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初演奏

 周瑜自ら偵察に出たお陰で、曹操軍が築いている要塞がどの程度の規模で、どの様な作りなのか分かった。

 問題は、どのように攻略するかであった。

 共に船に乗船していた絵師に要塞を絵図にしてもらい、眺めていた。

「・・・・・・どう攻めるのが良いか」

 周瑜は絵図を見つつ、自軍の兵数を考えてどう攻めるべきか悩んでいた。

 そう悩んでいると、天幕の外から騒がしい声が聞こえて来た。

「何事だ?」

 兵達が騒いでいるので、周瑜が気になっていると兵が駆け込んできた。

「申し上げますっ。敵軍の船が一艘、こちらに向ってきておりますっ」

「なにっ⁉」

 敵の船が向かっていると聞いて、周瑜は耳を疑っていた。


 同じ頃。


 周瑜が陣地を築く、赤壁に向う一艘の船が居た。

 その船に乗り込んでいるのは、曹昂であった。

「さて、周瑜はどうするだろうな」

 曹昂は船の揺られながら、周瑜がどう対応するのか考えていた。

「矢を放ち追い返すか無視かどちらかでしょうな。まぁ、矢を放って追い返す方が高いでしょうな」

 その呟きに答えたのは、虞翻であった。

 今回の船の乗り込みに至って、孫礼と趙雲だけではなく虞翻も乗り込んでいた。

『わたしも腕に覚えがありますので、護衛の一人としてついていきます』

 と言い、船に乗り込んだのだ。

 曹昂も船戦の経験もあるので、意見がきけると思い乗り込む事を認めた。

 やがて、船は周瑜軍の陣地の近くまで来た。

「・・・ふむ。思っていたよりもしっかりとした陣地だな」

「流石は周瑜。山を背にし、河を前にしておりますな。兵法通りに陣を敷いておりますな」

 虞翻は陣地を見つつ、そう述べるのを聞いた曹昂は思っていたよりも、兵法に詳しいのだなと思った。

 そして、共に乗船している絵を書くのが得意な兵に陣地を描く様に命じた。

「さて、ついでに挑発するとしよう」

 曹昂はついでとばかりに、琴も載せていた。

「蔡琰から教わった琴の音を、敵に聞かせてやるとしようか」

 そう言うなり、爪弾きだした。

 だが、船の上という事で揺れている為か、変な音が聞こえだした。

「あれ? おかしいな。こうだった筈」

 曹昂は不思議がりながら、爪弾いていたが、変な音楽が奏でられだした。


 その頃、周瑜はというと。

 自分の下に来ている武将達に詰め寄られていた。

「敵が来ている。どうされるつもりかっ⁉」

「追い返すか、無視か。どちらにするつもりで?」

「周将軍。早くお決めをっ」

 周瑜がどうするか考えていると、黄蓋が前に出た。

「先ほど、遠目であったが、船に誰が乗っているのか確認した所、これは思いも寄らぬ者が乗っている事が分かったぞ」

「それは、何者で?」

「あの奸雄曹操の愛息子と言われる曹昂だ」

 黄蓋がそう告げるのを聞いて、周瑜達は衝撃を受けていた。

「それは真かっ⁉」

「儂は一時、その下に付いていた事がある故、その顔は憶えている。間違いなく、曹昂だ」

「この戦で二番目に高い大将首ではないかっ」

「周将軍。今すぐに全軍で攻撃をっ。敵は一艘で来ているので、我らを舐めているとしか思えませんっ」

「その通りだ。敵は、先日周将軍がした事の仕返しに来たつもりなのだろうが、一艘で来たことを後悔させてやろうぞっ」

 武将達は直ちに出陣をと頼んできた。

 話を聞いた周瑜は、あまりにあからさま過ぎるので、罠かも知れないと思っていた。

 と其処に、琴の音が聞こえて来た。

 琴の音なのだが、あまりに酷すぎて聞くに堪えない音楽と言えた。

 あまりに、酷い音楽なので周瑜は顔を顰めていた。

 周瑜は若い頃から音楽に精通しており、演奏を聴いていると、例えどんなに酔っていても僅かな間違いに気付いた。

 その為人々は「曲に誤りあれば周郎が振り向く」という歌を作って囃していた。

 そんな歌が出来る程に、周瑜は音楽に対して人一倍煩かった。

 だから、聞くに堪えない音楽を聴いているだけで、今にも怒髪冠を衝く思いであった。

「・・・・・・ええいっ、出陣だ。敵に一艘で来た事を後悔させてやれっ⁉」

 周瑜の命を聞き、武将達は歓声をあげた。

 そして、その場を離れていく中、黄蓋だけ留まった。

「周将軍。これは、敵の罠ではないか? 此処は様子を見た方が良いと思う」

「いやっ、我らの陣地で、敵が居座る事を許せば、士気が下がってしまう。一刻も早く撃退するか、あの船を捕縛するべきであろうっ」

 周瑜が強く言うので、黄蓋は言い返す事が出来なかった。

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― 新着の感想 ―
し○かちゃんのバイオリン……(苦笑)
手前よがりな演奏は「苦音」です 練習は家でしてください って矢文で打ち込んでやりたいw
音楽に精通してる者にとって下手くそな演奏はガチで殺意を覚えますからなぁ… 意図せずしたとはいえ見事な挑発! まあ蔡琰は苦笑するんでしょうが(
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