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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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あまり嬉しくないかも

 数日後。


 曹操軍の全ての船が鎖に繋がれた。

 同時に、兵達に船酔いに慣れる為の調練も行われた。

 曹昂は少し離れた所で、調練を眺めていた。

(このまま調練を続けていれば、兵達も船酔いに慣れるだろうな。後は攻め込む時期だな)

 どれくらいで船酔いに慣れるかは、それこそ神のみぞ知るであった。

 それが分かっている曹昂は口を出す事はしないで、調練を眺めていた。

 すると、兵が近づいてきた。

 それを見て護衛の趙雲が前に出て、その兵に声を掛けた。

 兵は一礼し、趙雲に何事か話していた。

 聞き終えると、趙雲は曹昂に近づいた。

「殿、丞相がお呼びとの事です」

「父上が?」

 何事だろうと思いつつ、曹昂はとりあえず曹操の元に向う事にした。


 兵の案内で、天幕の前に来ると、曹昂は軽く身だしなみを整えた。

 それを終えると、護衛の趙雲を置いて天幕に入って行った。

 天幕に入ると、上座に座る曹操の傍には、郭嘉、荀攸、程昱、沮授、田豊、賈詡達が居た。

 曹操の前に跪いている男がおり、何故か男の前には蓋つきの壺が置かれていた。

(・・・・・・何かあったようだな)

 その場の雰囲気から、何かあると察した曹昂は一礼する。

「父上。お呼びとの事で参りました」

「来たか。皆と共に話を聞け」

 曹操が固い声で命じるのを聞いて、曹昂は賈詡の傍に立った。

「待たせたな。使者よ。お主が持っている文を見せよ」

 曹操が手を振り、目の前にいる男に渡す様に促した。

「はっ。こちらになります」

 男はそう言って、懐から折り畳まれた文を取り出した。

 曹操は荀攸を見ると、荀攸は無言で文を受け取り広げて危険な物は無いか確認し終えると、曹操に渡した。

「・・・・・・ふむ。黄蓋から降伏の申し入れか」

 文には、近頃の周瑜の行いには目が余る。このままでは、主家を巻き込んで破滅してしまう。主家の領地の安堵を約束してくれるというのであれば、次の戦の折に寝返り、丞相の為に働く所存と書かれていた。

「ふむ。黄蓋は孫堅の代から孫家に仕えている宿将であろう。それほどの者が寝返るとは、周瑜は余程恨みを買っている様だな」

「はっ。主である孫権様を幽閉し、孫権様の命という名目で領地を好き勝手に支配しております。この行いには、黄蓋様は大変激怒している様です」

「文だけでは、好きに言えるであろう。・・・・・・むっ、この文の最後に、忠誠を誓う証しとして、丞相が喜ぶ物をお渡しすると書かれているが、どういう意味だ?」

 文を読みながら話していた曹操は、文の末尾に書かれている一文を見つけると、使者に訊ねた。

 その言葉を待っていたとばかりに、顔を輝かせる使者は壺を前へと押した。

「はっ。これが、忠誠の証しにございます」

「何が入っているのだ?」

 曹操は其処までいうので、高価な物かそれとも世にも珍しい物なのかと興味が湧き目を向けた。

「・・・・・・今は亡き陶謙の息子である陶商の首にございます」

「「「っっっ⁉」」」

 使者の言葉を聞いて、曹操達は目を見開かせた。

 曹昂などは思わず、壺を見ていた。

「陶謙の息子の首だと?」

「はっ。我が主曰く、丞相は陶謙に対し深い恨みを抱いている。その家族にも父と一族と同じ目に遭わせてやるという事を申していた事を覚えておりました。徐州が朝廷の支配下に入った折、陶商は父の棺と共に、父の生まれ故郷である丹陽郡に逃げ込みました。そのまま、父が残した財と亡き母の一族の伝手を使い、富豪として暮らしていたのですが、劉備が反乱を起こし巻き込まれては敵わないと思ったのか、持てる財を持って廬江郡に逃げ込んだのですが、我が主が手を回し探し見つける事が出来ました。そして、首をこうして届けました。また、首を斬る前に陶謙の遺体が入った棺を埋葬した時も聞きだしましたので、丞相の下に来た際にお話しするとの事です」

「陶謙の墓の場所も知っておるか。それは良い事を聞いたな。徐州を手に入れた折、父と一族の仇である陶謙の屍に鞭を打とうと思ったのだが、陶商が父の棺と共に揚州に逃亡したと聞き、残念に思っていたのだ」

 曹操はそう言うが、曹昂としては徐州を手に入れたのだから、もうどうでも良いのではと思ったが、直ぐに思い直した。

(でも、伍子胥みたいに死者に鞭を打った事で復讐を果たしたから、陶謙の屍に鞭を打つ事で祖父上と一族の皆の仇を果たした事になるのか? いや、この時代に其処までしていいのかな? 流石に非難されそうな気がするが)

 どうするのが正しいのか分からず、曹昂は唸っていた。

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― 新着の感想 ―
墓前に掲げるか、晒し首は問題ないかもしれないけど それ以上は、悪評が増えるだけで、メリットないかなぁ まあ、所詮偽りの降伏と理解しているので、対応すれば良いだけかな
やっぱり周瑜よりも老獪な黄蓋さんのほうが厄介…
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