも曹操は感歎の声を漏らしていた。

 そして、同時に典韋の事が欲しいと思った。

 あの劉備三兄弟も三人で呂布を撃退したが、この典韋は一人で呂布と互角に戦っているのだ。

 これ程の人材を欲しくないと思う者など居なかった。

 曹操はそう思ったが、直ぐに気を取り戻した。

「今の内に車を連れて下がるぞっ」

 曹操の声を聞いて兵達は慌てて御者となって車を操り後方へ下がっていった。

 

 呂布の部隊に関しては典韋に任せた曹操は、馬車と連れて来た兵と共に後方に下がっていると。

「うぐっ」

 何処からか放たれた矢が右肩に刺さった。

 その痛みで思わず落馬した曹操。

「ははは、曹操に当たったぞ。曹操に当たったぞっ」

 徐栄は弓を持ちながら味方に喧伝する様に叫んだ。

 後陣で華雄と共に曹操軍を防いでいたが、その曹操軍の勢いに押され戦線の維持が出来なくなった。

 その際、華雄とはぐれてしまった。仕方が無く中陣の味方と合流しようとしたら、徐栄は自分達に向かって来る騎馬の一団の中に曹操が居るのを見て矢を放った。

 狙いは少しずれて右肩に当たったが曹操が落馬したのを見て喜びの声を上げた。

「今が好機。皆の者。敵の反乱軍の首魁である曹操の首を獲れっ」

 自分の周りにいる兵達にそう命じる徐栄。

 その命令に従い疲れている中でも兵達は曹操に殺到する。

「殿を守れ‼」

 曹操と共に駆けた兵達は慌てて曹操に近付くが敵兵の勢いに押された。

 このままでは曹操が討たれるのではと思われたが。其処に曹洪がやって来て曹操を拾った。

「孟徳。無事か?」

「むっ、曹洪か。助かったぞ」

 落馬した痛みで身体が動けなかったが曹洪に助けられて安堵する曹操。

「者共。このまま突っ走れ‼」

 曹洪がそう命ずると兵達も向かって来る董卓軍を倒す事だけに専念する事が出来た。

 曹操軍の兵は敵兵を倒して進んで行くと馬車もその後に続いた。

「ぬぅ、悪運が強い奴めっ」

 徐栄は歯噛みしていると其処に夏候惇が駆けて来た。

「徐栄。その首貰った!」

「舐めるな‼」

 夏候惇の槍と徐栄の三尖刀の刃が交わった。

 十合ほど刃を交えると、夏候惇が刺し殺した。

「敵将、徐栄。討ち取ったり‼」

 夏候惇が堂々と名乗ると董卓軍の兵達は怯えて逃げ出した。

 夏候惇も追撃を命じる事無く、そのまま曹操と共に後退した。

 典韋も味方が後方に下がったのを見て呂布との勝負を打ち捨てた。

「拙者の名は典韋。お主、名は?」

「呂布だ。典韋とやら、この決着はいずれつけようぞっ」

「おうっ」

 それだけ言って典韋は後退していった。

 呂布は華雄と合流し曹操達が略奪しそこなった財宝やらを積んだ馬車とそこら辺にいる民を連れて長安へと向かった。

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