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準備の最中で

 諸葛亮が劉琦の元に訪れてから数日が経った。


 冀州魏郡鄴県。

 城内に数ある屋敷の一つ。

 その屋敷にある部屋にある寝台に誰かが横になっていた。

 頭には病鉢巻を巻いていた。

 その男の傍には、曹操が居た。

「鮑信。お主が病に倒れるとは・・・・・・」

 寝台で横になっていたのは、家臣の鮑信であった。

 荊州征伐の為に兵を集めていると、兵から鮑信が病に罹ったと聞かされた。

 長年犬馬の労を尽くし挙兵した頃からの友人という事で、曹操自ら見舞いに来ていた。

「申し訳ありません。わたしも流石に寄る年波には勝てない様ですな」

「何を言う。儂と三つしか違わないであろう」

「ははは、そうですな」

 苦笑いした鮑信は窓から空を見上げた。

「丞相とは黄巾の乱が起きた頃から知り合いましたな。あの頃から知っている知人達の多くが九泉に行きましたな。袁紹、公孫瓚、袁術、孫堅、袁遺、陶謙、劉岱、王匡、韓馥、張邈、張超、橋瑁。董卓討伐に参加した者達で残っているのは、丞相とわたしと孔融殿と劉表だけになりましたな」

「劉備を忘れているぞ」

「ああ、そうでしたな。正直な話、あの者がここまで長く生きて丞相に対抗とは思いもしませんでした」

「ふっ、確かにな」

 鮑信の言葉に、曹操も同意した。

 同意しつつも内心では、自分が見込んだ男なのだから、これぐらいは出来てもおかしくないとも思っていた。

「・・・・・・丞相にお願いしたき事があります」

「なんだ? 儂が出来る事であれば叶えるぞ」

「では、もしわたしが死んだら」

「不吉な事を言うでない。養生して早く治すのだ」

 鮑信の口から出た言葉を聞くなり、曹操は食い気味に遮った。

「まぁ、何があるか分かりませんので、そう思いお聞きを。もし、わたしが死んだら、身体は故郷ではなく并州上党郡屯留県にて葬って下され」

「故郷でなくて良いのか?」

「はい。其処にはわたしの祖籍がありますので」

 鮑信は真摯に頼み込んできた。

「其処にはわたしの先祖が眠っております。この年まで泰平を夢見て東奔西走しつづけた事を先祖に申し上げるのもよいと思いました」

「そうか。分かった。その時は、お主の言うとおりにしよう」

「ありがとうございます。後息子達の事をお願いいたします」

「安心せい。お主の子供だからな、優秀に決まっている。儂がその才を有効に使ってやる」

「ありがとうございます」

 曹操の言葉を聞き礼を述べた鮑信は寝台近くにいる息子の鮑邵を見た。

「邵。忠義を尽くすのだぞ」

「はい。父上」

 鮑邵が強く返事をするのを聞いて、鮑信は満足そうに頷いた。

 其処に使用人が入って来た。

「申し上げます。程昱様が荊州から火急の知らせが届きましたので、急ぎ戻ってきてほしいと使いの者が来ております」

「程昱が? そうか」

 これは重要な事だと判断した曹操はその場を後にする前に、最後に鮑信を見て手を握った。

「ではな。ゆっくり養生するのだぞ」

「はい。有難きお言葉です」

 曹操が手を離すと、その場を後にした。

 曹操が見えなくなると、鮑信は深く息を吐いた。

「ふぅ、これで我が家は安泰だな」

「父上。もうお休み下され」

「そうだな。・・・・・・・邵よ。勛とは喧嘩する事無く仲良くするのだぞ」

「はい。分かっております」

「・・・・・・疲れた。眠るとしよう」

 鮑信はそう言い、布団を掛け直し眠りについた。

 

 その数日後。


 鮑信は眠るように息を引き取った。

 その報聞いて、曹操はその死を深く悲しんだ。

 程なく、鮑勛の元にも父の訃報が届けられた。

 訃報を聞いた鮑勛は喪に服すると言い、鄴に向かう許可を仕えている曹昂に願い出た。

 曹昂もその死に悲しむと共に直ぐに許可した。

 鮑勛は取る物を取らずに、直ぐに鄴へと出立するのであった。

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― 新着の感想 ―
鮑信は史実より長生きしたのかな? 作中の正確な年はわからないけど、黄巾の戦い初期に曹操を助ける為に戦死した事を考えると、寿命で無くなったという事は歴史が書き変わってますね。 曹操の晩年を考えるとこの時…
逝く人残る人…どんな英傑もゴールはそこやから逃れられないが、曹昂の介入で残る人側になった英傑が多いのは良い。呂布に華雄、高順。曹操ぱっぱも目途が付いたらゆっくり隠居できるといいが
黄巾党時代の群雄クラスの方々の寿命が…世代交代の波が着々ときてますね…
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