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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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勝敗が決した以上

 暫くすると、兵が縄を打たれた黄蓋を連れて来た。

 傷が手当された跡があり、水の中に落ちた為着ている服や髪が濡れていた。

 加えて、厠の中に居たからか少々鼻に着く匂いがしていた。

「・・・・・・久しいな。黄蓋」

 その場にいる皆が少し顔を顰めている中、曹操は平然としながら声を掛けた。

「・・・曹操殿もご壮健そうで何よりです」

 黄蓋が返事をすると、田豊を含めた周りの者達は眉を顰めた。

 曹操は官職に就いているが、黄蓋は正式に朝廷から官職に就けられていなかった。

 だから、この場合礼儀上丞相と言うのが正しかった。

 丞相と言わず、曹操殿と言うのは礼儀に無視しているから、皆眉を顰めるのであった。

「ふっ、この状況で儂をそう言うとは、豪胆な事よ。勝敗は分かっているのか?」

「無論。我が軍の負けだ。ならば、この首を取るがよい」

 黄蓋は頭を垂れて目を瞑った。

「勝敗は兵家の常だ。だが、戦に破られる度に将が首を切れば、この世に有能な者は居なくなる。お主は此処で殺すにはあまりに惜しい。どうだ? 我が軍門に下らぬか? その才に見合った職を就けてやるぞ」

 曹操は優しい声で、説得を始めた。

 話を聞き終えた黄蓋は顔を上げて目を開けなり、曹操を見た。

「・・・ふぅ、儂は大殿である孫堅様の志に惹かれてお仕えした。孫堅殿から受けた恩義は泰山よりも重いのだ。例え、そちらから大恩を与えられようとも、儂は大殿に対しては不義理を働く事はせん」

「惜しい。お主は此処で殺すのは実に惜しい人材だ。孫権も最早戦う余力など無い。主君よりも先に寝返ると考えるのはどうだ?」

「その様な甘言に従う気持ちはない。さぁ、この首を取るがよい」

 曹操は説得を続けるが、黄蓋は頑として聞かなかった。

「どうしても応じないというのか?」

「最初からそう申している」

 黄蓋が説得に応じないのを見て、曹操は説得を止める事にした。

「惜しい事よ。仕方がないか。だが、その前に一つ聞きたい」

「何か?」

「陶謙の墓が何処にあるのか知っていると聞いているが、何処にあるのだ?」

「それは」

 曹操の問いに、黄蓋はすんなりと答えた。

「そうか。それだけ聞ければ十分よ。さらばだ」

「持てる才を全てを使い、戦に挑み負けたのだ。此処で首を斬られる事に悔いは無い」

 曹操が手を振ると、兵は黄蓋を立たせて連れて行った。

 程なく、黄蓋は刑場の露と消えた。


 同じ頃。


 夏口へと逃げている周瑜軍は、蔡瑁の追撃を辛くも逃れる事が出来ていた。

 船を陸地に着けて、兵の治療や船の補修を行っていた。

 そして、陸地で陣を張り、天幕を作りその内の一つで軍議を開いていた。

「船も多く失い、兵も多くが討たれるか捕縛されました」

「生き残っている者達も、負傷者が多いです。また戦となれば、戦えるかどうか分かりません」

「ぬ、ぬうう、まさか、このわたしが水上戦で敗れるとは」

 周瑜は青い顔で報告を聞いていた。

 得意の水上戦で負けた事に衝撃を受けており、打ちひしがれていた。

「周将軍。このまま夏口に向っても、敵が待ち受けているであろう。そうなれば、我らは挟み撃ちという事になるぞ。どうするのだ?」

 董襲の問いに、周瑜は暫し黙った。

「・・・・・・船を捨てて、陸地に逃げたとしても敵の追撃が来るであろう。となるのであれば、取れる策は一つしかない」

「周将軍。それはいったい」

「それを今から話す」

 周瑜はそう言った後、諸将に策を話した。

 聞き終えると、皆目を剥いていた。

「周将軍。それはっ」

「この戦の勝敗は決した。ならば、この策を使うしかない」

 周瑜はそう言い、覚悟を決めた顔をしていた。

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― 新着の感想 ―
首を手土産に近づいて、暗殺を狙うのだとしたら、ワンマン勢力なら効果もあるだろうけど。 現状は長男(曹昂)が健在で後継者争いにもなりそうにないから自己満足にしかならないような。
周瑜の首持って行ったとしてもそれをぱっぱに近づける曹昂ではなさそうだが…
黄蓋は孫堅に大恩あるって言ったけど 曹昂にも恩があるだろうに…… 周瑜の悪あがきがどうなるかなぁ くだらない事すれば、孫権も処刑される恐れを考えていないのかな?
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