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生まれ変わったら曹昂だった。 前世の知識を活かして宛城の戦いで戦死しないで天寿を全うします  作者: 雪国竜
第十八章

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布告を聞いて

 南郡の太守に程普がなったという事は、当然劉表の耳に入った。

「ぬぐうううっ、孫権め。もう儂を侮辱するつもりかっ!」

 激怒する劉表。

 その様子を見た家臣達も、気持ちは分かるからか何も言えなかった。

 南郡が新しく改められたとはいえ、郡太守を任じる権利は荊州州牧である劉表にあった。

 その劉表を無視して、勝手に南郡の太守を任じられた事に怒らない方が無理と言えた。

 加えて、その太守に任じられた者が敵対している孫権の部下なのだから、怒りを抑えるなど不可能であった。

「未だに儂を討つ事が出来ぬ、孫家の孺子(じゅし)がっ! 良い機会だ。二度と我が領地に攻め込めぬ様に徹底的に叩いてくれるわっ」 

 劉表は怒りのあまり、蔡瑁に出陣を命じだした。

 その命を聞いた蔡瑁を含めた家臣達は、驚きつつ怒りを宥めた。

 余談だが、孺子とは子供や青二才という意味もあるが、未熟な者を蔑んでいう言葉でもある。

 その後、家臣達特に蔡瑁が懸命な諫言により、劉表は怒りを鎮める事が出来た。

 

 同じ頃。

 揚州丹陽郡丹陽県。

 その県には周瑜が、曹操の襲来に備えて軍勢と共に駐屯していた。

 いつ襲来しても迎撃出来る様にと、兵達も神経を尖らせていた。

 肌にひりつく空気の中に、新しく作られた南郡の太守に程普となったと聞いて、直ぐにその意味を悟った。

「これは調略か。曹操め。いやらしい手を打つ」

 周瑜の呟きに、副官の凌操はどういう意味なのか分からず、首を傾げていた。

「周将軍。それはどういう意味なのだ?」

「程公は殿の家臣だが、荊州の南郡は劉表の支配下に入っている。つまり、この南郡に赴任する事など無理だ。それなのに、朝廷は太守に任じた。これは即ち、殿と程公との仲を裂く為の謀略だ」

「という事は、つまり下手すれば韓当殿のような事になるかもしれないという事か?」

 凌操の問いに、周瑜はその通りと頷いた。

「これは程公に太守に任じられた事について進言した方がよいだろうな」

 そう思った周瑜は筆を取り、文を認めた。

 書き終えると、直ぐに程普に送った。


 その頃、程普はと言うと。

「まさか、儂が南郡の太守に任じられるとはな」

 布告を聞いて、程普はすぐにこれは謀略だと分かった。

(儂と殿との間を裂く策か。姑息な事をする)

 程普は相手の思惑に乗るつもりなど、全くなかった。

 問題は、孫権がどう思うかであった。

(殿は疑り深い所があるからな。韓当の様に疑うかもしれんな)

 もし、そうなった時は決死の諫言を行おうと決めていた。

 そう考えている所に、兵が近づいてきた。

「申し上げます。朝廷より使者が参りました」

「朝廷から?」

 流石に朝廷からの来た使者と聞いて、会わぬのは失礼だと思い、使者がいる部屋へと向かった。

 程普が部屋に入ると、着飾った使者と供が数人いた。

 供の者達は大きな箱や小さい箱を持っていた。

 使者達は程普を見るなり、軽く頭を下げた。

「貴殿が程普徳謀殿であられるか?」

「如何にも。朝廷の使者が何用か?」

 程普の問いに、使者は手に持つ巻物を広げた。

「勅命である。程普徳謀は心して聞くがよい」

 使者がそう宣うの聞き、程普は身だしなみを整えた後、その場に跪いた。

「詔により、程普を荊州南郡太守に任じる。また、汝に裨将軍の職を与える」

 使者はそう言って、左にいる供の者から小さい箱を受け取り箱を開けると、印綬が入っていた。

 印綬には裨将軍之印と刻まれていた。

 使者が両手で印綬を持ち、掲げると程普はその印綬を恭しく受け取った。

「・・・・・・謹んで拝命いたす」

 印綬を受け取った程普は、後で孫権に朝廷から将軍の位に頂いた事を伝えねばと思っていると、使者が言葉を続けた。

「また、天子は貴殿の忠勤を称えて、これを与えられました」

 使者はそう言い、右に居る供が持っている箱の蓋を開けた。

 箱の中に入っているのは、長い棒であった。

 棒の部分全てが鉄で作られており、先端に取り付けられている刃の部分が蛇のようにくねくねと曲がっていた。

 見た所の武器の様だが、長柄の武器にしてはやや短いようであった。

「これは?」

「蛇矛という物だそうです。武官である貴殿に授ける。今後とも忠勤に励むがよい」

「はっ」

 供の者から箱ごと渡された程普はとりあえず頭を下げた。

 使者が部屋を出て行くと、箱に入っている物を取り出した。

「・・・・・・ふむ。柄の部分も鉄で出来ているとは。これほど贅沢な武器など見た事がない」

 普通の長柄武器の棒の部分は木製だ。

 張飛が持つ蛇矛も、関羽が持つ青龍偃月刀の棒の部分は金属を巻きつけているが木製であった。

 これは、柄の部分も鉄にすると、重量があり扱いにくい面があるからだ。

 その反面、強度が高く耐久性に優れており高級品に分類されている。

「刃の部分が蛇のような形をしておるし、棒の部分は総鉄製か。よく見ると背骨の様に見えるな。良し、この武器の銘は鉄脊蛇矛(てっせきだぼう)と名付けよう」

 程普は手に入れたので、さっそく試し切りを行った。

 翌日。

 周瑜から文が届いた。

 書かれている内容は、曹操が貴殿と殿との仲を裂く為の謀略が行っている模様、注意されたしと書かれていた。

 その文を一読した程普は憤懣していた。

「貴様に言われんでも分かっているわっ」

 程普はそう叫んだ後、孫権に将軍の印綬と得物が送られた事を伝えるための文を認めた。

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― 新着の感想 ―
おやおや…わかっちゃいるけど単純な策だけに否定しがたくなってくるw
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