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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十九章

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話に出したから

 暫くして、曹昂は丞相府にある部屋の前に来た。

 部屋に入ると、室内には荀彧の他に、郭嘉、程昱、荀攸、賈詡、沮授、田豊が居た。 

 皆席に座っているのを見るなり、錚々たる顔ぶれだなと思いつつ、用意されている席に腰を下ろした。

「本日は来てくださり感謝いたします」

「いえ、わたしを呼ぶほどに重要な事なのでしょう」

 荀彧が感謝を述べると、曹昂は手を振りつつ訊ねた。

「はい。荊州での処置について話していたのです」

 荀彧は曹昂を呼んだ理由を話した。

 降伏した荊州をどうするかで、二つの意見に別れた事を話した。

 荊州の統治は最低限にして、揚州に攻め込むべきという意見と、荊州の足場を万全にしてから揚州に攻め込むべきという意見に別れていると教えてくれた。

「ふ~む。どちらも悪くない手ですね」

「ええ、それで我らも別れているのです。それで、陳留侯の意見を聞こうと思いお呼びしたのです」

 荀彧にそう言われ、曹昂は顎に手を添えて考えた。

(現状の揚州の状況を考えると、直ぐに攻め込めば戦う事なく降伏する事も考えられるな。でも、孫権の事だからな、劉備と手を組んで対抗するという事も考えられるな。そうなると、周瑜と魯粛に加えて徐福と馬順も加わるという事も考えられるな。そうなると、長期戦になるかもしれないな。そうなると、荊州の支援も欲しくなるな。そうなると、統治がしっかりとしていた方がいいんだよな・・・)

 曹昂は暫し考え込んだ。

 そして、考えが纏まると口を開いた。

「・・・わたしは荊州の足場を固めてから、揚州に攻め込むべきだと思います」

「そうなれば、孫権は守りを固めるかもしれません」

 曹昂の意見を聞くなり、郭嘉が聞いてきた。

「ですが、荊州の統治を最低限だけにして、揚州に攻め込んだ所で孫権は降伏せず徹底抗戦します。その場合、劉備と手を組む可能性も出てきます」

「しかし、劉備は孫権の元から独立したばかりです。そのような恩知らずと手を組みますか?」

「状況次第では手を組むでしょう」

「それはあり得ますな。しかし、孫権と劉備が手を組んだ所で、兵力は知れているでしょう。恐らく攻めても勝てると思います」

 程昱が思っている事を述べると、曹昂は頷いた。

「確かにその通りでしょう。ですが、地の利は孫権達にあります。ですので、兵力の少なさを生かす方法もあるでしょう。そうなりますと、長期戦になる場合もあり得るかと。そうなった場合に備えて、荊州から支援を受けれる様にするべきです」

 曹昂の話を聞いて、荀彧達もその場合も考えられるかと頷いた。

「しかし、荊州の足場を固めている間に、孫権達は手を組み守りに力を入れるでしょう。そうなれば、討伐も難しくなると思います」

 荀攸は揚州に早急に攻め込む意見を支持していたので、荊州の足場を固める事をしなくてもよいと思い述べた。

「我らもそう思うという事は、敵もそう思っているという事でしょう。相手が守りを固めたとしても、その裏を掻く事は出来ます」

「裏を掻くですか? それはどのような方法ですか?」

 沮授はどんな方法を使うのか分からず訊ねると、曹昂は指を立てた。

「現在我らが有する領地で揚州に接しているのは、江夏郡、豫洲、徐州、九江郡の四つ。呉郡はこちらに従う素振りを見せていますが、状況次第では、敵になるか分からないので除外するとしても、江夏郡を含めた四つの土地の兵を動かすだけでも、敵は動揺し守りに穴が出来ます」

「成程。それは良い手ですな。攻めるのではなく、兵を調練するだけでも、敵は警戒し守りを分散するでしょうな」

 話を聞いた田豊も、良い手だと思い頷いた。

「そう考えますと、早急に揚州を攻め込まず荊州で足場を固めてからでも良いですな」

「確かに。荊州で足場を固めていれば、孫権は肝をつぶして降伏するかもしれんからな」

「劉備は、恐らく降伏しないでしょうが。その時は降伏した孫権に攻めさせれば、我らは損耗する事無く劉備を討てますな」

 話を聞いて、程昱達は考えを改めた。

 それを見た荀彧は安堵し、曹昂に頭を下げた。

「ありがとうございます。これでようやく、丞相に報告する事が出来ます」

「いえいえ、わたしは思っている事を述べただけですので」

 曹昂は手を振りながら、そう述べた。


 その後、久しぶりに会えたという事で、曹昂達は茶を交えた雑談に興じていた。

「そうですか。送った狸猫は懐いていましたか」

「ええ、時折、わたしが政務に行く時など頬を引っ掻いたりしますが、帰ってくると狩った獲物を渡しに来るので、お詫びなのでしょうな」

 曹昂は茶を交えながら、送った狸猫の事を荀彧に聞いていた。

 それで、良く懐いてくれている事を教えてくれた。

 曹昂達が話していると、郭嘉達は自分達の席の膳に置かれている物に舌鼓を打っていた。

「むぅ、これは良いですな。外側はカリっとして、中はモチモチしております」

 郭嘉がそう言って、食べているのは淡い茶色で小さい球が繋がった物であった。

 それは鶏蛋仔(ガイダンジャイ)という球状のワッフル菓子だ。

 小麦粉、鶏卵、バター、牛乳、砂糖、イーストなどを混ぜ、醗酵させて作った生地をを半球状の二枚の鉄板にはさんで火を通して作るという料理であった。

「かすたぁどを塗って食べますと、濃厚な味で楽しめますな」

「いや、生くりぃむを塗っても美味しいですぞ」

「このからめるも良いですぞ。苦みの中に甘味があり、それがこの鶏蛋仔をより美味しくしております」

 膳には鶏蛋仔が盛られている皿の他に、カスタード、生クリーム、カラメルが入った器が置かれており、各自好きに掻ける様に出来ていた。

 他にも氷菓(アイスクリーム)が盛られた器もあった。

 皆、鶏蛋仔と氷菓を別々に食べるという事はせず、鶏蛋仔の上に氷菓を乗せた。

 丞相府に来る前に鶏蛋仔を焼いて作ったのだが、食べる直前に軽く焼いて温めた。

 お陰で、温かい為、乗せられた氷菓は少しずつ溶けていき、液体になり鶏蛋仔に染み込んでいく。

「くううう、温かい物と冷たい物を一緒に食べるという、経験した事が無い味わいですな。この味は、どう表現すればいいのか分かりませんなっ」

 氷菓と鶏蛋仔を一緒に食べる事で、経験した事が無い食感に皆耽溺していた。

 曹昂達もその様子を見ていた。

「丞相も此処に居れば、この料理の味をどう表現するでしょうな?」

「さぁ、今父上も忙しいでしょうし、折を見て出して食べさせれば分かると思います」

「ぬうっ、お前は孝行息子と思っていたが、何という親不孝をするのだ」

 曹昂が荀彧と話していると、何処からか聞き覚えがある声が聞こえて来た。

 そして、声がした方に目を向けると、其処には曹操が居た。

「えっ⁉ 父上、何故此処に⁉」

「馬鹿者。此処は丞相府だぞ。儂が居ても不思議ではなかろう。何処からか良い匂いがするから、匂いを辿ってみればお主らが居たのだ」

 曹昂が驚きつつ出た言葉に、曹操は明快な答えを述べた。

 皆、確かにその通りだと思いつつも、頭を下げた。

「良い。楽にせよ。それよりも、子修。儂の分はあるのか?」

「えっと・・・・・・あまり、量はありませんが」

「良し。儂を抜きにして勝手に食べた事は許してやる。早く持ってこい」

「は、はい。直ちに」

 曹操に促され、曹昂は厨房に向った。

 そして、一口食べるなり、目をカッと見開いていた。

「外側はカリっとしていながら、中はモチモチしておる。生地自体は優しい甘味があるだけだが、其処にかすたぁど、生くりぃむ、からめる等を塗る事で、甘味を補強し味に深みを出しおる。其処に氷菓を乗せる事で、溶けて染み込んだ事で、更に味を上乗せしておる。其処に冷たい氷菓と温かい鶏蛋仔という相反する物を同時に食べるという贅沢な食べ方も出来ると来た。この氷菓と鶏蛋仔を一緒に食べるという食べ方は、類を見ない食べ方よ。氷菓が鶏蛋仔の熱で溶ける事で柔らかくなり、鶏蛋仔は氷菓の味を吸って美味くなっておる。また、この二つを同時に食べる事で、冷たいのに温かい。温かいと冷たいという正反対の物を味わえれるなっ⁉」

 曹操は食べるなり、鶏蛋仔をそう評した。

 その評価を聞いた曹昂は、グルメだなと思っていた。

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― 新着の感想 ―
ああっ…父上がまるで孫礼のような食レポをw
やはり、全員で荊州に行って采配しないとならないかな。
呼ばれてないけどぱっぱやっぱり登場w長文の食レポ乙w
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