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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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墓穴だよな

 遅々として進まない曹操軍。

 それを見て、曹操は苛立っていた。

 其処に周瑜が柴桑を発ち、河を上っていくという報が届けられた。

「周瑜が出陣したかっ。ふん、流石に我らが進軍した事を聞いたか」

 曹操は忌々しいと思いつつも、その場にいる郭嘉に訊ねた。

「郭嘉。敵はどう動くと思う?」

 曹操が信頼する参謀の郭嘉は地図を見て、暫し考えた後口を開いた。

「敵は河を上がっていくという事ですから、恐らく水上戦で勝敗をつけるつもりでしょう。であれば」

 郭嘉は地図上にある柴桑を指差しつつ、河に沿って動かしていく。

「柴桑を発った周瑜軍がそのまま侵攻するとなれば、江夏郡の何処かの土地か県を占領し、陣地にするでしょう。江夏郡で周瑜率いる水軍が、力を見せつけるとすれば、樊口がある鄂県か。嘗て太守であった黄祖も駐屯していた夏口のどちらかでしょう。勝てば、江夏郡の何処かの土地を得る事が出来ます。負けたとしても、河を下って行けば、本拠地である柴桑に撤退する事も出来ますから」

「ふむ。そうか。当初の予定では、夏口で敵を迎え撃つ予定であったが、無理か」

 郭嘉の推察を聞いて、夏口に行く事は出来ぬと判断する曹操は、ひとまず何処かの土地に陣地を築き、相手の動きを見るべきだと判断した。

「蔡瑁。我らがいる土地から、夏口までの間の河を下っていく先に、陣地を築ける場所はあるか?」

 曹操に訊ねられた蔡瑁は地図を見つつ、ある土地を指差す。

「此処です。この烏林の地であれば、夏口からも左程離れておりません。更に陸路で江陵まである道がありますので、兵糧の運搬も容易にできます」

「ならば、その烏林の地に向うように全軍に命じるのだっ。事は一刻を争うっ。直ぐに出陣の準備に掛れっ。病に罹った者達も載せるのだ!」

「父上。まだ病は完治していない状態で船に乗せても、病状が悪化するだけです。御再考を」

「周瑜が何時夏口か鄂県に布陣するか分からん状況で、兵の病状など気にしてはおれんっ。病が重くなり死んだら埋めろ! 移動中も治療を施せっ。烏林に着いた後に、本格的な治療をせよっ!」

「分かりました」

 曹操が怒声交じりで命じたので、曹昂を含めた家臣達も反論できなかった。

 曹昂としては、徐々に船酔いに慣れさせていこうと思っていたが、これ以上は無理と判断し病に罹った兵と、健康な兵を分けて船に乗り込ませていった。

 

 それから、十数日が経った。

 少し前の進軍の様に休憩は長く取らずに進んだ事で、目的地の烏林の近くの土地まで辿り着いた。

 烏林に着けば、陣地を築こうとしていたが、先行した斥侯船から驚く報告が齎された。

「なに、周瑜が烏林の対岸に陣地を築いているだと⁉」

「はっ。何度も見て確認しましたので、間違いございませんっ」 

 斥侯船に乗っていた兵の報告を聞いた曹操は、郭嘉を見た。

「郭嘉よ。お前の予想が外れたな。周瑜は此処まで切り込んできおったぞ」

「申し訳ございません。周瑜の行動を予測しきれませんでした」

 素直に謝る郭嘉。

 それを聞いて、横にいる荀攸が不可解そうな顔をしていた。

「しかし、解せません。夏口には文聘将軍が率いる軍勢が駐屯している筈です。周瑜はその軍勢と相対する事無く、此処まで来たと?」

「であれば、運が良かったのか。それとも、文聘が見逃したのか?」

 程昱が周瑜が居る事から、己の考えを述べると、それを聞いた賈詡が口を出してきた。

「恐らく、前者でしょうね。見逃したとなれば、後で調べられて処罰されるでしょう。降伏したばかりの文聘がそのような事をすれば、自分の命だけではなく、一族の者達の命に関わるのでしないでしょう」

「賈詡の言う通りであろう。しかし、周瑜は夏口に文聘が布陣している事を知っているのだろうか?」

 曹操の疑問に、誰も答える事が出来なかった。

 文聘が夏口に布陣している時点で、周瑜は後方を遮断されたようなものだが、敵は当代でも知勇兼備の名将と謳われる周瑜である以上、何か考えがあるのではとも思えた。

「・・・周瑜の考えは分かりませんが、我らも烏林に布陣し陣地を作りましょう。父上」

「そうだな。良し、全軍に通達せよ。烏林に向かうように」

『はっ』

 曹操の命に従い、曹昂達は出て行った。

 蔡瑁もその場を離れようとしたが、曹操が呼び止めた。

「そう言えば、烏林の対岸には何があるのだ?」

「それなりに大きい山があります。名前は赤壁山と言います」

「赤壁か・・・・・・」

 地名を聞いた曹操は顎を撫でた。

 その後、曹操軍は烏林に辿り着いた。

 周瑜軍から攻撃を受けるかと思われたが、攻撃を受ける事は無かった。

 そのまま、烏林の地に着くと陣地を築き始めた。

 後に『烏林・赤壁の戦い』と呼ばれる戦いの幕が上がるのであった。

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― 新着の感想 ―
現場着陣の軍は万全ではないけれども、史実の赤壁よりも比べ物にならないほど有利・安定的な曹操軍。無理に動かないでも勝てはするw
その短慮が、敗れるフラグなんじゃない、曹操。。。 さて、どうなるかなぁ
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