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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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気休め程度だが

 準備を終えた曹昂は、薬師達を集めた。

「この甕の中には入っている水は、めまいと喉の渇きを訴えている者に与えよ。一日二~三回ほど与えつつ、経過を見る様にせよ」

「あの、この甕の中には、何が入っているのですか?」

 薬師の問いに、曹昂は暫し考えた。

「・・・これはとある仙人から教えられた秘水だ。仙人から教えられた物ゆえ、誰にも教える事は出来ぬ」

 曹昂の答えを聞いて、甕の中にある物が非常に貴重な物と知り、目を剥いていた。

 そして、言われた通りにめまいと喉の渇きを訴えている者に二~三回与えて行った。

 その他の者達には、横にさせて寝かせたり水を多めに与えたりして、経過を見る事にした。


 その後、劇的とはいかないが、不調を訴えている者達の体調が少し良くなったという報告があがった。

「まぁ、こんなものか。所詮は気休めだからな」

 報告を聞いた曹昂は溜息を零した。

 めまいと喉の渇きを訴えている者達に与えた秘水は、砂糖と塩を水を混ぜて出来た経口補水液なので、劇的に回復するという事など無かった。

 体調を崩している者達も、薬師の報告を聞いて船酔いだと思い、水を多めに与えたり揺れを感じない場所、つまり陸地に動かして休ませたりしただけだ。

「気休めですか。このまま続ければ、いずれは兵達全員、治るのではないでしょうか?」

 傍にいた趙雲が思った事を述べたのだが、それを聞いた虞翻が呆れた様に息を吐いた。

 荊州征伐の後、揚州に向う事が分かっていたので曹昂は土地勘が明るい虞翻を従軍させる事にした。

「何と愚かな事を言うのだ。いや、日頃から馬で移動する事しかしない者達は分からんか」

 虞翻の物言いに、趙雲は頭を掻いていた。

 だが、その場にいた劉巴達は言い方に、顔を顰めていた。

「今は体調が良くなったとしても、船で移動する以上、体調が良くなる事は無い。加えて、同じように体調を崩す者が増えるであろう。焼け石に水と同じよ」

 虞翻の話を聞いて、皆は曹昂が言った気休めの意味が分かった。

「その通りだ。柴桑に向う為には、どうしても船を使うからな。今回の処置も気休めにしかならない」

 溜息を零しながら、曹昂は愚痴を零した。

(船酔いは水を浴びせて治すという方法もあるが。今は冬だからな、この時期にそんな事をすれば、低体温症になるかもしれないから。無理だ)

 船酔いを治すために水を掛けて、低体温症になるなど笑い話としか言えなかった。

「・・・・・・揚州について、何か報告はあるか?」

 これ以上、現状を考えても改善しないので、曹昂は揚州について、何かないか訊ねた。

「間者からの報告によりますと、周瑜が我らの進軍の報を聞いて兵を集めた様です。その数三万です」

「予想通りだな。内訳は分かるか?」

「はい。大将は周瑜。部将は黄蓋、凌操、朱治、周泰、董襲、潘璋、蔣欽と言った勇将ばかりです」

「・・・魯粛はどうした?」

「此度の周瑜の行いに激怒して、剣を突き付けたそうです。その咎で官職を取り上げられ屋敷に蟄居とも、屋敷に引きこもっていると言われているそうです」

「魯粛ですか。あの者は見た目は柔そうですが、その心の内は強い意志を持っております。なので、此度の周瑜の行いに激怒してもおかしくないですな」

 虞翻が魯粛について話すのを聞いてか、法正が訊ねた。

「では、調略に応じる事もあるのか?」

「いや、それは難しいでしょうな。あの者は忠義に厚い男です。周瑜の行いに憤慨したとしても、孫権には忠節を尽くしているのです。ですので、調略に応じるという事は、孫権への忠義に叛く事になりますのでしないと思います」

 虞翻が調略に応じないと聞いて、法正はでは無理かと思い、それ以上聞かなかった。

 その後、事前に進言した通り曹操軍の進軍は一日進んでは二~三日休むという事を繰り返した。

 それでも、体調を崩す者が減る事は無かった。

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― 新着の感想 ―
>「はい。大将は周瑜。部将は黄蓋、凌操、朱治、周泰、董襲、潘璋、蔣欽と言った勇将ばかりです」 ここに来て思わぬバタフライ・エフェクト。凌操ぱっぱが甘寧以外の誰かに討ち取られる事も無く健在だった。
これって荊州でじっくり腰を据えて兵を慣れさせてから攻めればいいんじゃないかな。兵たちは曹操が攻め込んでくるから周瑜についているだけで、攻め込まなければ孫権と周瑜どっちにつくかで混乱するだけだと思う
実際の赤壁、南部討伐軍に比べるとじっくり腰据えて周瑜反乱勢力を兵糧攻めもできそう。油断なく。 荊州も平穏に勢力下だし、涼州もやっかいな馬一族もいない
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