表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
957/960

混乱を招く

 宴は日が暮れるまで行われた。

 その間、蒋幹は戦の事は一言も話す事が出来なかった。

 役目を果たせずにいる為、酒も料理も味を感じなかった。

 内心で、このまま帰ってはまずいと焦っていた。

 周瑜が欠伸を掻き始めたので、宴は終わりとなった。

「では、これで」

 蒋幹はせめて、陣地にある兵糧がどの位あるか調べてから陣地に帰る事にした。

「何を言う。まだ語り足りないではないか、今宵はわたしが使っている天幕で眠っていくとよい」

 と言い周瑜は蒋幹の肩をがっしりと掴んで、有無を言わさず自分が使う天幕に向った。

 宴に参加した諸将達は、自分が使う天幕へと帰って行った。

 殆どの者達が酔いが残っていたが、董襲だけは酒を飲まなかった為、酔いなど全く無かった。

 自分が使う天幕に入るなり、直ぐに書几の上に何か置かれているのを見つけた。

「これは、いったい何だ?」

 董襲は封がされている物と竹筒を見つけるなり、不思議そうに呟いた。

 封にはご丁寧に「董襲殿へ」と書かれていた。

 とりあえず、封を破くと中から文が出て来た。

「・・・・・・これは」

 文を一読するなり、董襲は目を見開かせていた。


 同じ頃。


 周瑜の天幕では、蒋幹と周瑜は酒を酌み交わしていた。

 周瑜がしきりに昔あった事を懐かしそうに語るのを、蒋幹は酒を舐めながら聞いていた。

 そう話を聞いていると、周瑜が眠たくなったのか船を漕ぎ始めた。

「もうお休みになられた方が良いと思いますが」

「むぅ、そうだな。よし、きょうはともにねむろうか」

 周瑜はそう言って、寝台をもう一つ用意し蒋幹を自分の隣に眠る様に命じた。

 蒋幹も逆らう事はせず、その寝台で眠る事にした。


 数刻後。


 周瑜が鼾をかきはじめた。

 それを聞いて蒋幹は体を起こした。

 寝台に入り、横になっていたが目を閉じるだけで眠る事はしなかった。

(せめて、何か重要な情報を持って帰らねばっ)

 幸い、周瑜の天幕の中に居るので、周瑜が眠ればその間に探せば何か見つけれると、蒋幹は思っていた。

 鼾が聞こえて来たが、蒋幹は一応寝ているかの確認の為に周瑜に近づいた。

「周瑜殿、周瑜殿」

 体を揺すり、声を掛けて見たが、周瑜は起きる気配はなかった。

 これなら大丈夫だろうと思い、蒋幹は蝋燭に火を灯し天幕の中を徘徊した。

 何か良い情報はないかと探していると、書几の上に竹簡を見つけた。

「重要な情報が書かれているかもしれん。・・・・・・・これはっ」

 蒋幹は竹簡を手に取り広げると、中に書かれている内容を見て目を疑った。


『我らが曹操に降ったのは、時世に迫られた為。一戦も交えず降るという恥を掻いたこの身が求めるのは、曹操の首一つ。

 その首を旧主である劉表様の墓前に供える事が出来れば、他に臨む事は無し。

 時至れば、要塞に火を放ち敵を混乱させる故、貴殿はそれを合図に攻め込んでもらいたい。

 どうか、我らの心情を察し行動して頂けることを願う


                                蔡瑁』


 竹簡には、蔡瑁の名が書かれていた。

「こ、これは、内応の書簡。蔡瑁は周瑜と手を組むつもりなのかっ」

 蒋幹は竹簡に書かれている内容を読むなり、信じられない思いであった。

「・・・・・・とりあえず、これは丞相にお見せせねば」

 蒋幹は奪われた事が分からないが、重要な部分を切り離して袖の中に入れていく。

 竹簡を繋いでいる紐が音を立てているが、周瑜は目覚める気配がない為か、気にせず作業していた。

 やがて、作業を終えると天幕の外から話し声が聞こえて来たので、慌てて蝋燭の火を吹き消した。

 天幕の外に控えている兵が誰かと話している様で、断片的であったが話が聞こえて来た。

 周将軍とか、今は眠っているなど話していた。

 蒋幹は話を聞きながら、自分が使っている寝台に戻り横になった。

 程なく、天幕の外から誰かが入って来た。

 蒋幹は寝ているフリをしながら、耳を傾けていた。

 やがて、部屋に入って来た者が周瑜を揺り動かした。

「む、むう、だれだ?」

「周将軍。先ほど、文が」

「誰からだ?」

「蔡瑁殿からです」

「そうか・・・・・・むっ、其処に居るのは誰ぞ⁉」

 返事をした周瑜は、寝ている蒋幹を指差した。

「周将軍の御友人です」

「・・・・・・ああ、そうだ。蒋幹か。そうだ。すっかり忘れていた。そやつは寝ているか?」

「寝ております」

「そうか。では、話をしても問題ないか」

 そう言うなり、周瑜は文を受け取り中を改めた。

「・・・・・・そうか。蔡瑁殿は五日後に行動するか」

「その様です。文を持ってきた者の話では、陣地に火を放つのでそれを合図に攻め込んでくれとの事です」

「ははは、これで曹操を討ち取る事が出来る。さすれば、天下は安泰よ」

 周瑜は笑いながら、文を懐に入れた。

「さて、わたしは眠い。もう一眠りするとしよう」

「はっ。では、失礼いたします」

 話していた者が一礼し天幕を出て行くと、周瑜は横になって直ぐに寝息を立て始めた。

 寝たフリしながら話を聞いていた蒋幹は、この話を持っていけば役目を果たした事になるなと思い、明日に備えてとりあえず一眠りする事にした。


 翌朝。


 蒋幹は目を覚ますと、周瑜は眠っていたので挨拶も無しに帰る非礼を詫びる置手紙を残して、天幕を出て供の者達と合流し自分達が乗って来た船に乗り込み、来た時と同じ航路で帰って行った。

 暫くすると、本当に眠っていた周瑜が体を起こした。

 目を覚めるなり、置かれていた置手紙を読むと、ほくそ笑んだ。

「ふふふ、これで蔡瑁を排除する事が出来る。後はどうやって、曹操軍を撃退するかだな」

 周瑜はどうするべきか考えていると、天幕に誰かが入って来た。

「失礼するっ。周将軍っ」

「これは、黄蓋殿。どうされた?」

「一大事だ。このままでは、まずい事になるぞ!」

「なにっ⁉」

 黄蓋の口から出た言葉を聞いて、周瑜は今度は何が起こったと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
プライド高い&反乱中でいっぱいいっぱいの周瑜よりも冷めた黄蓋のほうが頭働きそうw
あの小物感漂う蔡瑁がこの国力差で丞相を売らいるわけないから無意味なんだよなあ…むしろ必死になって戦うわ
嵌めたつもりが嵌められてw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ