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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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牛の歩みが如く

 建安十年(西暦二百五年)。十一月。


 江陵を出陣した曹操軍は河を下っていく。

 文聘率いる五万も曹操軍よりも先に出陣し、江夏郡に向かっていた。

 荊州水軍と曹操軍を合わせた三十万余が船に乗り込み漢水を下っていく。

 大軍により、大型船を多く用意された為か、河が船に埋め尽くされている様に見えた。

 兵達は櫂で漕ぎ進め、向かうは揚州豫章郡柴桑県。

 このまま、順調に進めるかと思われた。



 江陵を出陣した三日後。

 江陵から十数里ほど離れた江岸にて、曹操軍の船は停泊していた。

 日は高くなく風も強くないので、本来であれば、まだ河の上で進軍している筈であった。

 江岸に建てられた曹操軍の陣地。

 陣地内にある天幕の一つで、曹操は家臣達と軍議を行っていた。

「どうだ? 病に罹った者達の様子は?」

「従軍している薬師の報告ですと、多くの者達が嘔吐、頭痛を訴えているとの事です」

「江陵を発ってから、まだ三日だぞ。それなのに、もう百人以上の者達が病に罹ったというのか?」

 報告を聞いた曹操は重い溜息を吐いた。

 江陵を発ってからは、日中は船に夜は江岸につけて休息を取っていた。

 だが、二日ほどすると、兵達が徐々に体調を崩し始めた。

 休憩の時間を多く取ったのだが、それでも体調が治る事は無かった上に、体調を崩す者を増やすのであった。

 これは対策を取らねば戦にならないと判断した曹操は、日中だが江岸につけて軍議を開く事にした。

「父上。酷い者だと嘔吐だけではなく、喉の渇き、めまい、身体がだるいと言っているそうです」

 曹昂の報告を聞いて、曹操は唸っていた。

「丞相。これは恐らく疫病でしょう。此処は病に罹った者を隔離しましょう」

「さようです。病に罹った者を、罹っていない者達と一緒にしては病が広がるのを防げません」

 家臣達が病に罹った者達を隔離するべきと進言した。

 曹操はそうする様に命じた後、唸っていた。

「まだ、江陵を発って三日だぞ。だというのに、既に多くの兵が疫病に掛かっているではないか。このままでは、周瑜と戦う時には、兵の殆どが疫病に罹って戦にならなくなるぞ」

 曹操がそう言うのを聞いて、家臣達も同じ事を思っていたのか唸っていた。

「蔡瑁殿。何か対策はないのか?」

 程昱が軍議の席に居る蔡瑁に訊ねた。

 水軍を率いている将という事で、何かしら対策があるだろうという期待を込めて訊ねたのだが。

「申し訳ありません。こればかりは、船に乗って慣れるしかありません」

 蔡瑁は気まずそうな顔をしつつ、そう答えた。

 今、疫病に罹っている物達は殆どが曹操軍の兵達で、荊州軍の兵達は疫病に罹った者達は居ない訳ではないが少なかった。

 その罹った者達も水軍の兵ではないので、船に乗り慣れていないから疫病に罹ったというのが、薬師達の見解であった。

 水軍に詳しい蔡瑁の意見を聞いて、家臣達は露骨に顔に出しはしなかったが、内心で使えないと思っていた。

「父上。此処は進軍する方法を変えた方が良いと思います」

「どう変えるのだ?」

「二~三日進軍を止めて兵を休ませて治療し、一日進む。そうすれば、疫病に罹る者達も減るでしょうし、治るでしょう」

「それでは、牛の歩みと同じではないかっ。そんな進軍では、周瑜が軍を整えて、自分に有利な戦場で待ち構えているかもしれんぞ!」

「致し方ないかと。今の進軍では、疫病に罹る者達は増える事はあっても減る事はありません。周瑜と戦う時に、疫病により役に立たない兵を率いて戦うか、疫病を直した兵を率いて戦う。どちらになさいます?」

 曹昂の問いに、曹操達は誰も反対意見を述べれなかった。

「後はそうですね。気休め程度の事しかできませんね」

「それでも構わん。何もしないよりもましだ。するがよい」

「分かりました」

 曹操の許可を得た曹昂は一礼し、その場を後にし直ぐに準備に取り掛かった。

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― 新着の感想 ―
脱水対策に経口補水液モドキでも作るのかな。
私にいい考えがある 船を鎖で繋いで(ry
劣悪な環境(兵士が詰め込まれた空気の澱んだ船内)での船酔いなら、止瀉薬か休憩時間を長く取るしか無い。あとは慣れろ。だしね
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