表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

921/1034

いざ、征かん

 健安十年(西暦二百五年)八月某日。


 曹操の上奏は通り、荊州征伐が行われる事になった。

 既に各州の兵は集まっていた。

 その数、騎兵歩兵と水軍の兵の全て合わせて五十万であった。

 雲霞の如く集まる軍勢を前にある高台に、曹操は登ると剣を掲げた。

「この戦にて、天下を安寧させる!」

『おおおおおおおっっっっっっ‼‼⁉』

 曹操の檄に、兵達は喊声をあげた。

 程なく、五十万の兵は南進を始めた。

 荀彧は留守居役として、城壁にから南進する軍勢を見送った。


 数十日後。


 許昌を発ち、南進する曹操軍はようやく南陽郡に入った。

 既に南陽郡は支配下に入っている事もあり、何の襲撃を受ける事は無かった。

 何の支障もなく進み続けていくと、宛県に到達し城の前まで来た。

 嘗て、今は配下となっている張繍が曹操に辛酸を舐めさせた地であった。

 既に領地になっているが、城を見るなり曹操は昔の事を思い出したのか、苦笑いを浮かべていた。

 そんな思いを抱きながら城の門前を見ると、この郡の太守である曹休と関羽を含めた家臣達が出迎えていた。

 曹操は軍勢の足を止め、自分の馬車だけ曹休の元まで進ませた。

「文烈。久しいな、お役目を全うしておるか?」

「はっ。まだまだ至らぬ所がある身でありますが、関将軍や他の者達の力を借りて務めております」

「そうか。今後とも励むのだぞ」

「はっ」

 曹休との話を終えた曹操は関羽を見た。

「関羽よ。お主の目から見て、文烈をどう見る?」

「はっ。わたしが見た所、優れた才を持っております。素直な性格ですので、水を吸う綿の様にわたしの教えを吸収していきます。教え甲斐がある者にございます」

「そうかそうか。聞いたか。文烈、今後とも精進するのだぞ」

「はいっ」

 話を終えると、曹操は曹休と共に城内に入って行った。

 

 城内に入ると、戦勝祈願という名目で宴が開かれた。

 曹操を含めた将兵達は参加し、酒と料理を楽しんだ。

 関羽も当然参加していた。

 盃を飲み干すなり、誰かが近づいてきた。

「雲長殿。お久しぶりです」

「むっ? ・・・おおっ、田豫ではないかっ。久しぶりだな」

 声を掛けて来たのは旧知の田豫であった。

 黄巾の乱が起きた折、田豫は劉備が結成した義勇軍に参加していた。

 当時はまだ幼く、関羽達の様に部隊長や簡雍の様に参謀ではなく一兵卒であった。

 だが、劉備が田豫に見る所があると思ったようで、近くに置いて側近の様に仕えさせていた。

 やがて、黄巾の乱が終わると、劉備は恩賞として安熹県に赴く事になった際、老齢の母のために帰郷する事になり別れる事になった。

 その時劉備は涙を流しながら別れを惜しんだ。

 それからは、様々な主を渡り歩き、今は曹操に仕え丞相軍謀掾の職に就いていた。

「お主とこうして会えるとは思いもしなかったぞ」

「私もです」

 関羽が久しぶりの再会を喜んでいると、田豫も嬉しそうに今まで自分はどうしていたのか話した。

 二人は盃を交わしながら、久闊を叙していた。


 数日後。


 兵糧の補給を済ませるなり、曹操軍は南進を再開した。

 曹休と関羽達は城外に出て見送った。

 宛県を発ち、進み続け襄陽郡に入り、襄陽で曹仁と合流し駐屯している軍勢と共に南進した。

 南郡に入り、そのまま進み続けていき、江陵に到達した。

 城には劉の字の旗が掛かっていたが、曹操軍を見るなり直ぐに白旗が挙げられ、城門が開かれると着飾った者が出て来た。

 その者がそのまま進み続けると、軍勢が良く見える所で足を止めて、その場に平伏した。

「劉表家臣の宋忠が、主君の命により降伏の書状を持って参りました! どうか、ご確認をっ」

 両手で書状を持ち掲げながら、平伏した宋忠が大声で叫んだ。

 その声を聞いて、曹操は傍に居る騎兵に取りに行くように命じた。

 騎兵は宋忠の傍まで駆けていき、書状を受け取り、曹操の元まで運んだ。

 書状を一読すると、降伏する事が書かれているので問題ないと、曹操は満足そうに頷いた。

 そして、騎兵に何事か伝えた。

 伝えられた騎兵は宋忠の傍まで来ると「丞相は降伏を受諾された。我らがお前達が拠点にしている漢寿に着く前に、道と身を清め出迎えの準備を整えよ」と告げた。

 告げられた宋忠は深く頭を下げた後、直ぐに準備を整え江陵を発った。


 江陵を降伏させた十数日後。


 曹操軍は漢寿県まで到達した。

 事前に伝えていた通り、城外に劉琮と劉琦に加え、蔡瑁と蔡夫人の他劉表の家臣達が出迎えていた。

 曹操は馬車から降りて、劉琮達と共に城内に入っていく。

 そして、城内の大広間にて、曹操は上座に座り、平伏する劉琮達を見下ろした。

 上座の前にある卓には、荊州州牧の印綬が入った箱が置かれていた。

「荊州全ての郡は、朝廷に帰順いたします。その証に、印綬をお返しいたす」

 平伏しながら劉琮が述べた。

 その姿を見て、曹操は満足そうに頷いた。

「よくぞ、朝廷に帰順する事を決めた。劉表の姿は無いようだが、どうした?」

 行軍中に死んだという報告を受けていないので、生きている筈なのだが姿が見せなかったので、曹操は訊ねた。

「父は、床から上がる事が出来ぬ程の重病にて、失礼と思いますが。お許しを」

 劉表が居ない事を劉琦が教えた。

「そうか。では、仕方がないな。お主らの帰順を受け入れる。沙汰について後日言い渡す。下がれ」

 曹操が命じると、劉琮達は立ち上あがり一礼しその場を離れて行った。

 劉琮達が出て行き、部屋には曹操と曹昂を含めて家臣達しかいなかった。

「父上。おめでとうございます」

『おめでとうございます!』

 曹昂が前に出て、祝いの言葉を述べると家臣達も続けるように述べた。

「既に降伏すると決まっていたのだ。それほど喜ぶ事ではないわ」

 曹操は左程嬉しそうと思っていないのか、何とも思っていない顔をしていた。

「ですが、荊州を得た事で、天下の趨勢は決まりました。これで、後は我らに従わない者達を討てば、天下は殿の物になります」

 郭嘉がそう言うが、曹操は首を横に振った。

「まだ、揚州には劉備や孫権がおる。孫権はどうなるか分からんが、劉備は何としても討たねばならん。あ奴を討たねば、儂は天下を得る事は出来んっ!」

 曹操は今すぐにでも、劉備を攻めたいという思いを込めて叫んだ。

「お気持ちは分かりますが。今は足場を固めるのが先決です。その後で、劉備を攻めれば我らの負けはまずないでしょう」

 程昱が気持ちを静めようと、荊州の統治を行うべきと進言した。

「そうだな。まずは、劉表の息子達だが・・・・・・・劉表はまだ死んでいないのか?」

「薬師の傍に居る間者の報告では、まだ生きているそうです。と言っても、いつ九泉に行くか分からないそうです」

「そうか。では、それを上手く使うとしようか」

 曹操は悪い笑みを浮かべた。

 曹昂達は、何をするつもりなのか気になるのであった。


 翌日。


 劉琮と劉琦と蔡瑁とその他家臣の沙汰が下った。

 蔡瑁は漢陽亭侯と水軍都督に任命された。その他の家臣も身分と実力に見合う官職が与えられた。

 そちらは問題なかったが、問題なのは劉琮と劉琦であった。

 何故か、劉琮は荊州刺史に、劉琦は荊州州牧に任命されるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
日頃の行いを考えると曹昂が蔡夫人と父親の間を怪しむのは正しいけど、流石に面と向かって言っちゃいかん(苦笑)
無傷で荊州接収は盤面詰みですな。三分の計上奏した本人も曹操サイドにいるんだからw とはいえ、劉表勢力へまたいやらしい揺さぶり?かけてくるのかぱっぱw
蒯越を配下にできたので、荀彧に手紙を送ったかな。 劉磐と黄忠の召還と魏延や文聘の処遇かな、後は
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ