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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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其処まで面倒はみれない

 陣形を整えた周瑜と蔡瑁率いる両軍はほぼ同時に攻撃を開始した。

 矢を放ちつつ、船を近づけ乗り込み制圧するか沈めるのが、水上戦の戦い方であった。

 両軍ともに魚麗の陣を敷き、船を近づけ矢を放ったが、周瑜軍が一本矢を放てば蔡瑁軍は十本の矢を放っていた。

 明らかに矢の数が違う事に加えて、風向きが西北という事も重なり周瑜軍の兵達は、矢の雨あられに倒れて行く。

「ぐっ、此処に来て、敵に矢を奪われた事が影響するとはっ」

 兵が持つ盾に身を守りつつ、周瑜は自軍の矢の数の少なさを嘆いていた。

「ははは、良いぞ。このまま、つるべ撃ちを続けて敵を壊滅させろっ」

 蔡瑁は周瑜軍が放つ矢の少なさを笑いつつ、このまま風向きと矢の多さを活かして攻める事にした。

 矢の雨が降り注ぐ事で、周瑜軍の兵達は進む事が出来ずにいた。


 蔡瑁軍と周瑜軍が戦っている頃。

 

 赤壁にある周瑜軍の陣地の中を、蔡中と蔡和の二人が歩いていた。

「後、此処に置けば良いな」

「うむ。そうだな」

 二人は何かを話しつつ、紐が付いた棒のような物を持っていた。

 周りを見て、誰も居ない事を確認した後、その棒のような物を置いた。

 そして、火打石で火を作り紐の部分に火をつけた。

 火が紐を伝って、棒の部分へと燃えて行く。 

 それを確認した蔡中達は、その場を離れて陣地の門近くまで来た。

 其処まで来ると、陣地の至る所から赤い煙が幾つも上がった。

「何だ。いったい?」

「誰かが火でも付けたか?」

「まさか、敵襲⁉」

 陣地に赤い煙が上がるのを見て、兵達は混乱しだした。

 どうするのが良いのか分からず右往左往していた。

 蔡中達はそんな兵達を尻目に、そっと陣地を出て船着き場に赴き、事前に用意していた小舟に乗り込んだ。

 舫を解き、櫂で舟を漕ぎだした。

「上手くいったな。これで、戦功は間違いなしだ」

「うむ。しかし、あの棒は狼煙を上げる様だな」

 夜の中、河を進む蔡中達は振り返り離れていく陣地を見た。

 昨日、蔡中達が天幕に居ると、周瑜軍の中に居る曹操軍の密偵が訪ねてきて、陣地の中で重要な場所にこの棒を置いて紐に火をつけよ。その後、戦に出るのであれば密かに脱出。陣地に残るのであれば、船に乗って陣地から脱出する様に言われた。

 蔡中達は周瑜は戦に連れて行くほどの信頼は無かったが、陣地においても問題は起こさないだろうという信用はあった為、陣地の中を歩き回っても、特に何も言われなかった。

 そのお陰で、陣地の重要な場所を見つける事が出来た。

「そう言えば、この陣地に来た時に連れて来た者達はどうするべきだと思う?」

「我らと何の血縁も無い赤の他人だ。どうなろうと知った事ではない」

「それもそうだな。まぁ、死んだとしても特に困らんからな」

「その通りだ。それよりも、あの狼煙は何をする為に上げたのだろうな?」

「流石に其処までは・・・・・・うん?」

 蔡中は首を傾げていると、蔡和が空に何かが浮かんでいるのが見つけた。

「・・・・・・おい。見ろ」

「・・・・・・なんだ。あれは?」

「分からん」

 蔡中達は空に浮かぶ何かを見て、何なのか分からず訝しんでいた。


 同じ頃。

 赤壁の陣地の上空に到達した甘寧率いる『飛鳳』の部隊。

「甘将軍。全船攻撃準備が整いましたっ」

「良しっ。狼煙が上がっている所を中心に焙烙玉を落とせ!」

「はっ」

 甘寧の命により、船に乗る兵達は焙烙玉に火をつけて赤い狼煙を目印にして投下していった。

 落とされた焙烙玉は陣地の至る所に爆発していった。

 爆炎により、陣地に居た兵馬は狂乱し始めた。

「どうだ? 敵の様子は?」

「・・・・・・かなり混乱していますね。兵達は混乱して、誰も命令を聞いておりませんね」

 甘寧の問いに、兵が船縁に身を乗り出して下を眺めながら報告していた。

「このまま攻撃を続けて、陣地を燃やし尽くしてやる。他の船にもそう伝えろ」

「はっ。ところで、陣地に居る密偵や偽降している蔡中達は大丈夫でしょうか?」

「其処までは知らん。流石にもう逃げているだろう」

 甘寧は攻撃する様に命じられたが、密偵達の事については何も言われなかったので気にも留めていなかった。

 なので、この爆撃で死んだとしても勝利の為の犠牲という事で割り切る事にしていた。

「焙烙玉は全部投下しろよ。一つも残さず投下しろと言われているからなっ」

「はっ。他の船にも伝えますっ」

 兵が一礼しその場を離れて行った。

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― 新着の感想 ―
コラテラルダメージ
さっさと離脱しよう、とならないのは時代を考慮すると仕方ないのか
やっぱココの甘寧は水軍大将より空軍大将なイメージ。
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