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衝撃の報告

劉琮の降伏宣言は支配下に入っている郡の全ての県に届けられた。

 無論、長沙郡の攸県にいる劉磐にも届けられた。

「降伏だと⁉ 一戦も交えずして、敵に降伏するなど承服できんっ」

 使者から届けられた文を読むなり、劉磐は怒号をあげた。

 あまりに大きい怒声の為か、文を届けた使者が腰を抜かしていた。

「この決断を殿はどう思っているのだ⁉」

 劉磐は使者に詰め寄りながら訊ねた。

 この、劉磐が言う殿とは劉表の事を言っている。

 劉磐からすれば、劉琮は飽くまでも代理なので自分の主君ではないので、そう言うのであった。

「そ、それが、殿はまだ意識が戻っておりません。薬師の話ではこのまま目覚めないまま九泉に行くと申しておりました」

「何たる事だ・・・・・・」

 劉磐は手を振りながら、深く嘆息した。

 それを見た使者は一礼し、その場を後にした。

 幼い頃に両親を亡くした劉磐にとって、劉表は主君でもあり父親代わりと言っても良い存在であった。

 生まれつき勇武に優れていた事から、武将として役に立とうと頑張ったお陰で、今がある。

 その父代わりの存在の命が尽きると聞き悲しんでいる様だ。

「劉磐様。お気を確かに」

「あ、ああ、そうだな」

 傍にいた黄忠に声を掛けられ、劉磐は気を取り戻した。

「・・・・・・・殿がもう長くないのは分かった。そうであれば、家中も纏まらんだろう。そんな状態で敵と戦えば負けるのは必定だな。降伏する理由は分かった。ただ」

「ただ?」

「一戦も交えず降伏するというのは、どうも気が進まん」

「お気持ちは分かります。儂も同じ思いです。ですが、此処は堪えて下され」

「・・・・・・分かっている。孫権の方はどうだ?」

「揚州内で反乱が勃発しておりますので、何も出来ないでしょう」

「ならば、降伏の準備をしても襲撃される事は無いな」

「はい」

 黄忠の言葉を信じて、劉磐は降伏の準備を始めた。


 同じ頃。


 武陵郡漢寿県。

 城内にある蔡瑁の屋敷にある一室で、蔡瑁は諸葛亮と酒を飲んでいた。

「いやぁ、孔明殿のお陰で家中の者達を降伏させることが出来た。感謝するぞ」

「大した事はしておりませんので、お気になさらずに」

 蔡瑁が諸葛亮の功を労う為に宴を開いていた。

 楽しく酒を飲んでいる蔡瑁であったが、諸葛亮が浮かない顔をしている事に気付いた。

「どうかされたのか?」

「・・・・・・李珪という者はどういう御方なので?」

「あやつか? そこそこ知恵はあるが頭が固い奴でな。その上、劉琦派の者だ」

「・・・・・・袁紹が冀州を治める前に冀州州牧であった韓馥という者をご存じで?」

「うん? 名前ぐらいであったら聞いた事があるな」

「その者の家臣で耿武という者がおりました。その者は冀州が袁紹に奪われる事に憤慨し、袁紹を暗殺しようとしましたが失敗しました。あの李珪という者も同じ事をするかもしれません」

「・・・つまり、曹丞相を暗殺するかもしれないと?」

「断言はできませんが。もし、そのような事をしたら、曹丞相が何をするか分かりませんな」

「ぬぅ、そうだな」

 蔡瑁は近い内に李珪を暗殺する事にした。

 そう話していると、使用人が部屋に入って来た。

「失礼します。黄承彦様がお訪ねになりました」

「黄承彦様が?」

 何用だろうかと思いつつ、とりあえず部屋に通す事にした。

 命じられた使用人は一礼すると、黄承彦を連れて来た。

「どうなされました? 義兄上」

 黄承彦は蔡瑁の姉を娶っているので、蔡瑁にとっては義理の兄であった。

「いや、劉表殿が危篤と聞いて急いできた所に、劉琮殿が朝廷に降伏すると聞いてな。どういう事なのか分からないので、義妹は劉表殿の看病をして忙しいと思い、蔡瑁殿の元に来たのだ」

「成程。そういう事でしたか」 

 話を聞いた蔡瑁は納得していると、黄承彦は諸葛亮を見た。

「蔡瑁殿。この者は?」

「この者は諸葛亮殿にございます」

「お初にお目にかかります。諸葛亮。字を孔明と申します。黄承彦様の名前は聞いております。沔南(べいなん)にて名士と言われている御方ですね」

「ははは、名士とは。単なる老人よ」

 諸葛亮から称賛された黄承彦は豪快に笑うのであった。

 その後、蔡瑁が降伏する事になった経緯を話した。

 話を聞いた黄承彦は最初驚いたものの、現状を聞いて納得するのであった。

 その後、来たついでに宴に参加する事になった。

 黄承彦は諸葛亮に話しかけて、どのような者なのか知ろうとしていた。

 そのお陰で、徐州琅邪郡で名門と知られる諸葛家の出である事と、類まれない知識を知恵を持っている事が分かった。

 同時にまだ妻帯していない事を知った。

「私には娘がいるが顔こそ醜いが、才知に優れている。貴殿の様な才知に溢れている者にはお似合いだ」

 と黄承彦は諸葛亮に娘を嫁にしないかと薦めて来た。

 それを聞いた蔡瑁は驚いていたが、諸葛亮は少し考えた後、答えた。

「わたしは無位無官にございます。その様な者にご息女を妻にするなど、とても」

「いやいや、貴殿であれば直ぐに何かしらの地位に就けるであろうから問題ない」

 諸葛亮は断ったのだが、黄承彦が是非にと薦めてくるので最終的に話を受ける事にした。

 

 数日後。

 武陵郡では李珪が道端で死体で見つかると言う事件が起きたが、物取りか何かに襲われたのだろうという事で、それ以上の捜索はされなかった。

 その捜索も数日続いたが、犯人が見つからないので打ち切りとなった。


 同じ頃。陳留の曹昂の元に、諸葛亮からの文が届いた。

「・・・・・・劉琮を降伏させる事が出来た⁉ 加えて、嫁を迎える事になった⁉」

 届けられた文を一読した曹昂は目を丸くしていた。

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― 新着の感想 ―
曹操・曹昂の工作の伝手で関係は知っていたけれど、蔡瑁さんと孔明の親戚はまだだったか。ここで縁つながりになったわけだが 劉盤さんがブちぎれでやけっぱち起こさないで降伏にしたがったのはよかった。黄忠老も耳…
李珪の結末はそうなったのか、仕方ないか。。。 荊州の降伏を知ったら孫権がどう動くか、劉磐は…… 一番の驚きは、降伏より、孔明の嫁とりかもw
孔明は歴史の修正力なのか強制力なのか同じ人を嫁にしましたね。 劉磐は正史だと劉備の配下に入ってから記録無し。演義だと長沙を任されて以降登場無しですが、そういった感じの人材を登場させては活躍させている本…
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